雇用対策・雇用法制 −労働者派遣、職業紹介、若年者・中高年雇用対策など

「ハローワークの求人情報のオンライン提供に関する検討会報告書」に関する見解


2016年12月
全労働省労働組合 中央執行委員会

厚生労働省に設置された「ハローワークの求人情報のオンライン提供に関する検討会」は12月15日、報告書をとりまとめた。

 報告書は、「効率的・効果的なマッチングを進める上で必要となる情報」として、求職者にとって有益な「就業場所に関する事項」「仕事の内容等に関する事項」「労働時間・休日に関する事項」「会社の情報に関する事項」「選考等に関する事項」「教育・研修、正社員登用などその他の事項」を例示し、追加的な情報を地方自治体に提供するよう求めている。

 公共職業安定所(以下、安定所)の求人情報は、本来安定所の求職者に提供し、再就職を実現するためのものである。したがって、基本的には安定所内で活用すべきものであり、そのような取り扱いが、多くの求人者の認識に合致する。しかしながら、政府の日本再興戦略によって、「マッチング機能を高めるため」との理由から、職業紹介事業者や地方自治体に求人情報をオンラインで提供することとされ、2014年9月より実施されているものである。さらに、「平成27年の地方からの提案等に関する対応方針」(2015年12月22日閣議決定)によって、より詳細な情報を提供するよう求められたことが、今回の報告書の背景にある。

 こうした中、10月19日に開催された第1回検討会では、利用団体数と実績が資料として提出された。それによると、2016年9月1日時点で1,224団体が利用し、内訳は地方自治体311団体、有料職業紹介事業者528団体などとなっている。2015年度の採用決定数は、全体で4,743件、内訳は地方自治体2,318件、有料職業紹介事業者868件などである。採用決定数を団体数で割ると、自治体で1団体あたりの年間就職件数は7.5件、有料職業紹介事業者は1.6件に過ぎず、有料職業紹介事業ではほとんど活用されていないことがわかる。この点で、有料職業紹介事業の多くは労働者派遣事業を兼業しており、当初から、安定所の求人情報が派遣会社の「営業先リスト」として活用されることを懸念していたが、この実績はますますその懸念を深めるものである。地方自治体の職業紹介も、都市部では、その多くが人材ビジネスに委託して実施されており、労働者派遣事業者に情報が流れている懸念は同様にある。

 しかしながら報告書は、「地方自治体への提供割合を向上させるために、求人更新時にもあらためて積極的に働きかける必要がある」などとして、利用促進を求めている。求人受理時に安定所は、職業紹介事業者や地方自治体に求人情報を提供するか否かを事業主に確認しているが、その判断は事業主に委ねるべきであり、行政が積極的に働きかけ、無理に提供割合を高める必要はない。むしろ、地方自治体への提供は、委託先の人材ビジネスへの提供であることを正確に伝えることが必要である。

 そもそも、安定所の求人情報が、労働者派遣事業者の「営業先リスト」として活用されることの弊害は少なくない。正社員求人を安定所に提出した事業主に対して、派遣労働への置き換えが労働者派遣事業者によって働きかけられているなら、安定雇用の機会が失われて間接雇用が拡大し、労働者や求職者の権利が大きく後退させられかねない。したがって、安定所の求人情報をオンラインで提供することの是非をあらためて議論すべきである。

 

以  上