雇用対策・雇用法制 −労働者派遣、職業紹介、若年者・中高年雇用対策など

深刻な雇用失業情勢のもと、有期保護制度導入に反対する声明

 

2011年6月22日
全労働省労働組合中央執行委員会

 政府は、生活保護制度の見直しに向け、地方公共団体との協議を非公開で開始しました。これに先立ち、昨年10月、指定都市市長会は「社会保障制度全般のあり方を含めた生活保護制度の抜本的改革の提案」を発表しました。そこでは、稼働年齢層の保護受給者については、ハローワークも活用した「集中的かつ強力な就労支援」を実施して、就労自立をはかるとしたうえで、就労自立ができない場合には、保護の適用について「3年あるいは5年といった一定期間ごとに改めて判断する」と記述しています。そして、判断基準として「面接に行った回数」や重度の障害、慢性病等を例示しています。つまり、面接回数が少なく、病気や障害もなければ3年や5年で保護を打ち切るとの有期生活保護を導入することを求めています。しかし、厳しい雇用失業情勢と求職者の実情に照らすなら、強い問題意識を抱かざるを得ません。

 

 多くの生活保護受給者は、安定した職業に就職し、生活保護からの自立を望んでおり、それが「集中的かつ強力な就労支援」で実現できるのであれば、たいへん望ましいことと言えます。しかし、再就職は容易ではありません。

 平成23年4月の月間有効求職者数は2,867,380人、これに対し月間有効求人数は1,610,497人、ハローワークのすべての求人が充足しても、なお126万人分が不足しているのが実情です。しかもこれはパート労働者を含んだ数字であり、パート労働者を除けば、月間有効求職者数は2,089,340人、これに対し月間有効求人数は947,434人、正社員に限れば月間有効求人数は714,456人に過ぎず、有効求人倍率は0.34。どれだけ努力しても、10人中4人も正社員として就職できないのが現在の雇用情勢なのです。

 しかも、募集中の求人であっても、応募できるものはさらに限定されます。中小企業の厳しい経営環境を反映し、最低賃金額やそれに近い賃金水準の求人が多数存在します。生活保護基準以下の賃金水準では自立できないため、ある程度の賃金水準の求人には応募が殺到し、倍率が100倍を超えるケースも珍しくありません。面接の前段で履歴書や職務経歴書による書類選考を実施する事業所が大半であり、ハローワーク職員が応募書類の作成支援を行っても、書類選考を突破し、面接にこぎつけることは必ずしも容易ではありません。再就職は、面接でさらに選考された後に実現するものであり、本人が努力してハローワークが支援すれば一定期間内に必ず再就職できるといった状況ではまったくありません。面接回数が少ないことを理由に、求職活動が不十分と判断することもきわめて不適切です。

 

 東日本大震災の影響により、4月の有効求人倍率は岩手、宮城で大幅に落ち込んでいます。リーマンショック以降低迷している雇用情勢は、東日本大震災や節電の影響による企業活動の縮小によって、いっそう悪化することが強く懸念されます。

 

 こうした状況を見るなら、有期保護導入の議論は雇用情勢の実情と乖離したものと言わざるを得ず、当事者や労働行政関係者、労働組合などを排除した密室での議論は、憲法が保障する国民の生存権を脅かすことになりかねません。私たちは、厳しい雇用失業情勢の中、ケースワーカーの増員とともに、生活保護制度を十全に機能させるべきと考えます。

 

以  上