雇用対策・雇用法制 −労働者派遣、職業紹介、若年者・中高年雇用対策など

雇用保険業務担当者座談会
−雇用保険業務の現場で何がおきているか−

 現在、解雇や雇い止めが急激に行われ失業者が急増しています。この現状で雇用のセーフティネットとしての雇用保険制度のあり方が問われています。そこで全労働では、雇用保険の現状とあるべき方向を考えるため、2009年4月17日、全国でも離職者が最も増加している地域の30人規模安定所で雇用保険の第一線業務に携わっている職員の参加で座談会を行いました。

A:公共職業安定所雇用保険適用業務担当職員

B:同給付業務担当職員

C:全労働本部職業安定系統中央執行委員

司会:全労働本部

 

司会:まず現在の業務の現状ですが、Aさん、適用部門はどうなっていますか。

A:朝から事業所の方が大勢お見えになっています。業務システムが延長されて、当日処理ができるようになって、それは大変助かっているのですが、逆に事業所の方を長く待たせるようになっています。事業所の担当者は待っている間に会社に電話をかけて「もう少ししたら終わるから」と6時半くらいまでお待たせしています。

司:それは昨年とはまったく違う状況ですか。

A:まったく違います。例年でしたら、せいぜい4時半くらいまでには一段落ついていました。5時くらいからは預かりになっている取得届や継続給付のチェックを行って、翌日朝に入力するというのが例年の流れです。いまはそれが出来なくて、急ぎでない手続きは「1ヵ月以内には何とかしますから」と説明して預かっている状況です。受付の箱に順番に書類を入れていただいて、本来なら簡単なものをどんどん先行して処理すればいいのですけど、待っていらっしゃる方からからすれば、「順番だろう」というお気持ちがありますので、どうしても待ち時間が長くなります。それで、取得届1枚もってきたのに「どうしてこんなに待たされるのか」ということにもなってしまいます。50件、60件の離職票を一度にお持ちになる企業もありますので、それだけで職員一人がかかりきりになってしまいます。そうした企業が3社、4社と来られると、窓口には誰も座っていないのに職員が黙々と書類に向かって、取得届1枚の方がいつまでも待たされる、そういうことになっています。大企業の方なら事情もわかっておられますが、年に届出が1回とかいう事業所の場合、まず駐車場に入れないところから始まって、適用窓口がある2階に行くのも、求職者の方がものすごい人数なのでなかなか階段が上れなくて、第1関門、第2関門をくぐってようやく窓口にたどり着いて、そこで待たされるといったことになっています。 

司:給付窓口の現状もお聞かせください。

B:去年の4月と較べて、日々の件数で倍以上、1月から3月の期間で見れば、約3倍の資格決定件数になっています。認定件数も、10月くらいまでは日に100件程度だったものが、今は400程度で最近一番多い日は600くらいありました。受給者実人員が3倍程度になっています。雇用保険法改正に関する電話の問い合わせもかなりあります。窓口では1時間待ち2時間待ちは当たり前です。従前は来られた順番で手続きしていたのですが、資格決定専門、就職などの手続き専門の職員を配置して、それ以外の認定を止めないようにして、何とか待ち時間を短くしています。本来なら一人ひとりからお話を伺って手続きすべきところですが、事業主都合の解雇などの場合は、ご本人の了解のもとに別室で集団的に資格決定をやらなければ追いつかない状況です。それで何とかその日のうちに手続きを済ませて帰っていただけるといった状態です。昨年1月から12月までの支給決定件数に、4月で届くような件数になっています。

:給付を受ける方は、事業主都合が大半ですか。

:確かに事業主都合が多いのですが、3月半ばから自己都合の方も増えています。意外なことなので職場で話しているのですが、今の厳しい状況に見切りをつけて、自信のある方は次を探そうとされているのではないかと考えています。  

:派遣だとか期間工ではなく正社員の方もですか。

B:そうですね。派遣切り、雇い止めの次に正社員切りが来るのではないかと考えて、それなら早いうちに次の仕事を探そうという方が多いように感じます。

それと、法改正もあって問い合わせが相当多いですね。月に千や二千は受けています。保険法がわかりにくくなっていて、あまり働いている人に見えない制度なので、もらえるのか、といった質問も多いです。

司:こちらは、日系人外国人の離職者も多く、通訳をはさむので時間がかかると思いますが、それ以外に外国人に関してお感じのことはありますか。

A:遡及適用がかなりあります。というのは、人手不足感の強い時期に、事業所が労働者にやめられては困るので、雇う際に雇用保険に入りたいか入りたくないか本人に聞いて(笑)、言いなりで企業側が対応していたために取得がされていない実態がありました。それが、今の時期に解雇や雇い止めになって、「自分の失業保険はどうなっているのか」という問い合わせが相当あります。

司:どのくらいの数になりますか。

:毎日必ずあるような感じですね。

:給付窓口が発端となるケースもかなりあります。所定給付日数が90日と聞いて、「これだけの期間働いていたから、もっともらえるはずだ」という話になって、適用部門に案内するような場合です。直接事業主に話しに行かれる方もあって、事業主が「どういうことですか」と電話をかけてこられます。事情を説明して、協力をお願いしています。

A:外国人の場合は、日本人と違って被保険者記録がバラバラです。

C:名前の表記が雇われるたびに違っているということですね。

B:給付では、振込不能にならないように、氏名は口座の名前を使っています。被保険者台帳の名前はそれとして、帳票10133で口座の氏名を指定しています。これをやらないと振込不能で大変なことになります。4月にそれで大混乱したので、非常勤職員がかかりきりになって入力してもらっています。

司:今回の法改正は後にご議論いただくとして、3月までの状況の中で、雇用保険制度が機能している、あるいはしていないといった観点でお気づきの点はないでしょうか。

C:昭和59年に給付制限が3ヵ月になり再就職手当ができました。平成元年にはパート労働者に対する適用範囲の拡大、平成13年に特定受給資格者ができ、15年に就業促進手当、17年に受給資格が被保険者期間12ヵ月と変遷しています。

司:大きかったのは離職前1年のうち6ヵ月被保険者期間があれば受給資格が得られたものが、過去2年で12ヵ月必要になったことではないでしょうか。

B:それで救える人がいることも事実です。細切れで働いているような人の中には、過去1年に6ヵ月なら資格はないけども、2年で12ヵ月ならあるという人もいました。ただ、逆に6ヵ月しか働いていない人はすべてだめになりましたが。

A:大手の期間工ですが、過去に6ヵ月の契約で雇われていました。その時は失業給付を受けられて、他に仕事がないので再び同様の契約で働いて期間満了になって、受けられると思ったら17年改正で資格がないといった話がありました。

司:Bさんから救える人もあったというお話があって意外だったのですが、私はトータルで見ると被保険者期間12ヵ月はマイナスだと思っていました。

B:トータルではもちろんマイナスだと思います。ただ、障害者の方で、なかなか長期に勤められるところがなく、被保険者期間をみていくと2年で12ヵ月であったために救われたケースが1件あった、その1件だけのプラスです。いまの派遣切りの実態を見るならたいへんなマイナスです。本則1年のうち6ヵ月で、特殊な事情があれば2年で12ヵ月であればいいですね。セーフティネットであるならそうした要件緩和をやるべきでしょうね。

司:受給資格で言えば、以前は電話で受給資格があるかどうかを答えられましたが、離職理由が決定されないと資格の有無が答えられなくなった点はいかがですか。

B:離職票を見ないと何とも言えないわけですから、とにかく離職票を持って来てくださいと言うしかありません。そして持ってきてもらって、資格がなかったときにはトラブルにもなります。余談ですが、1年の契約で完全に1年間働いていなかった、たとえば4月15日に取得して3月末で喪失して資格がないといった方はかなりあります。

A:契約期間は、終わりはきっちり決められていますが、採用時期はバラバラなことが多いのでそうなりますね。適用の窓口でも事業主から「この人もらえますか」という問い合わせを受けますが、離職理由はその場で期間満了だとわかるので、資格がないと答えることはよくあります。

司:私たちが相談活動していると、「納得できないままに退職届を書いたらだめですよ」といつも言ってますが、よくわからないままに書かされているケースはありますか。

:多いですね。事情を聞いていくと、これを書かないと離職票がもらえないとか言われて書かされています。求職者の方にとって、解雇という事実は事実なので、「何とかしてくれ」となります。その場合は離職票の補正にまわします。

司:その補正は適用が対応することになりますね。

A:ある事業所で、それまでは退職届を書かせていたところがありました。ところが、ある労働者がおかしいのではないか、と安定所に申し出て、従業員同士の横の連絡で別の労働者が別の安定所でも「調べてほしい」ということになって、事業所と話をしたら理解してもらえて、離職理由が解雇に訂正されました。それ以降、自己都合ではないかと思われるものも、すべて解雇で出てくるようになりました(笑)。

B:それでも離職者から話を聞いていると、退職届を書かないと離職票出さないと言っている企業はあります。知識がないために書いちゃっている実態ですね。

司:この間の保険法見直しの中では、基本手当の日額もずいぶん低くなった感じがしますが、それに関するお気づきの点はありますか。

B:今日説明会をやって、「前より給料は高いのに、前もらったときより相当低くなってるな」と言われました。算定基礎の見直しなどを説明しましたが、「これでは死ねって言うのかよ」と言われました。一番高い人で20万ちょっとですからね。

司:家族構成によっては生活保護基準以下ですね。最高額がこれではいかがかと思いますね。

B:新規採用の時に失業という事故におけるセーフティネットと聞かされましたがどうなっちゃったんでしょうかね。金額と日数は何とかしないといけないと思います。

A:日数は今の雇用情勢の中で平均180はないときついと思います。

B:年金との併給も認められなくなりました。法体系が違うのにどうかな、と当時から思っていました。今の受給資格者の認定日の支給額は15万くらいだと思います。こになにわずかの金額で年金が止められるんです。両方合わせてようやく生活できるかどうかといったところなのに。生活保護より低い年金や雇用保険では、もはやセーフティネットとは言えないですね。

C:年金の減額は行うにせよ、併給を可能にすべきだと思いますね。

B:働いていれば年金は減額ですから、それと同じにすればいいだけだと思います。

司:そのように穴があいてしまっているセーフティネットですが、今回、法改正されました。まだ日が経っていませんが、その評価についてお聞かせください。

B:旧法に戻された部分もあって、評価はしますが、事務処理を考えると個別延長給付は頭が痛いです。もちろん必要性は感じますが、中途半端だし、法改正以前の方との不公平感もあります。

司:施行日は、4月1日を置きながら給付関係は3月末にしました。

B:地域の感覚からすれば、11月1日にさかのぼれば多くの方が救われました。閣議決定日の12月9日であっても相当違っていました。

:特定理由離職者が新たに設けられましたが、適用ではどのように受け止めておられますか。

:契約延長を本人が望んでいたかどうかという条件がありますが、何百人と雇い止めにしている事業所で、いったい誰がそれを聞いて回るのか、現実的でない気がします。結局不明ということになってしまいます。

:給付の窓口では、できるだけ救済する方向で聞き取るよう徹底しています。

司:被保険者資格取得も要件緩和されましたが、効果はあると思われますか。

:派遣の方は救われるかも知れません。短時間の場合は期間の定めがあっても自動更新されるというのがほとんどです。地方公共団体などの非常勤の方がどうなるかではないでしょうか。これまで1年未満の契約で加入できなかったものが、加入できるようにはなりますが、一般企業ではたとえ2ヵ月契約でも、更新を重ねるのでこれまでも加入していました。

司:派遣契約の場合、雇用見込みがわからないと、1年に達することが確実になる時点でしか加入できませんでした。3ヵ月契約の場合、9ヵ月経過して10ヵ月目にようやく加入できたのが、4ヵ月目に加入できる。その効果はあるということですか。

A:と言うより、1年見込みを理由に加入させないという言い訳が通じなくなるのではと思っています。従来、1年とか6ヵ月単位だった契約期間が、どんどん細切れになって、1ヵ月単位まである現状です。そのため、雇用保険に加入できないまま切られている人がかなりいます。これが1年が6ヵ月に短縮されて、社内の勤務実績に照らして加入を指導できることが多くなると思います。

司:それでも、契約期間が短くて加入できないという方はありますか。

:登録型で、仕事が減っているので2ヵ月といった短期でも働くしかないといった話は窓口で聞きます。

 受給資格で言えば、被保険者期間6ヵ月で受給できると言われていますが、特定理由離職者の範囲が狭くて、本当の意味で6ヵ月とはほど遠い実態です。いすれにしても、今回の法改正を検証するには、まだ日が浅いので、これから色んな事例が出てくるのだと思います。3月末離職の方で資格決定に来られるのはまだ少ない状況です。

司:最後に、網目が広がりすぎた雇用保険制度を、どうすれば真のセーフティネットにできるかをお伺いします。

B:とにかく給付日数と日額を引き上げることです。それと、特定受給資格者といった極端な差をつけることはあらためるべきです。幅広く多くの方を救える制度にすべきだと思います。

司:適用の関係では、さらに要件を緩和して、より多くの方々を制度に取り込むべきとお考えでしょうか。

A:なかなか単純ではなくて、あくまで扶養の範囲での就労を希望されている方もいますので、単に広げればよいというものでもないと思います。

C:家計補助的な働き方を希望する方は、昔と変わっていませんからね。

A:無理矢理制度に取り込んでも、扶養の関係で就労日数の調整をしていて、いざ離職して安定所に来ても、資格がないといったことが考えられます。

司:派遣村などの相談活動に参加していると、相談を受ける側の相談員さんから、雇用保険が複雑すぎてわかりにくいというお話をよく聞きます。

A:それはその通りだと思います。以前はシンプルな説明で済んでいたものが、給付制限が3ヵ月になった時点で、「首を吊れと言うのか」になりました。今は特定受給資格者になるかならないかで、同じように働いていた人に大きな差が生じます。こちらも説明のしようがない状態です。

司:そうすると、目指す方向は、できるだけ以前の制度に戻せ、ということになってきますね。

C:給付制限が3ヵ月になる前、59年改正の前に戻すべきと思います。

:受給資格は離職前1年で6ヵ月、給付制限は1ヵ月。特定受給資格者は見直してシンプルにすべきということですね。

B:かけた年数で給付日数が違うというのは納得されますが、やめた理由で給付日数が違うというのはなかなか納得なんかしてもらえません(笑)。求職活動実績も、仕事の探し方は人それぞれなので、もっと幅広く認めるべきです。

司:求人情報誌の束を抱えて、付箋がいっぱい貼ってあっても、「それは探したうちに入らない」って言うのはあんまりですね(笑)。

C:6ヵ月で資格が得られることと、働く意思と能力を確認することは永らく不変であったはずです。それが15年に求職活動実績2回ないとだめだとか、17年に2年で12ヵ月と、雇用保険財政が厳しくなるたびに見直されてきた背景があると思います。

B:古い制度を知っているベテランは、みんな以前の制度に戻してほしいといっています。

司:この間の見直しが制度をわかりにくくして、セーフティネットから遠ざかっていったことが明らかになったと思います。今回の法改正の検証についても、ぜひ機会を作ってお話をお聞きしたいと思います。本日はご協力ありがとうございました。

以 上

 

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