雇用対策・雇用法制 −労働者派遣、職業紹介、若年者・中高年雇用対策など

若者雇用促進法の施行令及び基本方針等に関する見解


全労働省労働組合中央執行委員会

若者雇用促進法(青少年雇用促進法)が昨年9月に成立し、10月より一部が施行されている。12月25日には労働政策審議会職業安定分科会において「青少年の雇用の促進等に関する法律施行令案要綱」等が確認された。その内容は、求人不受理や職場情報の提供等、多岐にわたる。ここでは、「ブラック企業」の排除につながるとされる求人不受理と、企業の職場情報の提供、さらには若者雇用対策の柱とされる職業能力開発の課題について、考え方を述べる。

 

1 求人不受理について

 政令案では、労働基準法及び最低賃金法の主要な条項の違反状況について、a過去1年間に2回以上同一条項の違反について是正勧告を受けている場合、b社会的影響が大きいケースとして公表された場合、c対象条項違反により送検され、公表された場合を「不受理の対象」としている。不受理期間は、a及びbの場合は法違反が是正されるまでの期間に加え、是正後6ヵ月、cの場合は送検後1年とし、不受理期間経過後に是正状態が維持されていることを確認した上で不受理を解除するとしている。

 また、男女雇用機会均等法及び育児介護休業法の違反に関し、法違反の是正を求める勧告に従わず、公表された場合、法違反が是正されるまでの期間に加え、是正後6ヵ月を不受理期間としている。

 労働者の権利を侵害する「ブラック企業」を、新卒求人から排除しようとするのであるが、「過去1年間に2回以上同一条項違反によって是正勧告を受けている場合」は、事実上ほとんどなく、あまりに対象範囲が狭い。是正勧告を行えば、その是正に向けて指導を重ねるのが実務であり、通常、2回3回と是正勧告を行うことはない。そもそも、法律が不受理とする求人を新卒求人に限定し、新卒以外の若者も多数が応募する一般求人を対象としていない点も理解に苦しむ。

 不受理の対象を事業場単位としている点について、新卒求人の多くは企業単位で行われ、本社一括で提出されるため、求人不受理の対象事業場を有する企業から求人申し込みがあった際、就業場所に当該事業場を含まないことを条件に受理する方向で検討されている。しかし、法違反を企業全体の問題と受け止め、どこの事業場でも法違反を起こすことのない法令遵守の風土醸成を促すなら、企業全体の求人を不受理とすべきである。

 

2 職場情報の提供について

 若者雇用促進法は、応募者等から求めがあった場合、3類型ごとに1つ以上の情報提供を義務化している。政令案は3つの類型ごとに提供する項目を列挙しており、提供を求められた企業は、列挙された項目から1つ以上を選択して提供することとしている。その項目は、募集採用に関する状況として、「過去3年間の新卒採用者数・離職者数」、「過去3年間の新卒採用者数の男女別人数」、「平均勤続年数」を挙げている。この中から1つを選択して提供すれば良いというのであるから、離職状況を知りたくて情報提供を求めても、採用者の男女別内訳しか示されないこともあり得ることとなり、知りたい情報が開示されるとはとうてい言い難い。雇用管理に関する状況においても、所定外労働時間の実績を知りたくて情報提供を求めても、管理職の女性割合が開示されることがあり得る。このように、職場状況の提供は、若者の求める情報を企業に提供するよう求めるという趣旨に照らせば、あまりに不十分なものである。

 

3 職業能力の開発・向上等について

 職業人生を通じたキャリア形成支援として、キャリアコンサルティングやジョブ・カードの活用が示されているが、青少年に対する支援に資するのか、大きな疑問を持つ。キャリアコンサルティングに関わっては、現在、セルフ・キャリアドックの導入が検討されている。労働者が人間ドックを受診するように定期的に、キャリア診断を受けるものである。現在のキャリア診断では、「職務経歴の棚卸し」と称して、労働者の職業能力を「企業にとってどのくらいの価値があるか」で値踏みし、労働市場においていかに価値の低い労働者であるかを自覚させようとする実態が見受けられる。こうした手法を多くの企業に導入し、労働者に受診させることは、労働者の雇用の安定や処遇改善とは逆に、解雇や処遇低下の理由として活用されかねない。

 ジョブ・カードは昨年改訂され、労働者が電子的に管理するものとされ、在職中の職業能力を評価するシートが新たに追加されている。ジョブ・カードの電子化は、個人情報漏洩の危険性を大きく高めている。従前の紙媒体では、労働者が持参するジョブ・カードにキャリア・コンサルタント等が記入し、労働者に返戻する。電子化したことによって、労働者はUSBメモリ等をキャリア・コンサルタントに渡し、キャリア・コンサルタントはパソコン上で必要な書き込みを行い、データを上書きして労働者に返戻する。その際、紙媒体よりはるかに容易にデータをコピーすることが可能である。また、在職中の職業能力の評価は、労働者の職歴ごとに、職業能力を労働者の自己評価と企業評価を、それぞれA,B,Cの3段階で行うものである。多くは退職後にシートの整備が必要となるが、離職にあたって人間関係が悪化していれば、労働者の自己評価の多くがAであっても、企業評価はCとなることも考えられ、その評価は当該企業だけが行いうるものであり、労働者にしてみれば、不本意な評価が固定されることとなる。このシートを開示するかどうかは労働者の判断に委ねられているが、厚生労働省はジョブ・カードを応募書類として活用するよう、強く企業に働きかけている。在職中の職業能力評価シートの存在が広く知られることとなれば、不本意な評価であっても開示が強いられ、その内容によって採否が決定されることになる。

 これらの職業能力開発施策は、青少年の職業人生を豊かにするものではなく、企業の人件費抑制を後押しするものとなりかねず、抜本的な見直しが必要である。

 

4 ユースエール認定企業制度について

 すでに施行されている「ユースエール認定企業」も問題が大きい。一定の要件を満たしている企業を厚生労働省が認定し、優遇措置を講じるものである。認定を受ければ、認定マークを使用してホームページ等で「ユースエール認定企業」であることをアピールできるほか、雇い入れ助成が上積みされ、安定所では優先的に就職面接会を実施するなどの特別扱いを受けることができる。

 認定に必要な要件を見ると「過去3事業年度の新卒者などの正社員として就職した人の離職率が20%以下」、「前事業年度の正社員の月平均所定外労働時間が20時間以下または週労働時間が60時間以上の正社員の割合が5%以下」、「前事業年度の正社員の有給休暇の年平均取得率が70%以上」など、正社員の雇用管理を要件としている。しかし、週労働時間60時間以上の正社員割合5%以下の要件は、過労死ラインを越えて働く労働者の存在を5%まで容認するもので適当ではない。「重大な労働関係等法令違反を行っていないこと」の要件についても、実効性を確保するには申請事業場に臨検監督を行った上で認定することが必要ではないか。あわせて、認定要件が正社員の状況に限定され、非正規職員の雇用管理は不問としていることも問題が大きい。セクハラやパワハラが横行し、非正規労働者を使い捨てていても「優良企業」として認定しかねないものである。

 若者の就職促進に国と企業がとりくむことは重要であるが、青少年雇用促進法は、その実効に疑問が強く、ここに述べた問題点を解決するための見直しが必要である。

 

以  上