雇用対策・雇用法制 −労働者派遣、職業紹介、若年者・中高年雇用対策など

雇用保険制度見直しに関する見解


2016年9月
全労働省労働組合 中央執行委員会

労働政策審議会職業安定分科会雇用保険部会(以下、部会)は9月5日、雇用保険料や国庫負担の引き下げなどについて検討に着手した。

 雇用保険制度は、相次ぐ制度見直しによって著しく給付が抑制されてきた。雇用保険法はその目的に、「労働者が失業した場合…に必要な給付を行う…ことにより、労働者の生活及び雇用の安定を図るとともに、求職活動を容易にする等その就職を促進」を掲げている。しかしながら現在の制度は、失業中の生活を安定させて求職活動を容易にする水準とはとうてい言えるものではない。全労働はこの間、所定給付日数や基本手当日額の改善、給付制限の廃止・見直しなど制度改善・拡充の必要性を繰り返し訴えてきた(「雇用保険制度の課題と改善方向」(2010年2月)、「労働政策審議会職業安定分科会雇用保険部会報告(2015年12月24日)についての見解」(2016年1月)など)。

 9月5日の部会には参考資料も含め8種類の資料が提出されているが、その中の「雇用保険部会の主な論点(案)」には、「基本手当の水準」や「マルチジョブホルダーへの対応」など、制度改善につながる項目が含まれている。これらは、部会で積み重ねられた議論の到達点であり、さらに議論を重ねて方向性を見出すことが求められる。

 一方、同日の部会には「未来への投資を実現する経済対策(平成28年8月2日閣議決定)(抄)」(以下、経済対策)が資料として提出されている。そこでは、雇用保険料や雇用保険の国庫負担割合の引き下げを平成29年度から実施するとされている。しかし、この経済対策は、労働者代表が参加することもなく、閣僚で構成する日本経済再生本部で確認し、閣議決定されたものであり、労使代表の参加を求めるILO(国際労働機関)の国際基準に照らし、あらためて労政審での慎重な議論が求められている。

 

 この間繰り返し述べてきたとおり、現在の雇用保険制度はきわめて脆弱である。所定給付日数がわずか90日の受給資格者が初回受給者の6割にものぼり、完全失業者のうち、雇用保険を受給する割合は2割程度と、先進諸外国に比べ著しく低い水準となっている。また、基本手当日額は最高額が7,775円、最低額は1,832円に過ぎない。これでは「生活の安定」にほど遠く、「求職活動を容易にする」どころか、希望とかけ離れた職種や労働条件の求人であっても、とにかく再就職を急がざるを得ない。

 雇用保険料は本則で1,000分の12、弾力条項によって1,000分の8にまで引き下げられており、国庫負担割合も本来の55%まで引き下げて運用されている。これらは積立金の額が6兆円を超えていることを理由に実施されているが、積立金の増大は、制度改定を重ね、給付を徹底的に抑制した結果にほかならない。

 経済対策は、「アベノミクスの成果等により、雇用情勢が安定的に推移している」と言うが、安定所の求人は非正規や低賃金が多数を占め、求人倍率も建設や介護など特定の職種が押し上げているに過ぎず、再就職が困難な状況に変わりはない。

 いま必要なことは、求職者をとりまく厳しい雇用情勢を直視し、雇用保険求職者給付を抜本的に拡充することであり、保険料率や国庫負担の引き下げではない。労働政策審議会は、政府の経済対策に制約されることなく、いまこそ専門性を発揮して、あるべき雇用保険制度をめざした議論を尽くす必要がある。

以  上