雇用対策・雇用法制 −労働者派遣、職業紹介、若年者・中高年雇用対策など

「雇用仲介事業等の在り方に関する検討会報告書」に関する見解


2016年9月
全労働省労働組合 中央執行委員会

はじめに

 厚生労働省に設置された「雇用仲介事業等の在り方に関する検討会」は6月3日、報告書を公表した。政府は近年、産業競争力会議や規制改革会議を主要な舞台として、人材ビジネスを労働力需給調整の主要な担い手と位置づけた上で、その活用・活性化をはかる議論を展開してきた。本検討会は、2014年6月24日閣議決定「規制改革実施計画」の要請に応えて設置されたものであり、そもそも、人材ビジネスをめぐる規制緩和が主要な目的である。
 民間の職業紹介事業は明治以前には広く行われていたものの、中間搾取や強制労働などによる人身売買的な取引が横行し、国家による規制が次第に整備され、戦後は公的職業紹介が原則とされてきた経過がある。
 こんにちにおいても、公的職業紹介は、求人事業主に対し求職者が相対的に弱い立場に置かれることをふまえ、公的機関がそこに介在し、多様な雇用施策と一体となった職業相談(適格紹介)によって再就職の実現をはかることにより、求職者(労働者)の人権を守る目的を有している。人材ビジネスに対する法規制を論じるのであれば、こうした人権保障の観点が十分配慮される必要がある。
 国の職業安定行政にとって求人事業主は、決して「顧客」ではない。法令遵守はもとより、公正採用選考が確保されているかなどを注意深く確認し、必要な指導・援助を行う対象である。一方、人材ビジネスにとって求人企業や派遣先は重要な「顧客」であり、人材斡旋に際しては求人側の意向が反映しがちであり、法令が禁止する性や年齢による差別、容姿等の差別も散見される。本報告書は「基本的な考え方」において、「雇用仲介事業は社会的インフラであることから、まずは、求職者保護の観点からの必要な制度の見直しや取組の強化を図ることが必要である」と述べている。求職者保護の観点を重視する姿勢は肯けるものの、報告書は、求職者の人権を尊重し、差別禁止や公正採用を求める規制に関する記述は十分ではない。
 また、第6次地方分権一括法(5月13日成立)では、地方公共団体が無料職業紹介を行う際の国への届出義務を廃止するとともに、職業紹介責任者の選任等の規制を廃止し、無料職業紹介事業を自由に開始・運営できることとした。しかしながら、都市部の地方公共団体が行う職業紹介事業の多くは人材ビジネスへの委託によって実施されている。この点で「平成27年の地方からの提案等に関する対応方針」(2015年12月22日閣議決定)では、次のように記述されている。
 「民間事業者が地方公共団体から委託を受けて行う職業紹介事業に係る規制については、『規制改革実施計画』(平成27年6月30日閣議決定)に基づき、『雇用仲介事業等の在り方に関する検討会』において、在り方について平成28年夏までに検討し、その結果を踏まえ必要な措置を講ずる」
 しかしながら、本報告書にこれに該当する記述は見当たらない。
 その一方、規制緩和については多数の提言があることから、本報告書は求職者の権利を後退させる危険が大きいものであると指摘せざるを得ない。

 

1 職業紹介事業等

(1)職業紹介責任者
 報告書は、職業紹介責任者について、「求職者保護及び適切な事業運営の確保のための体制確保は一層重要となる」との認識のもとに、「現行の事業所ごとの選任を維持する」、「職業紹介責任者の職責として他の従業員に対する労働法令等の教育を加える」、「職業紹介責任者講習の充実」を求めている。これらは、事業所の面積基準や事業所外での事業実施を可能とする見直しを前提としている。規制緩和については後述するが、求職者保護等の目的に照らし、現行制度のもとでも職業紹介責任者等の規制強化が必要である。
 現行では、職業紹介責任者は事業所ごとに、職業紹介に係る業務に従事する者の数が50人以下の場合は1人以上、50人を超える場合は50人ごとに1人を加えた数以上の選任が義務づけられている。職業紹介責任者に関する要件は、「成年に達した後3年以上の職業経験」と「職業紹介責任者講習会」の受講(5年以内)とされている。講習会の内容もわずか6時間で、初回受講者以外は4時間に過ぎない。つまり、職業紹介責任者が1人いれば、経験も知識もない者を50人まで職業紹介に従事させることができ、その職業紹介責任者も職種等を問わず職業経験が3年あり、1日の講習を受講すれば良いとされているだけであり、あまりにも緩い要件となっている。職業紹介には、憲法が保障する人権擁護の役割が不可欠であり、労働関係法令等の知識や幅広い職業知識に加え、求職者との相談にはカウンセリング技法も必要である。現行の基準は、本来求められる職業紹介の水準を保障するものとはとうてい言えず、従業員(職業紹介従事者)教育や職業紹介責任者講習の充実といった報告書の方向性については当然必要である。問題は、どのように充実させるかであるが、労働者の人生を左右する職業紹介の責任者を育成するのであれば、職業紹介の実務経験を求め、制度・法令の概要にとどまる講習内容を、質・量ともに抜本的に見直すことが不可欠である。また、職業紹介従事者に対する教育についても、形式的な伝達研修では効果は期待できないため、現在実施されている職業紹介責任者講習をさらに充実させた内容で、全員に受講を義務付ける必要がある。仮に、教育の実施主体を職業紹介責任者とするとしても、職業紹介責任者の要件を抜本的に厳格化したうえで、職業紹介従事者に対する教育内容についても職務にふさわしい水準となるよう、国が明確に基準を示す必要がある。

(2)面積要件・事業所外での事業実施
 報告書は、職業紹介事業の面積要件に関し、現行の「おおむね20u以上」の要件を廃止し、それに代えて、「求職者のプライバシー確保のための措置を講ずることを要件とすることが適当」としている。これは、インターネットによる対面を伴わない職業紹介について、現行も面積を要件としていないことや、遠隔地に出向いて求人・求職受理や職業相談・紹介を実施する場合などを念頭に、面積要件を廃止する趣旨であろう。しかし、遠隔地での業務はあるにしても、事業所が所在する地域の求人や求職を扱う場合に、専用の相談スペース確保を求めないとすることは、問題が大きい。プライバシーの確保は、職業相談・紹介の実施に必要不可欠なものである。報告書は、一定の面積基準の確保に代わる「プライバシー確保のための措置」で容認しようとしているが、実効性を伴うかには疑問がある。ホテルのロビーや喫茶店での相談は、部外者の存在を気にする求職者が多く適切ではない。ホテルの会議室等を使用するとしても、常時使用可能な状態にあるわけではなく、「間に合わせ」の場所で業務が行われる事態も十分考えられる。しかも、個別の相談・紹介業務の全数について、プライバシー確保措置が十分講じられているかを確認することなど不可能であり、個人情報の流出などの人権侵害を生じさせかねない。
 そもそも、人の就職という重要な課題を扱う事業が、「携帯電話1台あれば誰でもできる」手軽なものであってはならない。地域での職業紹介を行うのであれば、一定の面積基準を満たした事務所を継続的に確保することは、職業紹介事業者として社会的信頼を得るために不可欠な条件であり、これを維持すべきである。
 他方、相談・紹介を事業所で行うことを想定した上で、20uという基準を緩和するというのであっても問題がある。四畳半2間程度の面積に過ぎない基準の緩和は、職業紹介という責任ある継続的な業務の運営を不可能にする。狭小事務所で相談・紹介を実施するとすれば、求職者に圧迫感を強いるため落ち着いた精神状態での相談ができず、プライバシーとは別の問題を生じさせる。
 また報告書は、「職業紹介責任者が当該事業所外にいる場合又は当該事業所に速やかに到着できる場合は、事業所外での事業実施を可能とすることが適当である」と、外部での職業相談や職業紹介を可能としている。この点も、プライバシー確保措置が十分はかられる保障はない。事業所外での事業実施が必要な場面はあろうが、先述したとおり、プライバシー確保措置を個別に確認することは不可能であり、事業者の良心に委ねた運用では求職者の保護は形骸化しかねない。したがって、面積や環境などをきめ細かく基準として定め、事前の届出もしくは事後の報告によって、履行確保をはかることが必要である。

 

2 職業紹介事業者に課せられる主な業務等

(1)求人・求職の全件受理義務等
 報告書は、「全件受理義務を維持することが適当であるが、より適切にマッチングが行われるよう、取扱職種の範囲等として定めることができるものの例示を追加等することが適当であり、追加等する例示事項は、他法令等も参照しつつ、さらに検討を深めるべきである」としている。
 現行は取扱職種の範囲等として、職業では「事務的職業、会社・団体の役員、飲食物調理の職業、林業の職業など」、地域では「国内、大阪府、中部地方など」、その他として「紹介予定派遣に関するもの、母子家庭の母等、中高年齢者、本校所定の課程を修了した者など」が例示されている。検討会では、中高年齢層に特化することなどが可能であるかが議論され、他法令との関係があることから「全件受理義務を維持することが適当」、「追加等する例示事項は…さらに検討を深めるべき」と整理されたところである。職業安定法第3条は、「何人も、人種、国籍、信条、性別、社会的身分、門地、従前の職業、労働組合の組合員であること等を理由として、職業紹介、職業指導等について、差別的取扱を受けることがない」と規定している。
 検討会の議論にあるとおり、「取扱職種の範囲等」とのあいまいな定義のままに限定的な受理を認めることは、恣意的な求職者の選別(差別)を引き起こしかねないことから、慎重な議論が必要である。この点でILO条約第181号(民間職業仲介事業所条約)は、「加盟国は、労働者が雇用されること及び個々の業務に就くことについての機会及び待遇の均等を促進するため、民間職業紹介事業所が人種、皮膚の色、性、宗教、政治的意見、国民的系統若しくは社会的出身による差別又は年齢、障害等国内法及び国内慣行の対象とされている他の形態による差別なしに労働者を取り扱うことを確保する」(第5条)と定めている。わが国が批准する国際条約の要請が、十分履行されていない現状を重視し、必要な規制強化をはかることこそ重要である。

(2)求人情報・求職者情報の管理
 報告書は求人情報と求職者情報について、「職業紹介事業と労働者派遣事業を兼業する場合について、別個の管理を要しないこととすることが適当である」と結論づけた。
 2014年9月以降、国は公共職業安定所(以下、安定所)が受理した求人情報を、希望する地方公共団体や有料職業紹介事業者に対してオンラインで提供している。これは、安定所の求人情報を、地方公共団体や有料職業紹介事業者が、求人事業主の了解を得た上でみずからの求人としてあらためて受理し、職業紹介に活用することを目的とするものである。当該制度に関する利用規約では次のように定められている。
 「職業紹介と関係がない目的での利用、労働者派遣や請負など求人事業主の直接雇用ではない形態への転換や無期雇用から有期雇用への雇用形態の転換、賃金などの労働条件の切り下げの働きかけ、対象団体以外の第三者(対象団体の求職者を除く)への提供及びインターネット等での求職者以外の不特定多数の者への提供は禁止する」
 しかし、有料職業紹介事業者の多くは労働者派遣を兼業しており(2016年3月31日に公表された「民間人材ビジネス実態把握調査(職業紹介事業者)」によると、労働者派遣事業との兼業をしている事業者の割合は64%)、系列会社に派遣会社を有する有料職業紹介会社も多数にのぼる。すなわち、有料職業紹介事業は、労働者派遣とほぼ一体で運営されていると言える。その有料職業紹介事業者に安定所の求人情報がリアルタイムで提供されており、派遣会社の「営業先リスト」として活用されていることが懸念される。実際、2016年5月27日開催の労働政策審議会職業安定分科会に厚生労働省が提出した資料によると、2016年3月1日現在で求人情報のオンライン提供を受けている有料職業紹介事業者数は489団体、有料職業紹介事業者による採用決定件数は2015年4月1日から2016年2月29日までの11ヵ月間で772件となっている。年度途中から利用を開始した事業者もあると思われるが、単純に1団体あたりの就職件数を計算すると、11ヵ月間でわずか1.58件に過ぎず、職業紹介以外の目的で活用されているのではないかとの懸念はいっそう強くならざるを得ない。
 こうした中で求人情報について、別個の管理を要しないこととすることは、労働者派遣事業者が、有料職業紹介事業者に国が提供する求人情報にも自由にアクセスして構わないと言うに等しい。安定所は求人受理にあたり、できる限り正規雇用で、より良い条件で募集するよう事業主に働きかけているが、このような条件の良い正社員求人は、派遣労働者に置き換えればコスト削減効果が大きい求人でもあり、常用代替がいっそう加速しかねない。非正規労働者の正規化が政府の重要政策にも掲げられる中、求人情報のオンライン提供にあたって、厳しく規制すべき情報の目的外使用を事実上公認する動きであり、とうてい認められるものではない。

 

3 業務提携

 検討会では、たとえば都市部の求職者が、U・Iターン等で地方での就職を希望する場合、求職を受理した職業紹介事業者は地方の求人を保有していない。そのため、求職者が新たに就職希望地の事業者に求職登録することなく、都市部の事業者が地方の事業者に求職者情報を提供して再就職実現をめざすことにより、マッチング機能の強化につながるといった議論が重ねられた。報告者では、「より迅速なマッチングの実現を図るため、職業紹介事業者が複数の職業紹介事業者と業務提携することも可能であることを明確化することが適当である」と、業務提携の柔軟化を打ち出している。そのうえで報告書は、事業者の法令上の義務、求人・求職情報提供の際の同意、事業者に関する情報の提供について必要な措置を求めている。
 求職者保護の措置が必要であることは当然であるが、それ以前に、自社が受理したものでない求人情報に求職者を案内することが妥当であるかを考える必要がある。安定所では転居を要しない職業紹介を基本としているが、求職者の事情によって、広域の職業相談・紹介を実施している。U・Iターンの場合では、都市部の安定所が、求職者の希望する地域の求人情報を活用して職業相談を行うのであるが、安定所職員が遠隔地の求人事業所を個々に知っているわけではない。それでも、日頃から多数の求人事業主・求職者と接し、専門職員として多種多様な職業知識を蓄積していることから、職種に関する相談は問題なく行うことができる。また、数多くの求人・求職情報と日常的に接している中で、地域の賃金水準をはじめとする労働情報に関する知識も安定所には蓄積されており、その情報を全国ネットワークにより相互に交換することにより、求職者への情報提供や広域職業紹介が可能となる。
 一方、厚生労働省の「平成26年度職業紹介事業報告の集計結果」によると、有料職業紹介事業所数は17,893事業所、年間の常用就職件数は518,328件、1事業所あたりの常用就職件数は年間29件で月間3件にも満たない(全国の安定所による平成27年度の就職件数は、学卒とパートを除く常用で1,095,249件、学卒とパートを除く正社員で826,053件となっている。平成28年の安定所設置数は出張所等を含んで544所であり、1施設あたりの就職件数は年間常用就職で2,013件、正社員で1,519件)。
 月間3件弱の就職実績しか持ち合わせない有料職業紹介事業者が、自社で扱ったことのない業種や職種に関し、求職者にとって適職であるか、求人条件が地域の水準に照らして適切であるかといった相談が十分実施できるのか、はなはだ疑問である。検討会の議論では、不動産事業者が物件情報を共有してあっせんを実施している状況も議論された。しかし、職業紹介は労働者の人生に深く関わり、適格でない紹介を行えば、たちまち離職せざるを得ない状況に陥ったり、場合によっては労災事故にもつながりかねない。したがって、有料職業紹介事業は、あくまで求人・求職の内容を十分理解し、情報提供が可能である自社受理の範囲に限定すべきである。
 報告書は、「手数料配分の留意事項なども合わせて明確化することが適当」とする。相当高額な年収の場合を除き、求職者からの手数料徴収は禁止されており、求人企業からのみ手数料徴収は可能とされている。報告書の趣旨は、U・Iターンのケースで言えば、求職を受理した都市部の事業者が、就職希望地である地方の事業者(求人受理事業者)に求職情報を提供し、就職が実現した際、求職者を送り出した都市部の事業者の収益を確保するためのルール整備と思われる。しかし、職業や地域の労働市場に関する知識の蓄積が十分でないままに、遠隔地の(求人受理)事業者に求職者情報を提供し、収益を得ようとするなら、もはや求職者情報の提供自体が新たなビジネスとして広がることを意味しており、あまりにも弊害が大きく、事業者間の連携は、求職者保護の観点からきわめて慎重な議論が必要である。

 

4 実効性に疑問がある「求職者保護」

 報告書は、「求職者保護の強化等」として、(1)「求人に際して明示される労働条件の適正化」と(2)「求職者・求人者と職業紹介事業者とのトラブルへの対応」について述べている。
 (1)に関しては、「固定残業代の明示等指針の充実、虚偽の条件を職業紹介会社に対し呈示した求人者に係る罰則の整備など、必要な強化を図ることが適当である」としている。しかし、指針とは「望ましい姿」に過ぎず、強制力を持たないことから、行政機関が粘り強く指導・助言を重ねるほかない。実際、固定残業代に関し、安定所では「職務手当」などの記述があれば、固定残業代の可能性があるため詳細に聞き取ることはもちろん、地域の賃金水準より高い額の求人に際しても、「基本給」を鵜呑みにすることなく固定残業代が含まれていないかを確認する。しかし、人材ビジネスは求人事業主から得る報酬で成立する事業であり、求人事業主との関係で弱い立場であることを忘れてはならない。有料職業紹介事業者が顧客である求人事業主に対して強力に指導できるかどうかには、大きな限界があると考えるのが自然であろう。
 また報告書は、虚偽条件を呈示した事業主への罰則整備を言うが、虚偽であることが構成要件となるが、その故意(主観的要件)を立証することはきわめて困難となる。「だますつもりはなかった」という抗弁を許してしまう危険性が高い(実際、現行の虚偽広告等の摘発が進まないのも、そのためである)。むしろ、求人者の提示した条件に民事的な効力(たとえば、当該条件を下回る労働契約を無効とし、当該条件で契約したとみなす)を付与することを検討すべきである。他方、有料職業事業者が顧客である求人事業主のマイナス情報を国に通報することを考えているならば、およそありえない議論であろう。
 (2)に関しても、固定残業代を記述しない求人事業主に採用され、採用後に求人条件にくらべ著しく低い労働条件であることに気付いた求職者が、有料職業紹介事業者に苦情を申し出た場合、有料職業紹介事業者の積極関与によって顧客である求人事業主を罰することを想定しているのであろうか。これも、前述の人材ビジネスの立場を考えるなら、まったく現実的でない。

 

5 ILO条約に即した規制を

 雇用仲介事業の規制のあり方を考えるにあたっては、ILO条約(181号)及び勧告(188号)を正面から受け止め、その具体化をはかる姿勢が重要である。
 この点でILO第181号条約は、現行の職業安定法及び労働者派遣法が規制する事業にとどまらず、幅広い雇用仲介事業を適用対象とし、保護されるべき労働者の諸権利を列挙しながら、その権利侵害を規制する適切な立法措置を求めていることに留意すべきである。
 特に結社の自由の権利及び団体交渉権の保障(第4条)、差別の禁止(第5条)、個人情報の保護(第6条)、求職者からの手数料徴収の原則禁止(第7条)、移民労働者の保護及び関係国との協定の締結(第8条)、苦情及び不当労働行為・詐欺行為の救済制度の整備を掲げている点は重要である。
 また、ILO第188号勧告(民間職業紹介事業所勧告)も、労働者の保護規定を列挙している。U−4は「加盟国は、民間職業事業所による非倫理的な行為を防止し及び排除するための必要かつ適当なすべての措置をとるべきである。これらの措置には、制裁(非倫理的な行為を行う民間職業紹介事業所の禁止を含む)を定める法令を含めることができる」、さらにU−7は「権限のある機関は、不公正な宣伝活動及び誤解のおそれのある広告(存在しない仕事に関する広告を含む。)の防止に努めるべきである」としており、こうした内容が十全に確保されることこそ強く求められている。
 その点で同勧告は、「(第181号)条約を実施するための規定の策定及び実施に当たっては、できる限り、三者構成の機関又は使用者団体及び労働者団体が関与すべきである」としており、労働政策審議会において議論を尽くす必要がある。

以  上