雇用対策・雇用法制 −労働者派遣、職業紹介、若年者・中高年雇用対策など

求職者支援制度の創設に関する提言(その2)
〜 訓練受給中の生活費について 〜

 

2011年1月
全労働省労働組合
求職者支援制度検討プロジェクト

 

1.訓練・生活支援給付制度の概要

2009年7月に国が基金を造成して創設された緊急人材育成支援事業により、雇用保険受給資格のない求職者が無料で職業訓練を受講できる「基金訓練」と、訓練受講中の生活を支える「訓練・生活支援給付」の両制度が開始されました。

訓練・生活支援給付は、次の要件をすべて満たす人が対象となります。

(a) ハローワークに求職登録をしており、ハローワークのあっせんにより基金訓練または公共職業訓練を受講する者

(b) 雇用保険の求職者給付や、職業転換給付金の就職促進手当および訓練手当を受給できない者

(c) 世帯の主たる生計者(2009年10月1日から2010年9月30日までの学校卒業者で未就職者には適用しない)

(d) 年収見込み200万円以下、かつ世帯全体の年収見込みが300万円以下

(e) 世帯全体の金融資産が800万円以下

(f) 現在住んでいるところ以外に土地・建物を所有していない者

(g) 過去3年間に不正行為により国の給付金等の支給を受けていない者

訓練受講中の訓練・生活支援給付は、扶養家族がいる者に対しては月額12万円、それ以外の者に対しては月額10万円が支給されます。ただし、受講する訓練の出席日数が8割以上であることが必要で、8割に満たない場合はそれ以降の支給は行われません。

また、訓練・生活支援給付の支給対象者で、訓練・生活支援給付では生活費が不足する者に対し、労働金庫による訓練・生活支援資金融資が実施されています。この融資は扶養家族がいる者に対しては月額8万円、それ以外の者に対しては月額5万円を上限に、年利3%で実施されます。訓練修了後6ヵ月以内に就職した場合(6ヵ月以上の雇用が見込まれる就職をして雇用保険一般被保険者資格を取得した場合に限る)には融資額の2分の1について返済が免除されます。

厚生労働省の資料によると、訓練・生活支援給付は2010年4月から2010年12月の間で129,721件、融資は2010年4月から2010年11月までの間で15,090件が認定されています。

これらの制度は、当初2011年度末(2012年3月31日)までの緊急対策として発足しました。しかし、その後の政府内の議論により、2011年3月末で基金による事業を廃止し、2011年4月以降は恒久制度として新たな求職者支援制度を実施することが決定されました。現在、労働政策審議会の職業能力開発分科会及び職業安定分科会雇用保険部会で、恒久化に向けた検討が進められていますが、現時点で法案要綱等がとりまとめられておらず、本年4月から恒久制度に移行できる状況にはありません。そのため、新制度が発足するまでの間は、現行の訓練・生活支援給付および訓練・生活支援資金融資が継続実施されることとなっています。

2.第二のセーフティネットとしての位置付け

リーマンショック以降の急激な経済状況の悪化により、派遣労働者や期間工を中心に非常に多くの労働者が解雇や雇い止めに遭い、離職と同時に住居を喪失するきわめて過酷な状況に追い詰められました。政府は2008年末以降、これらの住居・生活困窮者を対象にさまざまな施策を打ち出しました。ハローワークを窓口にした制度としては、住居を喪失した離職者に対しては住宅入居初期費用や生活費、1年以上の長期失業者で民間職業紹介機関による支援を受ける者に対しては生活費を、それぞれ労働金庫から融資する就職安定資金制度が創設されました。また、住居を喪失したり喪失するおそれのある者を対象に、市区町村を窓口に家賃を給付する住宅手当制度や、住居を喪失した離職者に対し社会福祉協議会を窓口に入居初期費用や生活費を融資する総合支援資金貸付制度が創設されました。あわせて、公的給付や融資制度の申請後、給付や融資が実行されるまでの生活費として、社会福祉協議会を窓口とする臨時特例つなぎ資金融資が創設されました。

これらの制度は、第二のセーフティネットと称され、最後のセーフティネットである生活保護制度の前段での生活支援策として位置づけられました。したがって訓練・生活支援給付金や訓練・生活支援資金融資は生活支援の性格を色濃く持ち、基金訓練もそれに伴い、職業紹介を通じて受講指示を行う公共職業訓練とは異なり、生活困窮者を経済的に支援する方策として訓練受講が活用されるという側面を持っています。

その後、住居喪失者対策としての就職安定資金融資は制度発足直後にくらべ著しく利用状況が低調であるため、2010年9月末で新規の受付を終了し、長期失業者対策の就職安定資金融資も2011年3月末で終了することとされています。第二のセーフティネットとしては、市区町村や社会福祉協議会において実施する施策は残されているものの、ハローワークを窓口に実施するものは訓練・生活支援給付金のみとなり、生活支援策としての期待が高まらざるを得ない状況となっています。

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3.訓練・生活支援給付金や訓練・生活支援資金融資の問題点

訓練・生活支援給付や融資制度は、雇用保険受給資格のない求職者が、基金訓練や公共職業訓練を受講する間の生活を支える制度として、相当の実績をあげていますが、ハローワークの第一線では、さまざまな問題も明らかになっています。

(1)訓練・生活支援給付額の問題

厳しい経済情勢が長期化するもとで、リーマンショック以前とくらべてハローワークの求人数も低水準で推移していますが、求人の内容も、最低賃金額で提出される求人がかなりの割合を占めています。全国で最も低い最低賃金額は時間あたり642円で、1日8時間として5,136円、月に20日働いても、総支給額でわずか102,720円と、訓練・生活支援給付額と同水準にしかなりません。このような条件の求人が多数を占めていれば、求職者の意欲は再就職に向かず、当面は基金訓練とその間の給付で生活することを選択しがちになります。こうした状況を根本的に解決するには、中小零細事業者の経営環境を改善し、労働者が安心して働ける水準に最低賃金を引き上げることが必要です。しかしながら、現に求人事業主がきわめて厳しい環境に置かれる中、訓練・生活支援給付が、再就職の意欲を低下させるという問題が生じています。

一方、東京などの大都市部では住居費が高額であり、訓練・生活支援給付のみでは生計が成り立たない問題も存在します。訓練・生活支援給付と現在市区町村が実施している住宅手当制度の併用が認められておらず、地域の家賃水準に適合した生活設計が事実上不可能な現状にあります。

(2)生活保護との関係

先に行った提言でも触れたとおり、要保護状態にある生活困窮者が、福祉事務所で生活保護制度の説明を受けることなく、基金訓練と訓練・生活支援給付に誘導されてくる事案が後を絶ちません。中には、保護受給者に基金訓練の受講を勧め、訓練・生活支援給付の受給を機に保護を打ち切る対応も見られます。ある受講者は、生活保護を受けて医療扶助によって通院治療を続けていましたが、基金訓練に誘導され、訓練・生活支援給付による収入を理由に保護を打ち切られ、医療扶助を受けることが出来なくなったため、治療も中止せざるを得なくなっています。

 生活保護制度では、就労して収入を得た場合、その額を福祉事務所が認定し、保護費から減額されますが、その際、基礎控除等が適用されることから、その月の収入は就労がない月より増加します。これにより、就労への意欲を維持することができますが、訓練・生活支援給付に対しては控除が適用されず、給付額全額が保護費から減額されます。

こうした制度上の問題に加え、一部には生活保護受給中にケースワーカーに相談せずに基金訓練を受講し、訓練・生活支援給付を収入申告しないという不正受給事案も見受けられます。

(3)支給要件の周知が不足

 訓練・生活支援給付の支給要件は上述したとおりですが、硬直的な運用は制度の趣旨にそぐわないことになりかねないことから、7項目の支給要件確認にあたっては、個々の求職者の状況に照らして対象者を拡大する運用が認められています。たとえば、現在住んでいるところ以外に土地・建物を所有していない条件がありますが、住んでいるところ以外に所有している土地に他人が家を建てている場合や、他人との共同名義になっている場合、処分できない土地・建物と見なし、給付の対象となります。こうした運用は、生活困窮者を支援する上で必要なものですが、周知が十分行われていないのが現実です。ハローワーク窓口では、厚生労働省ホームページに掲載されている要件を見て制度の対象とならないと判断し、活用をあきらめた人が、後日友人に聞いて受給できることを知ったケースなどが見受けられます。そのことから、訓練・生活支援給付の対象となる人であっても、実際の制度運用を知らず、ホームページやパンフレットでみずから判断して申請をあきらめるケースも相当数にのぼるものと考えられます。

(4)要件確認の困難性

訓練・生活支援給付の支給要件の確認は、たとえば本人の資産要件や同じ住宅に入居する者を別世帯と認定するか等、本人の申告に頼らざるを得ない部分が少なくありません。また、支給要件については、受給希望者に対してハローワークで説明するものの、最終判断は中央職業能力開発協会が行います。そのため、ハローワークの窓口では、申請者に対し要件に該当するか否かについて、明確な説明が困難な状況にあります。

(5)訓練・生活支援資金融資の問題

訓練・生活支援融資では、労働金庫が審査を行って融資実行の可否を判断しますが、申し込みを行ったものの、審査に通らないケースが相当数にのぼります。これは、金融機関を経由して行う融資であるため、多重債務など信用情報上の問題がある申請者には実行されないという審査基準によります。しかしながら、失業し収入が途絶え、資産も保有しない困窮者の場合、生活維持のためやむなく債務を背負うことは少なくありません。こうした方々に対し、一般的な金融機関の融資制度と同じ審査基準を適用することにそもそも無理があります。現に就職安定資金融資制度では、通常の審査基準を適用したことにより利用が大幅に低下した経緯があります。

また、融資を申し込むには「訓練・生活支援給付受給資格者証」の提出が必要となりますが、その交付が遅れ、訓練受講の最初の月について、融資の申請が締め切りに間に合わないケースが散見されます。同じ緊急人材育成支援事業の事業でありながら、受講開始時に給付と融資双方の手続きが行えないために不利益が生じる点は見過ごせない問題と言えます。

(6)生活支援と職業訓練を結びつけることの矛盾

雇用・失業情勢の厳しさが長期化し、貧困が大きな社会問題となっており、行政が生活困窮者をいかに支援するかが大きな課題となっています。生活保護が十分周知されていないうえ、住宅手当や総合支援資金貸付制度には使いづらい点が多くあります。一方、職業訓練の意欲や希望職種に合致する訓練科目の有無に関係なく、生活困窮者が訓練・生活支援給付の受給を目的に、基金訓練受講を申し込まざるを得ない状況が広がっています。そのことが、前回の提言でも述べたとおり、一つの教室に学ぶ受講生全員が同じ目的意識を持って職業訓練に臨むことができない原因を作り出し、訓練効果を上げるうえでも問題を生じさせています。

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4.訓練・生活支援給付および訓練・生活支援資金融資において改善すべき事項

現行の基金訓練および訓練・生活支援給付(融資)が、先に述べたとおり本年4月から新制度に移行できる見通しにはなく、当面は、現行制度を継続実施することが予定されています。したがって、その間、現在生じている諸問題を解消するため、以下の事項について提言します。

(1) 訓練・生活支援給付と住宅手当の併給

現在の訓練・生活支援給付は全国一律であり、地域の賃金水準や物価を考慮したものではなく、とりわけ、住宅費の高い地域においては、追加融資等を利用しなければ生活保護基準の生活すらできない状況にあります。そのため、現行の住宅手当との併給を可能とすることが必要と考えます。そうなれば、訓練・生活支援給付は収入として扱われ、単身世帯では84,000円を超える部分は住宅手当支給額が減額となりますが、生活保護基準にほぼ均衡する生活費を確保することができます。

(2)生活保護の取り扱いの改善

生活保護受給中に訓練・生活支援給付の受給が始まり、それを理由に生活保護が打ち切られるケースが散見されます。しかしながら、訓練・生活支援給付は訓練受講期間中しか措置されず、職業横断的スキル習得コースの期間はわずか3ヵ月であり、最初の訓練受講時にはその後の連続受講の見通しも立っていません。したがって、福祉事務所が訓練・生活支援給付を収入認定して、その額が保護費の月額を上回っていたとしても、保護を廃止するのではなく一時的な停止とし、訓練修了時に収入が保護費を下回る状態となれば、ただちに保護を実施できる態勢を維持すべきです。

福祉事務所の最初の相談においても、相談者が要保護状態にあれば生活保護制度を十分説明した上で、基金訓練の受講が有効であれば、受講手続きを案内することが妥当な順序です。生活保護法では、他に利用できる給付制度等(他法・他施策)があれば、生活保護に優先して利用することが定められており、訓練・生活支援給付はこの他法・他施策にあたります。その際、当該相談者の最低生活費が訓練・生活支援給付を上回る場合には、その差額は保護費として給付されるべきであり、最低生活費が訓練・生活支援給付以内であっても、給付が終了した時点で保護を実施する姿勢が伝えられなければなりません。

本来は、生活保護制度によって最低限度の生活を保障されるべき生活困窮者が、福祉事務所によって基金訓練と訓練・生活支援給付に誘導される背景には、雇用情勢悪化によって増え続ける生活保護受給者と、地域の経済活動が停滞し自治体の税収も落ち込んでいる中での、生活保護費の増大による自治体の財政負担があります。福祉事務所のケースワーカーは、担当世帯数が標準で80世帯とされているにもかかわらず100世帯をはるかに超えており、増員がはかられない中で、高齢者などていねいな生活援助が必要な人に手がまわらないばかりか、過重労働が常態化しています。また、生活保護費の4分の1とされる自治体の費用負担が、財政に深刻な影響を及ぼしています。生活困窮者を憲法の理念に則り十全に保護するためには、国による生活保護予算増と、担当職員の増員が不可欠となっています(2010年10月「生活に困窮する失業者等を行政が支援するために−『派遣村』を必要としない支援策の具体化のための課題−」国公労連、自治労連、全労働共同提言参照)。

(3)支給要件の明確化と事務の一元化

現在の訓練・生活支援給付の運用は、7項目の支給要件について、柔軟に行われている項目が多数あります。しかし、それらが周知されていないため、本来支給対象とされるべき人が申請に至っていないことが考えられます。そのため、厚生労働省ホームページやハローワークのパンフレット等により、わかりやすく周知をはかる必要があります。

また、支給要件と確認方法をいっそう明確・簡略化し、支給申請希望者と直接対応するハローワークに支給決定権限を移し、処理を迅速にすることが必要と考えます。

(4)訓練・生活支援資金融資の運用改善

現行は、金融機関による審査が実施され、多重債務等によって信用情報上の問題がある場合は融資を受けることができません。一方、生活保護制度においては、生活扶助を借金返済に充てることは認められないものの、法律家等によって債務整理を行う場合は保護の適用が行われています。訓練・生活支援資金融資についても、債務整理を行うことを前提に実施すべきと考えます。

また、訓練・生活支援給付と訓練・生活支援資金融資の申請窓口が異なり、しかも融資の申請に給付の受給資格者証が必要となることから、訓練受講最初の月に融資が受けられないことが起きているため、申請をハローワークに一元化し、ハローワークから必要な機関に書類を回付することが有効と考えます。

 

5.あるべき求職者支援制度に向けた生活支援制度に関する提言

現在、労働政策審議会では、恒久事業の設計に向けた議論が行われていますが、新たな給付金については現行の訓練・生活支援給付の枠組みを前提にしており、その財源を一般会計に求めるか、労働保険特別会計に求めるか等が議論の中心となっています。しかし、これまで述べたような諸問題を解決するには、現行制度の延長線上では無理があるものと考えます。生活困窮者に対する支援メニューが限られているため、生活費を得るために無理な訓練受講を行う実態が広がっており、生活支援と訓練受講は切り離して制度設計すべきと考えます。具体的には、以下の措置について提言します。

(1)生活保護制度の十全な実施

さまざまな事情によって生活保護基準以下の収入しか得られず、資産もない困窮者については、憲法の理念に則って、生活保護を実施する必要があります。それにより、文化的かつ最低限の生活を確保し、精神的な安定も得ることが、職業訓練を含む求職活動の出発点と言うことができます。また、生活費を得るためには、希望職種と異なる訓練を無理に受講するなど、意欲を伴わない訓練受講の防止にもつながります。そのための前提条件については前述したとおりです。

なお、ハローワーク職員に対する生活保護制度に関する研修も、住居・生活相談窓口の担当者など、未だ一部でしか実施されておらず、職業相談や雇用保険担当など、幅広く実施するとともに、生活保護手帳などの資料もハローワークに整備する必要があります。

(2)利用しやすい低利融資の創設

生活保護制度は、生活保護基準以下の生活を余儀なくされる国民に対する給付制度であり、預貯金など生活保護基準に該当しない者に給付を実施することは、生活保護制度の位置づけを不明確にしかねません。

資産を有するなど生活保護基準は上回るものの、収入が途絶え生活不安を抱える困窮者に対しては、無利子もしくは低利の融資を実行することにより、生活再建をめざすシステムが妥当であると考えます。現在、第二のセーフティネットとして、住宅手当制度と総合支援資金貸付制度が実施されていますが、この拡充が必要と考えます。総合支援資金貸付は、住宅困窮者に対しては住宅手当との併用を条件としており、一方、住宅手当には単身世帯50万円、複数世帯100万円という資産要件が設けられています。また、住宅手当と総合支援資金貸付を申請する場合、多くの社会福祉協議会では、初回の申請から生活費の融資実行までに2ヵ月近くを要するなど、非常に使いづらい運用が行われています。これらの資産要件は、こんにち、将来不安を払拭するには必ずしも十分とは言えず、現に失業等により収入を得られない状態であれば、幅広く制度の対象とすべきです。また、入居初期費用と生活費の融資を希望する者に対しては、概ね2週間以内程度で融資が実行できるよう運用を改善すべきです。あわせて、一定期間内に安定した再就職を実現した者を対象に、就職安定資金融資制度や訓練・生活支援資金融資制度において措置されてきた返済免除措置も導入すべきと考えます。

(3)訓練受講に対する給付

新たな職業訓練の受講にあたっては、教材費や交通費を除き、国が無料で職業訓練を実施する制度であるため、雇用保険の受給資格はないものの生活困窮状態にはない受講生に対しては、特別な給付の必要はないと考えます。しかしながら、生活保護や第二のセーフティネットによる生活費支援を受けながら技能習得をめざす困窮者に対しては、何らかの措置が必要と考えます。

生活保護受給者が訓練を受講するにあたり、仮に何の給付も実施されないとすれば、保護費の増大に悩む多くの自治体の財政事情から、「職業訓練よりも再就職」との就労指導が行われ、真に再就職をめざすにあたって有効な訓練が、効果的に実施できない事態が懸念されます。

第二のセーフティネットとしての融資を利用する場合も、厳しい雇用情勢のもとで失業の長期化は避けがたい状況にあり、多額の融資は、再就職後の返済が困難になることや、返済を心配して地域の賃金水準以上の好条件での再就職に固執せざるを得ない状況を誘発しかねません。

こうした事態を回避するための給付として、雇用保険法で措置されている受講手当が一つの参考となります。受講手当は一日当たり700円が支給されており、月に20日間訓練を受講した場合は月額1万4千円となります。新たな給付においては、雇用保険受給資格の無い、より経済的弱者を対象とすることから、雇用保険受講手当の2倍程度の月額3万円程度が妥当ではないかと考えます。

あわせて、訓練実施施設への通学費用についても、受講者の負担軽減と居住地域による格差を解消するため支給すべきと考えます。

 この定額給付の実施にあたっては、事務を円滑に行うため、労働局等の行政機関が行う場合は必要な体制整備をはかり、もしくは安定的に事務を実施できる外部機関に委託する必要があります。

(4)財政措置について

新たな訓練受講生に対する定額給付の財源は、過去に雇用保険被保険者でなかった者を対象とすることから、雇用保険財政で措置することは適当でなく、国の一般会計より措置すべきと考えます。

(5)雇用保険制度の充実

現行雇用保険制度は、昭和50年代後半には失業者の5割以上が雇用保険受給者であったものが次第に低下し、現在では2割程度にとどまっています。とりわけ、特定受給資格者制度の導入(平成12年)に伴い、特定受給資格者でない受給資格者の所定給付日数は厳しく抑制され、現在ではすべての受給資格者の約半数は所定給付日数が90日となっており、こんにちの厳しい雇用情勢のもと、その間に再就職を実現することはきわめて困難な状況となっています。したがって、所定給付日数の拡充が求められます。また、所的給付日数が切り下げられた結果、失業者に占める雇用保険受給者の割合を低下させ、「100年に一度」と言われる雇用情勢の危機的な事態に際しても、全国延長給付(全受給資格者を対象に90日分延長給付を実施)が発動されないという矛盾を露呈しました。また、退職を決意するにはさまざまな事情が背景にあるにもかかわらず、自己都合・会社都合等の区分によって、3ヵ月間もの給付制限期間が設けられ、失業中の生活をきわめて困難にしています。雇用保険の失業給付は失業中の求職活動を支援するという目的に照らし、退職理由による給付制限については見直すべきです。

 

以  上