公務員制度 −公務員の働き方、労働条件など

2010年4月
高齢期雇用と再就職規制に係る全労働の考え方
2010年4月25日

はじめに

公的年金の支給開始年齢が2013年度から段階的に65歳まで引き上げられることに伴い、高年齢者等の雇用の安定等に関する法律(高年齢者雇用安定法)が2004年6月、65歳までの雇用確保を目的に改正されました。その後、人事院は2007年9月、公務職場での環境整備を目的に、「高齢期の雇用問題に関する研究会」を立ち上げ、2009年7月には、公務員の定年年齢の引き上げを柱とする最終報告がとりまとめられています。

 一方、2007年の改正国家公務員法では、営利企業及び非営利法人への再就職あっせんを禁止し、現職職員の求職活動に一定の制限をかけるなど、再就職規制が見直されました。

 こうした中、公務員の年金支給開始までの生活問題にとどまらず、蓄積した経験の発揮や在職中の職務の公正・中立性の確保など、労働行政職員の高齢期雇用のあり方があらためて問われています。

1.民間の定年延長等の動向

高年齢者雇用安定法は、65歳未満の定年を定める事業主に対して、a)定年年齢の引き上げ、b)継続雇用制度の導入、c)定年の定めの廃止のいずれかの措置(以下、「高年齢者雇用確保措置」)を講じるよう求めています。また、高年齢者等の再就職の促進に関する措置の充実や、定年退職者等に対する臨時的かつ短期的な就業等の機会の確保等も求めています。

 厚生労働省が2009年8月20日に公表した「平成20年高年齢者雇用実態調査」(2008年9月時点)によると、定年制が無い事業所の割合は26.5%となっており、2004年時点の調査(25.6%)より微増しています。また、定年制がある事業所においては、60歳定年が減少している一方(2008年:82.0%、2004年:88.3%)、65歳以上の定年を定めている事業所の割合が増えています(2008年:14.8%、2004年:8.3%)。なお、定年年齢が60〜64歳の事業所の約9割(2008年:89.1%、2004年67.5%、なお、人事院の2008年時点の調査では94.6%)が何らかの継続雇用制度を設けています。

 このように、改正高年齢者雇用安定法の施行により、民間では着実に60歳台前半層の雇用の場が拡大されてきています。

2.公務分野における定年延長等の動向

 2008年6月に成立した公務員制度改革基本法では、「雇用と年金の接続の重要性に留意し、1)定年まで勤務できる環境を整備するとともに、再任用制度の拡大を図る、2)定年を段階的に65歳までに引き上げることを検討する、3)高年齢である職員の給与の抑制を可能とする制度、役職定年制度及び職種別定年制度の導入について検討する」と規定され、政府は「2011年中に定年延長に係る一定の結論を得る」としています。

 2009年3月には、総務省の「定年まで勤務できる環境の整備等に関する検討会議」が設置され、定年まで勤務できる環境の整備、再任用制度の原則化に向けたとりくみ、定年延長などの検討が行われています。

 また、同年7月、前述の「公務員の高齢期の雇用問題に関する研究会」の最終報告では、65歳までの定年延長の必要性を打ち出し、「雇用と年金の連携を図ることは我が国の重要課題」と述べています。しかし、その前提として、60歳以降の給与の抑制や60歳までの昇給・昇格のペースの見直しなどを掲げ、全体の賃金水準の低下も示唆しています。同年8月に出された人事院の給与に関する報告でも、「2010年中を目処に定年年齢を段階的に65歳まで延長する立法措置のための『意見の申し出』を行う」とし、一方で「60歳前の給与カーブや昇給制度のあり方を見直す」とも述べています。

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3.公務分野における再就職のあり方

(1)政府の対応等
いわゆる公務員の「天下り」が問題とされる中、政府は2009年9月、「独立行政法人等の役員人事に関する当面の対応について」を閣議決定しました。そこでは、「公務員の天下りに対する国民の厳しい批判等を踏まえ、公正で透明な人事を確保する観点から、現在、公務員OBが役員に就任している場合、及び、新たに公務員OBを役員に任命しようとする場合には、公募により後任者の選考を行う」と公募の原則を明らかにしました。
また、質問主意書に対する政府答弁書(2009年11月)では、「天下りとは、府省庁が退職後の職員を企業・団体等に再就職させることをいう」「公務員が法令に違反することなく、府省庁によるあっせんを受けずに、再就職先の地位や職務内容等に照らし適材適所の再就職をすることは、天下りには該当しない」として、あっせんによらない再就職は「天下り」には該当しないことを明確にしました。
一方、「国家公務員法等の一部を改正する法律案」が今通常国会に上程されています。この中では、「国家公務員の退職管理の一層の適正化を図る」ことを目的として、従来の官民人材交流センターや再就職等監視委員会を廃止し、再就職等規制違反の監視等を行う新たな組織(「民間人材登用・再就職適正化センター」、「再就職等監視・適正化委員会」)を整備することになっています。しかし、民間人材登用・再就職適正化センターは、ごく限られたケース、すなわち「組織の改廃等に伴い離職を余儀なくされる」職員の離職のみに際して再就職を支援するにすぎず、それ以外の理由での離職に際する再就職を想定していません。

(2)厚生労働省の対応
厚生労働省は、同省の関係団体に対して、採用自粛を間接的に促しています。具体的には、2010年度予算に関して、「国家公務員OBが在籍している公益法人等の関係団体は、委託費、補助金の一律2割カット」「5代続けて指定席化している関係団体については、ゼロベースで見直す」として、実際上、関係団体の公務員OB比率を下げることを要請しました。このことは、実質的に、厚生労働省を退職した者が関係団体へ再就職を一切できないようにすることに等しいものです。しかも、このような対応を取っている府省は他になく、厚生労働省だけが突出した形で再就職規制(特に、公募における再就職までも規制)を行っていることになります。

(3)全労働の考え方
a.定年延長に係る考え方
定年延長にあたっては、年金の支給開始との連続性に留意しつつ、これまでの賃金水準を維持すべきです。また、定年延長ばかりでなく、他の業種への再就職や再任用制度など多様な勤務形態のあり方の検討もあわせて行うべきと考えます。
現在行われている雇用と年金の連続性の議論では、定年延長がことさら強調され、賃金の抑制や上位の役職段階への昇進スピードを遅らせることなどが課題とされています。
しかし、雇用失業情勢の厳しさを反映し、労働行政の第一線職場は過重労働が広がっており、65歳まで全ての職員が同様の働き方が可能とすることを前提とした議論は必ずしも実態に見合っていません。
従って、定年延長に偏重することなく、無年金期間にふさわしい再任用等の処遇のあり方や新たな職域開発など、効果的・効率的な行政運営と60歳台前半層職員が体力に応じて意欲を持って働ける職場整備をあわせて考える必要があります。その中の一つとして定年延長を位置付けるのであれば、60歳までの昇給・昇格のペースを抑制することは不合理であり、そもそも現行の官民給与比較方法(ラスパレイス比較方式)とも相容れません。特に、職務内容が同じであるならば、定年延長を選択しない職員に対する賃金抑制は理解できません。

 b.再就職規制に係る考え方
再就職に係っては、公務員であっても、憲法上の「職業選択の自由」(憲法第22条)が基本的に保障されるべきです。同時に、公務の公正・中立を損なわないよう、一定の規制が行われることも当然です。その上で、公務員が公務を通じて長年培ってきたキャリアや専門性を相応しく発揮し、社会に貢献することを重視すべきです。こうした観点から見たとき、行政経験を活かすことのできる公益法人等への再就職を事実上規制するならば、その際の就職先は民間企業が中心になることから、ほぼあらゆる民間企業に権限行使を行っている労働行政の公正・中立な運営に悪影響を及ぼしかねません。従って、政府見解に従っても何ら問題のない公募による再就職まで規制すべきではないと考えます。

「高い就労意欲を有する高年齢者が長年培った知識と経験を活かし、社会の支え手として意欲と能力のある限り活躍し続ける社会が求められている」(改正高年齢者雇用安定法)中で、公務においても、職員が高齢期の生活に不安を覚えることなく、職務に専念できる環境を整備すべきと考えます。

 

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