技官の採用・育成の再開が新たな施策の推進に不可欠ー 「今後の労働安全衛生対策について」(建議)に関連してー
2025年2月25日

技官の採用・育成の再開が新たな施策の推進に不可欠

「今後の労働安全衛生対策について」(建議)に関連して


全労働省労働組合

 厚生労働省の労働政策審議会は1月17日、「今後の労働安全衛生対策について」と題する文書(建議)を厚労大臣に提出しました。今後、建議に盛り込まれた新たな施策は、労働安全衛生法改正案等に盛り込まれ、今本国会で審議される見通しです。
 建議は以下に示す7つの項目から構成されており、各項目ともに専門家による検討会報告書をふまえたものとなっています。

《建議の概要》

1 個人事業者等に対する安全衛生対策の推進

 労働安全衛生法等に規定されている労働災害防止対策に個人事業者等をも取り込み、労働者のみならず個人事業者等による災害の防止を図るため、
①個人事業者等自身が講じるべき措置を定める(規格を具備しない機械等の使用禁止、安全衛生教育の受講など)
②注文者等が講じるべき措置を定める(個人事業者等も含めた混在作業による災害防止対策の強化など)
③個人事業者等の業務上災害の報告制度を創設する
などの対応を行うこと。

2 職場のメンタルヘルス対策の推進

 ストレスチェックについて、現在努力義務となっている労働者数50人未満の事業場にも十分な準備期間を確保した上で実施を義務とすること。

3 化学物質による健康障害防止対策等の推進

①化学物質の譲渡・提供者による危険性・有害性情報の通知義務違反に罰則を設けること。
②化学物質の成分名が営業秘密に該当する場合、代替名等の通知を一定の有害性の低い物質に限定して認めること。
③個人ばく露測定について、有資格者により実施しなければならないこととすること。

4 機械等による労働災害の防止の促進等

①特定機械等(ボイラー、クレーン等)に義務付けられている「製造許可」の一部や「製造時等検査」について、民間の登録機関が実施できる範囲を拡大すること。
②不正に技能講習修了証を交付した教習機関に対して回収命令等ができるようにすること。

5 高年齢労働者の労働災害防止の推進

 高年齢労働者の労働災害を防止するため、必要な措置を講じることを事業者の努力義務とし、国が措置内容に関する指針を公表すること。

6 一般健康診断の検査項目等の見直し

 月経随伴症状や更年期障害等の女性特有の健康課題について、一般健康診断問診票に質問を追加すること。

7 治療と仕事の両立支援対策の推進

治療と仕事の両立支援のための必要な措置を講じることを事業者の努力義務とし、国が措置内容に関する指針を公表すること。

 全労働は以上のうち3及び4について、すでに「意見」を明らかにしており、その中で労働安全衛生行政の実務に従事する視点から、いくつもの重要な問題点を指摘しています。

○「特定機械等の製造許可及び製造時等検査制度の在り方に関する検討会」報告書に対する意見(2024年4月)
○「職場における化学物質等の管理のあり方に関する検討会」報告書に対する意見(2022年1月)

 これら2つの「意見」でも指摘したとおり、上記3及び4の推進に関しては労働安全衛生行政が充実した体制を確保し、高い専門性に裏打ちされた的確な指導・助言を行うことが不可欠です。この点を軽視するなら、働く者の安全と健康を脅かす重大な事態を招きかねず、私たちは強く警鐘を鳴らすものです。
 この点で見逃すことができないのは、地方労働基準行政に配置されている技官(労働安全衛生分野の専門職員)の配置数が急速に減少していることです。
 労働基準行政では、これまで主として法令遵守に向けた監督指導を担う労働基準監督官と災害防止・職業性疾病予防に向けた専門・技術的指導を担う技官がバランスよく配置され、これらが「両輪」で機能することで職場の安全衛生水準の向上を図ってきました。しかし、厚労省が2008年に技官の採用を停止したため、労働基準監督官が安全衛生分野の監督指導と専門・技術的指導の両方を担わざるを得なくなっており、安全衛生分野における専門性の継承が困難となっているのです。
 今回の建議に盛り込まれた諸施策を進めるにあたっては技官の役割がこれまで以上に重要となることから、その採用及び育成を直ちに再開することが必要不可欠です。

以 上
前画面全労働の取組一覧

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