雇用対策・雇用法制 −労働者派遣、職業紹介、若年者・中高年雇用対策など

2005年 2月
いま、なぜ公的職業紹介か
- 職業紹介事業のあり方を考えるプロジェクト

はじめに

昨年(2003年)の平均完全失業率は5.3%、平均完全失業者数は350万人で、過去最高を記録した一昨年に次ぐ高水準となった。
今年に入っても1〜2月は5%台で推移したが、3月に前月比0.3ポイント下がって4.7%となり、内閣府の月例経済報告(04年5月)では、「雇用情勢は、厳しさが残るものの、改善している」との見方が示された。
しかし、15〜24歳の完全失業率は11.8%と高水準であり、新卒者(3月末調査)の就職率は、大卒93.1%、高卒89.0%、中卒61.9%にとどまっている。また、公共職業安定所が受理する求人は漸増傾向にあるが、実に全体の3分の1が「請負」(28.1%)と「派遣」(5.8%)となっており(厚生労働省調査)、不安定・低賃金の雇用形態が急激に広がっていることを示している。
こうした中で、「雇用の安定」を行政目的とする公共職業安定機関の果たす役割がいよいよ重要なものになっているが、一方で、国が行う職業紹介事業の民間開放を求める動きも急速に強まっている。
内閣府の総合規制改革会議(本年3月で設置期間終了)が昨年12月にまとめた「第3次(最終)答申」では、今後の課題として「ハローワークに関する改革」があげられ、「その基本的な機能とサービスの質を維持した上で、民間委託の更なる拡大に加え、公設民営化などの導入、独立行政法人化、地方公共団体への業務移管など、その組織・業務の抜本的な見直しについて、検討を進め、結論を得べきである」とされた。
この答申を受けて、政府は3月19日、「規制改革・民間開放推進3か年計画」を閣議決定したが、その中には「職業紹介事業の地方公共団体・民間事業者への開放促進」「市場化テストの導入」「民間委託に関する数値目標の設定」など、見過ごすことのできない重大な内容が盛り込まれている。
政府は、総合規制改革会議の後継組織として、「規制改革・民間開放推進本部」(全閣僚で構成)と「規制改革・民間開放推進会議」(民間委員で構成)を設置し、「推進本部」が規制改革・民間開放推進の決定・実施の役割を担い、「推進会議」は諮問に対する答申を行うとともに、改革・開放を推進する「中核的な機関」(小泉首相)とした。
また、この「推進会議」の議長には、総合規制改革会議に引き続き宮内氏(オリックス会長)が就任し、議長、議長代理、主査(2人)の合わせて4人が推進本部の会議に出席することになっている。
本年3月から、地方公共団体の無料職業紹介事業が限定つきながら解禁され、4月からは職業紹介を含む長期失業者就職支援が一部民間事業者に委託されたことなどもあって、国の職業紹介事業の地方公共団体、民間への流れが一挙に強まろうとしている。
しかし、国の職業紹介事業の地方公共団体、民間への開放は、職業紹介、雇用対策、雇用保険の業務が三位一体で、かつ労働基準行政・雇用均等行政との緊密な連携をはかりながら、全国的・体系的に国民の勤労権、職業選択の自由などの権利保障の機能を果たしてきた公共職業安定機関の役割を弱体化させ、国の責任を後退させる危険性をもっている。
本報告では、国の行う職業紹介事業をめぐる民間開放等の問題がすべての働く人たちの勤労権、生存権にかかわる問題であるとの立場から、その背景とねらい、および労働者・国民に及ぼす重大な影響(T)、職業紹介事業の民営化や独立行政法人化の問題点(U)、民間委託と民間活用の現状と問題点(V)、職業紹介事業における国と地方の関係(W)、雇用保険事業の民間開放の問題点(補論)を明らかにした。

1) なぜ、「職業紹介事業の民間開放」なのか

1 その背景を考える

(1) 規制緩和と雇用の弾力化の進行

1980年代後半から企業における雇用の弾力化がすすみはじめるが、90年代の規制緩和がこれを加速させ、政府の雇用対策がそれに追随していくという、この間の経緯をまず振り返っておきたい。
雇用対策法にもとづく政府の雇用対策基本計画は、第1次計画(1967〜1971年)の「完全雇用への地固め」にはじまって、第5次計画(1983〜1990年)までの間は「完全雇用の達成」が主要課題としてすえられていた。しかし、第6次計画(1988〜1992年)では「完全雇用の達成」が主要課題から消え、「構造調整期において雇用の安定を確保(すること)」が前面に出る。
その背景としては、円高に伴う産業の海外移転、部品等の海外依存などがすすみ、企業の雇用過剰感が強まり、残業規制、配転・出向、一時帰休などといった「従来型」の雇用調整にとどまらず、終身雇用制など日本的雇用慣行の「限界」が叫ばれはじめたことがあげられる。
90年にバブル経済が崩壊してから、日本経済はかつて経験したことのない長期の不況局面に突入した。日本で不況が長期化・深刻化する一方、欧米主要国の産業が活性化し、アメリカ、イギリスで景気回復が顕著になり、アジア諸国の経済発展が急速に進行しつつある中で、国際競争力の低下に危機感を抱いた財界は、産業構造の転換と高コスト構造の是正による国際競争力の強化にむかって突き進んだ。その重要な柱とされたのが、公的規制の緩和であり、雇用の弾力化、労働力の流動化であった。
93年12月に、細川内閣の私的諮問機関である「経済改革研究会」(平岩研究会)が日本経済の構造改革の万能薬として規制緩和の推進を打ち出し、「参入しやすく、転職しやすい労働市場」の形成を報告した。その後、経営者団体からの「労働分野の規制緩和」要求が強まり、95年3月の「規制緩和推進5ヵ年計画」の閣議決定に至る。これに符節を合わせるように、日経連(当時)は同年5月に「新時代の『日本的経営』」を発表し、企業に雇用される従業員を、@長期蓄積能力活用型、A高度専門能力活用型、B雇用柔軟型の三つの雇用形態に振り分けるなど、多様な雇用・就業形態、働き方を組み合わせる「雇用ポートフォリオ」の考え方を示し、雇用の弾力化を推進していく。
同時に、相次ぐ法「改正」等によって、労働者派遣事業、有料職業紹介事業、女子保護規定、裁量労働制、有期労働契約などに関する規制緩和が次々と具体化されていった。

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(2) 高失業の長期化と「完全雇用」の変質

95年から96年にかけて不況局面は好転するかにみえたが、橋本内閣が財政再建を理由に、97年から消費税増税、医療制度改悪など9兆円に及ぶ国民負担増を強行したことによって、景気はより深刻な停滞局面に入った。
企業においては、コスト削減のためのリストラ・人員削減、終身雇用制・年功賃金の見直し、能力・成果主義賃金の導入、正社員の非正規雇用化がすすめられていった。こうして日本は、かつてない高失業の長期化という事態を迎える。
こうした中で90年代後半以降、政府の雇用対策の柱として、「ミスマッチ解消」のための労働力需給調整機能の強化が焦眉の課題となる。一方、グローバル化のもとで雇用・労働分野の規制緩和が各国に広がる中、ILOは1997年に「民間職業仲介事業所に関する条約」(第181号)を採択し、「民間職業仲介事業所」(民間職業紹介事業、労働者派遣事業、情報提供等のサービスの事業)の運営を認めると同時に、「そのサービスを利用する労働者を保護する」ことを規定した。日本では、財界をはじめ、政府も、第181号条約の採択をもって有料職業紹介事業や労働者派遣事業の自由化が国際的な趨勢となった、と一面的に評価し、その後の一連の法「改正」の根拠とした。しかし、この条約の主側面は、民間職業紹介事業や労働者派遣事業が拡大している下で、それによる弊害から労働者を保護することにあったことは明らかである。
職業安定局長の私的研究会として設置された雇用法制研究会が98年10月にまとめた報告書「今後の労働市場法制の在り方について」では、@職業紹介事業への民間企業の参入の原則自由化による労働力需給のミスマッチの解消、A「事前規制型システム」から「事後規制型システム」への移行と、それに見合ったルールの設定、B公共職業安定機関は、民間職業紹介事業とは競争的な協力関係を構築する必要がある、などを指摘している。
政府は、この研究会報告書などをもとに、99年に職業安定法および労働者派遣法の「改正」を行った。これにより、民間職業紹介事業の対象職業は、港湾運送・建設業務等を除いて原則自由化され、事業参入の規制も緩和された。また、労働者派遣事業の対象業務も港湾運送・建設業務等を除いて原則自由化(「物の製造の業務」の解禁は見送り。2003年の労働者派遣法「改正」で、「物の製造の業務」に対する制限を撤廃)された。そして、これで国内環境は整ったとして、その直後にILO第181号条約の批准が国会で議決されることになる。
また、政府が1999年8月に閣議決定した第9次雇用対策基本計画(2010年頃までの10年程度)では、「労働市場の構造変化」への対応が強調され、「失業した場合には再就職先が早期に見つかるようにすることが、最も重要」とされる。そして、「失業なき労働移動への支援」として、「労働力需給のミスマッチの解消」「労働市場全体の需給調整機能の強化」が強調される。
2001年4月の雇用対策法の一部「改正」では、雇用対策法の第3条に新たに「基本理念」として「労働者は、その職業生活の設計が適切に行われ、並びにその設計に即した能力の開発及び向上並びに転職に当たっての円滑な再就職の促進その他の措置が効果的に実施されることにより、職業生活の全期間を通じて、その職業の安定が図られるように配慮されるものとする」が加えられた。同法第1条が規定する「完全雇用の達成」は、量的な問題にとどまらず、「雇用の安定と質的改善」(第3次雇用対策基本計画)も一体のものとして重視されてきた。しかし、こうした考え方を転換させ、間接雇用、有期雇用も前提とした上で、それらをつなぎ合わせた雇用をも想定したものに大きく変化した。この「改正」は、労働力の流動化を前提とした雇用対策への転換を象徴的に示すものとなった。

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(3) 行政改革と「民間開放」の進行

「国の行政機関の再編及び統合の推進に関する基本的かつ総合的な事項を調査審議する」ことを目的に設置された行政改革会議は、2年間にわたる審議をへて1997年12月3日に最終答申をまとめ、政府はこの最終答申にもとづき、中央省庁再編(2001年1月)をはじめとする行政改革を本格的にスタートさせた。
最終答申は、「肥大化し硬直化した政府組織」を「重要な国家機能を有効に遂行するにふさわしく、簡素・効率的・透明な政府を実現する」とし、併せて「組織・活動原理の抜本的な見直し」と「徹底的な規制の撤廃と緩和を断行し、民間に委ねるべきは委ね」ることを提言するとともに、行政機能の減量(アウトソーシング)、効率化等の具体策として、独立行政法人の創設、民営化、民間委託等の推進を提示している。
また、同年12月18日には、規制緩和の実施状況の監視などを任務としてきた行政改革委員会が最終意見をとりまとめた。行政改革委員会は、その前年に「行政関与の在り方に関する基準」をまとめているが、この基準にもとづき、官民の役割分担を徹底的に洗い直すなど行政の責任領域の見直しを行うことを求めていた。そして、最終意見では、「規制を含む行政関与の範囲を大胆に縮小し、公正有効競争下において市場原理が働くような経済・社会システムの形成をめざす」とし、「民間でできるものは民間に委ねる」などの方向性を提言した。
行政改革委員会の議論で注目しなければならないのは、規制のあり方を論ずると同時に、関連制度全体の包括的な検討が必要との認識が示されていることである。つまり、規制緩和と政策体系の基本部分の転換は一体のものであるということである。前記で指摘した雇用対策の基本理念の変更は、規制改革推進の当然の帰結であったといえる。今日の「民間開放」の動きは、「行政改革」と一体となって急速にその動きを強めたのである。

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(4) 小泉内閣の「構造改革」と「官から民へ」の動きの強まり

2001年4月に発足した小泉内閣は、橋本内閣の「構造改革」を受け継ぎ、小渕、森両内閣時代に減速した「構造改革」のテンポを一挙に速めた。6月に発表された「今後の経済財政運営及び経済社会の構造改革に関する基本方針」(いわゆる「骨太の方針」)によると、経済の構造改革とは、「技術革新と『創造的破壊』を通して、効率性の低い部門から効率性や社会的ニーズの高い成長部門へヒトと資本を移動する」ことであり、「資源の移動は、『市場』と『競争』を通じて進んでいく」、つまり、人と資本を停滞分野から成長分野に流れるしくみにすれば景気はよくなり、経済が再び成長するようになるということが強調された。小泉内閣の「構造改革」でまず着手され、他に率先して具体化されたのが金融市場と労働市場の自由化のための施策であったことは、この文脈からすれば当然のことであったと言える。
そのための障害となり、施策の促進を抑制するものをとり除き、成長分野を対象に企業が自由に競争できる条件を整えていくことが政策の最重点課題となった。そこでは、不良債権の処理も規制緩和も不可欠の課題となる。小泉内閣の「構造改革」は、企業の競争力強化・活性化をめざして、企業のリストラ・人減らし、税負担の軽減、雇用の弾力化などを支援する政策の実施につきすすむ。
その結果、失業問題はますます深刻な事態に陥ることとなる。そこで、労働力の産業間移動を円滑に行うために、公共職業安定機関と民間の労働力需給調整機関との「連携、協力」が政府の施策として重要な課題となっていった。
政府はこの年、7月に失業率が5.0%となり、さらに不良債権処理の進展に伴い、雇用情勢がさらに悪化する可能性が否定できないとして、9月に「総合雇用対策」を策定した。
この中で重点とされたのは、@医療・福祉、環境などの分野での新しい市場の創出・拡大、A「雇用のミスマッチ解消」のため、官民の連携による職業紹介、能力開発の推進、B各種助成金の積極的活用など、失業なき労働移動のためのとりくみ強化などであった。
また、「骨太の方針」で「今後2〜3年を日本経済の集中調整期間」としたことを受けて、2002年7月に雇用政策研究会の報告「雇用政策の課題と当面の展開〜『多様選択可能型社会』の実現に向け個人の新たな挑戦を支援する政策展開〜」がまとめられ、第9次雇用対策基本計画の実質的な見直しが行われた。
これら一連の雇用対策の特徴は、労働政策の経済・産業政策への従属性を一段と強め、雇用・労働政策への市場原理の導入をさらに色濃く打ち出した点にあると言える。
しかし、この間、停滞分野から成長分野への人、モノ、金の移動は、財界や政府が期待したようには必ずしも順調にすすんできたわけではない。とりわけ、成長分野とされる医療、福祉・介護、教育、人材関連などの分野では、企業の参入規制が問題とされた。こうしたことから、総合規制改革会議は、これらの分野を「官製市場」と位置づけ、株式会社の参入をはじめとする民間への市場開放を解禁・拡大する方向を打ち出した。
03年7月に総合規制改革会議がまとめた「アクションプラン・12」には、株式会社による医療機関・特別養護老人ホーム経営の解禁、労働者派遣業務の医療分野への対象拡大、株式会社・NPO等による学校経営の解禁、株式会社等による農地取得・農業経営の解禁などが盛り込まれ、さらに10月には、労災保険の民営化など5項目が追加された。
当初の「骨太の方針」では、「民間でできることはできるだけ民間に委ねる」との原則が掲げられていたが、「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2003」(「骨太の方針・第3弾」)では「民間にできることは民間に」と、より踏み込んだ姿勢をにじませるものになった。また、総合規制改革会議では、「民間でできるものは官は行わない」ことを原則にすべきだとの主張まで行われるようになった。
以上みてきたように、今日の民間開放の動きは、企業の雇用・人事管理戦略、政府の「構造改革」、人材ビジネス業界のビジネス戦略等が相互に関連してきた結果として生じているものであり、そこには次に触れるような重大なねらいをみることができる。

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2 職業紹介事業の民間開放のねらい

その一つは、「小さな政府」づくりであり、国の「介入・規制」外しである。
自民党の歴代政権がめざしてきた「小さな政府」は、行政機構の再編・縮小、公務員の削減によって、国民にとって必要な行政サービス部門を切り捨て、公共サービスを商品化する一方で、国の役割を外交・安全保障・治安などの分野に特化させることが基本的な理念とされてきた。これまで、労働行政では約3,000名もの職員が削減されてきたが、04年度の定員査定においても100名を超える定員削減が押しつけられる一方で、治安関係部門には1,000名近い増員が行われていることは、そのことを端的に示している。
公共職業安定所の独立行政法人化にしても公設民営化にしても、後述するとおり、その基本的な性格・位置づけは、民営化にむけた過渡的形態とみざるを得ない。そして、民間委託は、さらなる定員削減の口実とされ、それによって行政機能の後退が起これば、民間委託の拡大要求をさらにエスカレートさせるという構図を生み出すことになる。
また、国民にとって必要な部門には、労働行政のように、企業活動に対して規制力をもつ分野が含まれるが、「小さな政府」は、国民サービス部門の縮小(行政機構のスリム化等)と併せて、労働者の権利保障のための企業に対する国の介入・規制を排除し、自由な企業活動を保障するというねらいが込められていることもみておく必要がある。
この間、大企業を中心にコスト削減のための雇用の弾力化がすすめられてきたが、「必要な労働力を、必要な時に、必要な期間」調達できる労働市場(需給調整)システムの構築が不可欠のものとされてきた。そして、そのための法整備(有料職業紹介事業・労働者派遣事業の自由化、有期労働契約の規制緩和等)が着々と実行に移され、雇用の弾力化、労働力の流動化を前提に、主として企業サイドの労働力調達・排出ニーズに対応できる需給調整機能として、民間の人材ビジネスの台頭を促す環境がつくられた。それは一方で、労働者・国民の権利保障を行政目的とする公共職業安定機関の役割を、極力小さなものに閉じこめてしまう方向につながることを意味するのである。

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二つは、国民の権利保障のためのセーフティーネットを縮小・再編し、国民に自己責任と自己負担を求めることである。
民間開放を求める側からは、「混合診療」解禁の主張にみられるように、社会保障の分野に市場原理を持ち込み、公的な社会保険と「自助」(私保険・個人負担)に二層化(あるいは多層化)することを求める動きが強まっている。つまり、公的な負担と責任にもとづくセーフティーネットを縮小・再編し、民間ビジネス業者が参入できる余地を拡大し、「費用負担」と「サービス提供」の両面で、社会保障分野の官と民の二層化(あるいは多層化)をはかるというものである。これは、労災保険に自賠責と同様のスキームを導入する動きと軌を一にしている。
公的職業紹介の分野においても、同様のことが起こり始めているとみなければならない。これは、上記の「小さな政府」をめざす動きと一体のものといえる。
公共職業安定機関の組織・機能が縮小され、一方で民間事業者の活動範囲が広がることになれば、これまで貫かれてきた「無料」の原則が形骸化し、職業紹介事業の分野においても市場原理が強く働くことになる。求職者間の競争が強まり、失業中の苦しい生活の中から再就職のための自己負担を強いられることになる。人材ビジネス業界は、規制緩和要求の大きな柱に求職者からの職業紹介手数料規制の緩和・廃止をあげているが、民間事業ベースに乗せるためには、求職者の自己負担は不可欠の課題となっているのである。

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三つは、人材ビジネスにできるだけ大きなビジネスチャンスを提供することである。
小泉内閣は、「官から民へ」の考え方のもとに、民間の活性化を重点としている。そして、経済・産業政策においては、成長が期待できる分野の一つに人材ビジネスがあげられている。
近年、有料職業紹介事業、労働者派遣事業の自由化などの規制緩和がすすんだこともあって、民間事業者の市場参入が急速に広がった。しかし、それは同時に過当競争という事態をも生み、安定的な経営が成り立っている事業者はむしろ少ないのが実態である。
ここに予算を投入し、民間の事業を支援し、成長分野としての基盤を本格的に整備することが、経済産業省主導の下に国の施策として位置づけられている。マスコミが職業紹介事業の民間委託化を指して、「1兆円特需」「あらたな公共事業」と指摘するのは、正鵠を射ているといえる。
大企業を中心とした企業が、余剰資本の新たな投下先として、医療、福祉、介護、環境などの分野と並んで人材ビジネスを選び、政府がそれを支援しているということである。自らは新たな価値を創造せず、人(求職者)と企業(求人者)の間に介在し、そこから大きな利益を得ようとする人材ビジネスの伸張は、資本の寄生性の今日的な現れと言えるであろう。 
また、人材ビジネスは職業紹介にとどまらず、能力開発も重要な分野とされている。労働力の流動化をすすめるためには、企業にとってエンプロイヤビリティー(雇用される能力)をそなえた労働者が必要となるが、労働者に自費(一部、国の助成を加えて)で能力開発のためのセミナーや訓練を受けるように誘導し、それをビジネスチャンス拡大の機会にしようとしている。
能力開発の「自前化」は、雇用する企業にとっても人材ビジネスにとっても好都合であるが、労働者からすれば、「自己責任」の名で能力開発競争に駆り立てられることになる。

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3 労働者・国民に及ぼす重大な影響

公共職業安定機関の業務は、これまでもさまざまな形で外郭団体などへの業務の移管・委託がすすめられてきた。しかし、これは政府のきびしい定員管理政策のもとで、新たな行政需要に必要な定員が確保されないことが主要な理由とされ、基幹業務である職業相談・職業紹介業務はその対象とされてこなかった。それは、公共職業安定機関の行う職業紹介業務が国民の勤労権などの権利保障という高い公共性を有するからである。
しかし、2003年度には「不良債権処理に伴う」との条件付きながら、管理職・専門職等の職業紹介が民間事業者に業務委託され、2004年度からは離職後1年以上の長期失業者等の就職支援を民間事業者に委託する事業が開始されることとなった。これらの業務委託は、官の業務が民間でも十分やれることを証明するマーケットテスティングの意味をもち、職業選択の自由、適格紹介などの原則をもとに運営される公的職業紹介事業を縮小・後退させる重大な問題を内包していると言える。
公共職業安定機関が担う職業紹介等の業務の民間委託のさらなる拡大、民営化、あるいは独立行政法人化ということになれば、後でも記述するように、労働者・国民に及ぼすマイナスの影響は計り知れない。
公的機関が行う職業紹介は、勤労の権利や職業選択の自由を保障する立場から、適格紹介などの原則をもとに、雇用の安定をめざすこと、失業を減らすことを目的とする。しかし、民間事業者にとっては、雇用が流動化すればするほどビジネスチャンスが拡大し、「お客様」に事欠かないことになる。逆に言えば、雇用の安定や失業を減らすためにがんばればがんばるほど、自らの活動の場(利潤追求の機会)を狭めてしまうことになる。流動化することによって人材ビジネス会社に利潤をもたらす人材が、安定した雇用についてもらっては困るわけである。労働者派遣や有期雇用こそが、うまみのある事業対象なのである。したがって、民間事業者にとっては、雇用の安定をはかり、失業を減らすというインセンティブは働きにくいということになる。
人材ビジネス関連分野の成長を促すためには、一定水準の失業率と労働力の流動化が前提とならなければならない。それは、個々の労働者にとって切実な願いである「安定した職業に就く」ことと、必ずしも一致しないものなのである。

2) 職業紹介事業の民営化、独立行政法人化をめぐる問題点

1 「ハローワークに関する改革」のねらい

「ハローワークに関する改革」を掲げた総合規制改革会議「第3次答申」は、その理由として、@公共職業安定所(ハローワーク)に対する国の一定の関与と、その職員に対する一定の身分保障があれば、公設民営などの民間開放等を行ってもILO第88号条約には抵触しないと考えられること、A国立学校、国立病院、職業訓練事業等が独立行政法人化しつつある中で、これらに次いで「巨大な組織」である安定所について組織的見直しが一切行われていないとすれば、合理性に乏しいこと、をあげている。
国際的にみれば、職業紹介事業を国の機関が直接行っている国のほか、政労使の三者(あるいは労使の二者)構成による運営機関や地方自治体が実施している国もある。したがって、ILO第88号条約(「職業安定組織の構成に関する条約」、1948年採択)をもって直ちに、職業紹介事業の独立行政法人化や地方公共団体への業務移管を否定することにはならない。この点に限って言えば、総合規制改革会議の主張にも全く根拠がないわけではない。
しかし、議論はあくまでも日本の現実から出発しなければならない。イギリスの公的職業紹介事業は、日本が独立行政法人化にあたってモデルとしたと言われる「エージェンシー」で行っているとか、オーストラリアでは公共職業安定所が完全民営化されたことなどを理由に、日本でも公共職業安定所を独立行政法人化あるいは民営化すべきだなどとする主張は、きわめて短絡的な発想と言わざるを得ない。少なくとも、それぞれの国における職業紹介事業の経緯や、行政体制の有り様を十二分に考慮に入れことが必要であり、自らに都合のいいケースを寄せ集め、それがさも世界の典型例であるかのように描くことは、少なくとも政府の公的な機関としては厳に慎むべきである。
さて、職業紹介事業の完全民営化となれば明らかに第88号条約に抵触するし、独立行政法人化や地方公共団体への業務移管も、それが民営化へのワンステップであるとしたら、やはり同様の問題が生じる。「第3次答申」では用意周到にも、公共職業安定所に対する「国の一定の関与と、その職員に対する一定の身分保障があれば」公設民営化等も可能だと主張しているが、それは、総合規制改革会議が最終的にめざす方向がILO第88号条約の規定に反することを十分に承知した上で、これに対する関係省庁や国民の批判・抵抗をかわそうというねらいがあるものと思われる。
公共職業安定所の独立行政法人化、民営化については、人材ビジネス業界からも主張されている。全国求人情報誌協会、日本人材紹介事業協会、日本人材派遣協会で作る「民間の活力と創意を活かした労働市場サービスに関する研究会」が2002年3月に発表した「労働市場サービス産業の活性化のための提言」はその代表的なものである。この提言では、公共職業安定所の位置づけを大幅に見直すことが必要だとし、「監視主体と事業主体の分離」「事業主体側の公平性確保」のための方法として、監視主体を国の機関とした上で、@これを公共職業安定所から分離独立させ新たな機関を設置する(組織改編)、A公共職業安定所を独立行政法人化もしくは民営化する、という方向を提示している。
これは、「プレーヤーとジャッジの分離論」に立ったものであり、公共職業安定所はあくまでも民間事業者と同列の「プレーヤー」に徹すべきで、民間事業者を指導監督する機能は持つべきではない、という主張である。この主張は、人材ビジネス業界の代弁機関というべき性格を持った総合規制改革会議でも終始一貫してくり返され、3次にわたる答申にはその主張が反映されてきた。「第3次答申」にある公共職業安定所の組織改編の主張や、民間労働力需給調整機関に対する指導監督業務の都道府県労働局への集中(2004年4月より)は、その代表的なものである。
職業相談・職業紹介を中心的な業務とするという点で言えば、公共職業安定所は「プレーヤー」という側面を持っていることは否定しえない。しかし、そのことをもって、公共職業安定所と民間事業者の行う職業紹介には基本的な違いはない、ということにはならない。公共職業安定所と民間事業者との最大の違いは、後者が利潤追求を最大の目的とするのに対して、前者は国民の基本的人権の保障という観点からすべての国民を対象として無料の職業紹介を行う、という点にある。有料職業紹介事業が原則自由化された後も、民営職業紹介事業者を利用する求職者の比率はそれほど増えず、公共職業安定所を利用する求職者が増えていることを見ても、無料職業紹介事業に対する国民の期待は高く、国にはそれに十分にこたえる責任があると言わなければならない。
一方、「民営職業紹介事業の利用率が低いのは、労働市場にかかわる規制改革が不十分だからだ」という主張もあり、これが雇用・労働分野のいっそうの規制緩和を求める論拠となっている。だが、日本における有料職業紹介事業や労働者派遣事業の自由化は、すでに諸外国に劣らないほどに進行しており、求職者からの紹介手数料徴収規制の撤廃などという、ILO第181号条約に明らかに抵触する主張まで行われている。他方、労働者保護に関する規制は緩和される一方であり、労働者保護に関する法制度はあっても、それを実質的に担保するための行政体制がきわめて不十分なために有効に機能し得ない、という問題もある。
こうしてみると、「ハローワークに関する改革」は、職業紹介サービスが持つ公共性や労働者保護という点から重大な問題を持っていると言わざるを得ない。

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2 職業紹介における公共性の意義

次に、職業紹介における公共性とは何か、についてふれることとしたい。
ILO第88号条約は第1条の1で、「この条約の適用を受ける国際労働機関の加盟国は、無料の公共職業安定組織を維持し、又はその維持を確保しなければならない」、第2条で「職業安定組織は、国の機関の指揮監督の下にある職業安定機関の全国的体系で構成される」、さらに第9条で「職業安定組織の職員は、分限及び勤務条件について、政府の更迭及び不当な外部からの影響と無関係であり、且つ、当該組織上の必要による場合を除く外、身分の安定を保障される公務員でなければならない」と規定している。日本は1953年にこの条約を批准している。
さらに、日本国憲法、世界人権宣言やILO「雇用政策に関する条約」(第122号条約)などは勤労権保障を明記し、国民に対する雇用保障責任は第一に国にあることを明らかにしている。
これを受けて、職業安定法では「職業紹介の一般原則」として、@自由の原則(第2条、第5条の5、第5条の6)、A適格の原則(第5条の7)、B公益の原則(第5条)、C均等待遇の原則(第3条)、D中立の原則(第20条)、E労働条件等明示の原則(第5条の3)をあげ、国の職業紹介機関である公共職業安定所はこれらの原則にもとづいて職業紹介サービスを行わなければならないと規定している。もちろん、大前提は、この職業紹介サービスは求職者・求人者いずれに対しても無料で行う、ということである。所得あるいは企業収益の高い者(企業)が有利に、低い者(企業)が不利に扱われることがあれば、これらの原則は貫徹し得ないからである。誰もが無料で利用のできる公的機関が、地域的に偏在することなく全国的に配置されていること、これは雇用保障に関する国の最低限の責任である。
また、国の直接的な責任の下で提供される公的職業紹介は、雇用対策、雇用保険と一体不可分のものとして行われており、これは効果的かつ効率的な職業紹介サービスを行う上で重要な点である。求職と求人とのマッチングを図るという職業紹介の性格からして、良質の求人の確保、求職者一人ひとりに見合った職業訓練の保障はきわめて重要なポイントである。これを担うのが政府の雇用対策であり、これとの一体的な運営は公的職業紹介の重要な役割である。
職業紹介と雇用保険との一体的な運用も重要である。失業給付は、失業者が自らの労働力の売り急ぎを強いられることなく、適職選択権を行使するために不可欠な制度である。特に、現在のような高失業率の下では、失業給付制度の充実の必要性はかつてなく増している。いわゆる労働力の「窮迫販売」を防ぐためには、失業給付制度と職業紹介の充実と、密接な連携が不可欠である。
職業紹介と、労働基準行政、雇用均等行政との連携強化も今日の重要な課題である。派遣求人、請負求人が急増する下で、劣悪な雇用条件、労働条件の求人が増えており、労働者に対する人権侵害事案も目立っている。2003年の第91回ILO総会の議題となった、個人請負などの「あいまいな(偽装された)雇用関係」という問題も顕在化している。労働者に対する犯罪行為である「サービス残業(賃金不払残業)」は大きな社会問題となっている。さらには、雇用形態による格差・差別の拡大、雇用における男女差別の存在や事業所におけるセクシュアル・ハラスメントなど、女性労働者が安心して働くことを妨げる問題も依然として多い。
いま必要なことは、都道府県労働局の下で職業安定行政が労働基準行政、雇用均等行政との密接な連携をはかり、労働者の権利確保のために最大限の力を発揮することである。それこそが、公的職業紹介に求められる公共性である。

 

3 職業紹介事業における「効率性」

規制緩和論者は、民間の職業紹介事業者は市場における競争原理にもとづいて多様なサービスを効率よく提供することができるのに対し、公的機関が行う職業紹介は競争環境にないために非効率で、かつ国民の多様なニーズにこたえられていない、とも主張する。
「行政が行うサービスは非効率」だという主張は、職業紹介事業に限らず、公的サービスに対する批判に共通した今日的特徴である。しかし、効率的か否かは、サービスが提供すべき内容に照らして検討されるべきであり、それを抜きにして、民間が行うサービスは効率的で、公的機関が提供するサービスは非効率的だという主張はあまりにも一方的で、その根拠もきわめて客観性に乏しいものである。特に職業紹介事業の場合は、単に手持ちの求人を登録求職者にあてがってやればいいというようなものではなく、求職者が希望する水準・内容の雇用をどうやって確保するかということが根底に据えられなければならない。必要であれば、紹介を一時保留して求人開拓に努めることも必要である。
雇用・賃金のリストラが進行している今日、「労働条件の底割れ」が深刻な問題となっている。家計に責任を負わなければならない求職者でも、月収20万円前後の求人に殺到するという状況が一般化している。派遣労働者は2002年度には213万人(前年度比22%増)にのぼっているが、その平均年収は250万円にも達しておらず、派遣事業者間の競争激化によって派遣料金は年々下がっている。パートタイム労働者の不満の第一は、仕事の内容や責任に比べて賃金が低すぎる、というものである。こうした労働者を取り巻く現状から見て、目の前にある求人にとりあえず求職者を就職させるのが職業紹介事業にとっての本当の効率性なのか、あるいは手間と時間はかかったとしても、求職者が安心して働き、生活することのできる仕事を紹介することが効率的なのか、を真剣に考える必要がある。
競争原理にもとづく民間の職業紹介は効率的で、そうでない公的職業紹介は非効率だという議論がまかり通っている。「1人紹介していくら」という民間の職業紹介の場合は、より多く紹介させようというインセンティブが働くことは事実であろう。だからといって、そのことをもって公的職業紹介の非効率を証明することにはならない。もちろん、公的職業紹介においても紹介件数、とりわけ就職件数が増えることは一般論として望ましい。しかし、それ以上に重要なのは、求職者、求人者、そして現に働いている労働者にとって何が最も必要なのかを見極めてマッチングを行うことである。
例えば、企業からすれば、賃金の高い労働者を辞めさせ、より低い賃金で新規採用する方がコスト面ではいいということになるであろう。これに対して、「たとえ給料は高くても、労働者を辞めさせないことが、良い製品を作ったり、良いサービスを提供したりするためには大切だ。長い目で見れば、その方が会社のためになる」とアドバイスすることも公共職業安定所の大切な仕事である。このような場合、就職件数は増えないが、雇用の安定、企業活動の発展には寄与したというべきである。こうした点は、労働力の流動化がビジネスチャンスになる民間事業者と公的職業紹介との大きな違いであり、「効率性」を議論する場合にはこうしたことも十分に考えなければならない。
付け加えれば、行政の「効率性」を論ずる場合には、その体制についても十分に吟味すべきである。OECDの「公共職業サービスデータベース」によれば、日本の公共職業サービス職員1人当たりの被雇用者数は韓国に次いで多い(1994年現在)。この時、イギリスは日本の約6分の1である。つまり、「行革先進国」と言われるイギリスの職安職員数は日本の約6倍ということになり、オーストラリアも約5倍であった。日本ではこの後、職安職員数は減り続け、一方、失業者数は大幅に増えていることから、職員1人当たりの業務量の格差はさらに開いていると思われる。
「小さな政府」論では、国民サービス分野の公務員数は少なければ少ないほどいい、ということになるのであろうが、公務員の削減が行政サービスの非効率化・低下を招いている現実を直視すべきである。

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4 職業紹介事業の民営化論の問題点

以上では、職業紹介事業においては国の機関である公共職業安定所が中心的責任を果たすべきであること、そのことによってこそ労働者の権利保障も適切にはかれるし、職業紹介における効率性も発揮できることを指摘した。
一方、職業安定法は第5条の2で、「職業安定機関及び職業紹介事業者又は労働者供給事業者は、労働力の適正かつ円滑な調整を図るため、雇用情報の充実、労働力の需要供給の調整に係る技術の向上等に関し、相互に協力するよう努めなければならない」と規定しており、3月1日からは地方公共団体も無料職業紹介事業を行うことが可能となった。このように職業紹介事業は、公共職業安定所のほかに民間の職業紹介事業者、さらに地方公共団体等も行うことができるとされている。
これまでにも、地方分権との関係で労働行政における地方事務官を国家公務員とするか、あるいは地方公務員とするかといった議論や、職業紹介部門の独立行政法人化をねらう動きがあり、その都度、職業紹介事業はどこが中心的に担うのが適切かという検討がいろいろなされてきたが、国民に対する勤労権保障という観点から、公共職業安定所という全国的なネットワークを維持することが適当、という結論を見てきた。
90年代後半から加速化した「規制改革」の中では、労働力流動化の促進、多様な雇用・就業形態(派遣、請負など)の拡大という側面から、公的職業紹介事業の「民営化」あるいは「民間開放の促進」が主張されている。しかし、これらは、職業紹介サービスを民主的・公正的・効率的に提供するという点で重大な問題を含んでいる。
第1は、職業紹介の無料原則が否定されるか、大幅に後退するという点である。総合規制改革会議の「第3次答申」は、求職者からの手数料徴収規制の大幅な緩和あるいは撤廃を主張しているが、これは例外を除いては求職者からの手数料徴収を禁じているILO第181号条約に反するものである。求職者から手数料を徴収できるようになれば、求職者が求人者と対等の立場に立てるようになると主張する論者がいる。しかし、供給過剰になることが多く、売り控えもできない商品である労働力(求職者)は、その買い手(企業)とは対等な関係には立ち得ない。もともと対等の関係になりえないものが、手数料徴収によって対等な関係になるというのは実態を見ない議論に過ぎない。無料職業紹介原則を崩すことは、国の責任放棄であり、セーフティネットの崩壊をもたらすことになる
第2は、すべての国民を対象とした職業紹介サービスの提供ができなくなるということである。民営職業紹介事業者も労働力需給調整機能の一環を担っていると言われるが、それはあくまでも利潤追求の範囲内で行うものである。したがって、民間事業者の場合は、求人、求職ともに事業者が利益があがると判断した部門に特化することは避けられない。これは、公共職業安定所が原則としてすべての求人・求職を受理していることとの決定的な違いである。また、民間事業者の場合、営業を求人・求職の多い地域に限定することも避けられず、大都市中心のサービス提供とならざるを得ない。これも、全国的なネットワークの下で業務を行っている公共職業安定所との大きな違いである。
第3は、職業紹介事業の自由化は民営職業紹介事業者の乱立を招き、その結果、民間事業者間の過当競争が生じ、結局はそのしわ寄せが求職者に転嫁させられることになる。現実に、紹介事業者が企業にアウトソーシングの活用を働きかけるなど、ビジネスチャンスを生み出すために意識的に労働力の流動化を引き起こしているケースも少なくない。この分野での自由化のいっそうの促進は、不必要な労働力の流動化を意識的に引き起こし、有期雇用、派遣労働など不安定就業の増大を招き、労働者の権利を大幅に後退させる恐れがある。
日本における「労働市場改革」が、民営職業紹介事業や労働者派遣事業など人材ビジネスに対する規制のないアメリカを手本としていることは明らかである。
そのアメリカでは、特に90年代後半から派遣、職業紹介、PEO(人材リース業)、アウトプレースメントなどのスタッフィング産業が「急成長」し、それに伴って非正規雇用、短期雇用および日雇いの労働者が急増している。日雇労働専門のLabor Ready社がスタッフィング産業界で第25位の位置を占め、多国籍企業化しているとさえ言われる。企業が直用労働者を突然解雇して翌日には派遣会社に移籍させ、賃金や付加給付を大幅に切り下げるというケースも珍しくはない。会社ごとあるいは部門ごとにPEO会社に移籍して、そこから元の会社に社員をリースバックし、そのことによって福利厚生費用を大幅に削減するというケースもあり、健康保険や労災保険をめぐる詐欺事件や保険会社の倒産という事例も珍しくはない。また、企業が雇用主責任を免れるため、人材ビジネス会社の仲介によって労働者を半強制的に「個人請負業主」化するといった乱暴なことも強行されている。
日本では「フリーター」問題が大きな社会問題となっているが、「フリーター」とよばれる労働者の中には「スポット」などと呼ばれるオンコールワーカー、日雇労働者が急速に増えている。こうした労働者は、社会保険、労働保険の対象とはならず、有給休暇も与えられない。
日本における近年の労働法制改悪は、こうしたアメリカ型の労働市場を日本に再現させるものにほかならない。アメリカでは近年、労働者のたたかいが高まり、人材ビジネスによる弊害から労働者を保護するための州法、連邦法の制定・改正の動きが活発化していると言われる。人材ビジネスに対する規制をさらに緩和させようとする日本の政府や財界などの動きは、こうしたアメリカの直近の動きとも相容れないものである。
第4は、個人情報保護の問題である。先述したようにILO第88号条約第9条は、職業安定組織の職員は「身分の安定を保障される公務員でなければならない」としている。これは、「不当な外部からの影響」を受けないための担保を重要な目的とする規定である。公共職業安定機関には、総合的雇用情報システムをはじめとして膨大な個人情報が蓄積されており、決して、これらが営利やその他の目的に流用されることがあってはならない。職業紹介業務に携わる公務員には、そのためのきびしい倫理が求められ、それに違反した場合にはきびしい罰則が科せられることになる。
職業安定法第5条4は、職業紹介事業等を行う者に対しては官民を問わず、情報の適正な取り扱いを規定している。これに違反した場合、民間事業者の場合は、職業安定法第51条、第66条により30万円以下の罰金となっている。一方、公共職業安定所等の職員は国家公務員法第100条、第109条12によって、1年以下の懲役または3万円以下の罰金が科せられ、懲役の場合には免職となる。秘密を守る義務に違反した場合の罰則は、国家公務員に対する方がはるかに重い。公共職業安定所の民営化あるいは公設民営化によって、個人情報等を民間事業者に委ねることは、国民の権利擁護という点からも選択すべきではない。

 

5 職業紹介部門の独立行政法人化の問題点

日本では、2001年4月に国の行政・研究機関や特殊法人等の独立行政法人への移行が始まり、今年4月には国立病院、国立大学が独立行政法人に移行した。職業紹介部門は、独立行政法人化の議論が始まった当初からその対象として俎上にあげられ、総合規制改革会議も一貫して職業紹介部門の独立行政法人化を政府に迫ってきた。
こうした動きに対して全労働は、1998年11月に「労働行政、とりわけ職業紹介業務の『独立行政法人』化の問題点について」を発表し、これらをきびしく批判した。ここでの論点は、すでに述べたことと重なるが、公共職業安定所が行う職業紹介業務は、他の労働行政部門と切り離されて行われているのではなく、雇用対策、雇用保険との一体的な運営、労働基準行政や雇用均等行政との密接な連携の中で日々すすめられているのであり、これを無理に断ち切って独立行政法人化することは業務の非効率化を招くとともに、国民の勤労権にも重大な否定的影響をもたらす、ということである。
このことは、今日の時点でもいささかも変わってはいないし、雇用・失業情勢の状況に応じて相次いで雇用対策が講じられているという状況の下では、とりわけ迅速な業務処理が求められており、政策の企画・立案部門と実施部門をあえて切り離すというのは、そうした時代の要請に逆行するものである。
総合規制改革会議「第3次答申」では、公務員としての身分が確保されれば独立行政法人化してもILO第88号条約には反しないとか、国立病院や国立大学が独立行政法人化する中で、公共職業安定所だけが現行の組織のままというのは説明がつかないなどと述べているが、これはすでに述べてきた公的職業紹介の特質についてまったく無理解であることをさらけ出したものであるし、現実を意図的に覆いかくすものでもある。
公的職業紹介を、単純に国立病院や国立大学との横並びで論じて独立行政法人化の理由にすることは、無料職業紹介事業が持つ公共性、雇用対策、雇用保険との一体的運営、労働基準行政や雇用均等行政との密接な連携という点からして、きわめて稚拙な主張である。
いずれにしても、公的職業紹介部門の独立行政法人化、公設民営化をはじめとする民営化のねらいは根を一つにしていると見るべきであり、いずれを選択することもできない。

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3) 民間委託と民間活用

1 「行政特需」というビジネスチャンスの拡大

T章で触れたように、今日、人材ビジネスの多様化が目立ってきており、民営職業紹介事業、労働者派遣事業のほか、広告事業、アウトソーシング(請負)事業、アウトプレースメント(再就職支援)事業など、様々な部門に拡大している。人材ビジネスは、直接雇用、長期雇用、フルタイム雇用を基本とする正規雇用から、間接雇用、有期雇用、パートタイム雇用などの非正規雇用への転換という企業の賃金・雇用管理と、これを支援する政府の政策の下で急成長してきた。
一方、規制緩和による人材ビジネス市場拡大への思惑から新規参入が増加し、過当競争による事業収益力の低下が問題となっている。このため、収益の確保を目的として、労働者派遣事業者は職業紹介事業を指向し、逆に職業紹介事業者が労働者派遣事業を実施するというように事業の多角化がすすみ、これがいっそうの人材ビジネス市場拡大の誘因となっている。
こうした状況の下、「構造改革特別区域基本方針」(2003年1月24日閣議決定)にもとづいて「官民共同窓口の設置による職業紹介事業」が実施されたのをはじめ、今年4月からは、公共職業安定所が行っている長期失業者就職支援の一部が民間事業者に委託されることとなった。「民間委託による長期失業者の就職支援事業」を機に、すべての都道府県にアウトプレースメントの拠点を置くなどの先行投資を行い、国の委託事業の拡大を見越した準備を進めている事業者があるとの実態も報じられている(『週刊朝日』2003年11月21日号)。
こうした動きは、政府が建前上は民間委託を労働力需給調整機能の強化と位置づけているのに対し、事業者側はこれを「行政特需」というビジネスチャンスの拡大ととらえているのではないか、ということを伺わせる。そうなれば、職業紹介事業とは言いながら、そこでは国民の勤労権保障という職業紹介事業にとって最も重要な面が蔑ろにされ、人材ビジネス育成を主要な目的とした事業になりかねない。

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2 民間委託による長期失業者の就職支援事業

「骨太の方針・第3弾」において、「長期失業者に民間事業者を活用して集中的な就職相談、効果的な職業訓練・職業紹介等を行う。その成果に対する評価に基づく報酬等の誘因を付与する」とされ、総合規制改革会議や経済財政諮問会議も職業紹介事業の民間委託のいっそうの拡大を主張している。
これに対し厚生労働省は、職業紹介事業の民営化、公設民営化、独立行政法人化には否定的な立場をとる一方で、きびしい雇用情勢の下では地方公共団体や民間事業者の創意や活力を生かした労働力需給調整を進めることが重要であるとして、民間委託を活用した就職支援を進めていくとしている。
こうしたことから、「民間委託による長期失業者の就職支援事業」(71億円)が大都市圏(北海道、東京、愛知、大阪および福岡の5都道府県10地区の5,000人を対象)において2004年度から実施することとされた。この事業は、雇用再生集中支援事業(民間活用再就職支援事業)の一環として緊急雇用創出特別基金を活用し、公共職業安定所で安定した雇用に至らなかった長期失業者について、職業紹介をはじめとする就職支援から就職後の職場定着までを包括的に委託するもので、対象者の就職および職場定着の状況に応じて1人当たり最大60万円の委託費が支給されることになっている。
厚生労働省の概算要求では、支援対象者は公共職業安定所に求職の申込みをしている30歳以上60歳未満の求職者のうち、離職後1年以上の長期失業者とされていたが、査定の段階で緊急雇用創出特別基金を活用することとされ、雇用調整方針対象者(不良債権処理にともなう事業主都合による離職者)も対象とされたことから、ケースによっては離職後1年未満の求職者にも拡大されることとなった。
「民間委託による長期失業者の就職支援事業」は、総合規制改革会議「第3次答申」が述べているように、官が提供しているサービスと同種のサービスを提供する民間事業者が存在すると判断された場合、官と民とで競争入札を実施し、価格と質の両面で優れた方が落札する制度である「市場化テスト」の側面と、国の資金を使って民間事業者の事業拡大、収益の確保をはかるという性格を有するものである。
このことは、行政が最も総合的に支援すべき長期失業者を公共職業安定所による支援から切り離すこととなり、セーフティネットとしての公的職業紹介事業の機能の重大な後退を招くことになりかねない。

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3 官民共同窓口の設置による職業紹介事業

「官民共同窓口の設置による職業紹介事業」は、特区認定を受けた区域において、地方公共団体の施設内に公共職業安定所の出先窓口と民営職業紹介事業者の職業紹介事業所から構成される共同窓口を設置し、共同して職業紹介サービスを行うという枠組みである。これを受けて、2003年11月から東京都足立区でこの事業が実施されている(民間事業者はリクルート)。
特区は、法律で認められていない事項を、法改正という手続きを経ずに先行的に実施するもので、「一国二制度」的な状況を作り出した上で、これを「全国区的な展開」へと導いていくことをねらったものである。いわば、脱法的な状況を公的に認め、これを既成事実化しようというものと言える。
官民共同窓口における職業紹介事業においては、官民間で求人・求職情報を相互に連絡・回付することが認められている。一方、職業安定法第5条の4(求職者等の個人情報の取扱い)、第51条・第51条の2(秘密を守る義務等)によれば官民間での情報の相互提供は認められておらず、官民共同窓口の設置はこうした制限を特区内では取り払うというものである。
足立区では、官民共同窓口を「若年層の人材育成促進事業」として位置づけ、若年者(30歳未満)の未就業者や不安定な就業状態にある者(特に23歳未満の未就業者)について、カウンセリングの実施や就職の状況に応じて1人あたり最大36万円(23歳未満の者が6か月以上継続就労した場合)の成功報酬(助成金)を支払うこととしている。
特区計画の目標は、「民営職業紹介事業者の高い就職率に着目した職業紹介サービスの実施」とされている。しかし、足立区の実態は、ほとんどの利用者が公共職業安定所の出先窓口の利用を目的として来所している状況であり、民間事業者に期待するというよりも、むしろ無料の公的職業紹介サービスへの期待が大きいことが浮き彫りとなっている。例えば、構造改革特別区域推進本部の評価委員会(八代尚宏委員長)は足立区における官民共同窓口の設置による職業紹介事業の効果について、「年間千人という当初計画を上回り5ヵ月で715人というペースで新規雇用につながっている」(2004年8月10日の配付資料)とPRしているが、足立区の担当窓口によれば、この間に民間事業者(リクルート社)のあっせんによって就職した求職者はわずか4人に過ぎない。「新規雇用」の大部分は、安定所出先窓口のあっせん(613人)か、安定所の支援を受けての自己就職によるものだったのである。
こういう実態であるにもかかわらず、官民共同窓口の実施状況について「問題なし」と評価され、これを根拠に特区の枠組みが全国に広げられる可能性も否定し得ない。足立区では、官民の窓口が体制的・組織的に独立したものとなっているが、これが全国的に広がった場合、果たして求職者の個人情報保護が適切に図れるのか、はなはだ疑問である。
本来、地域に密着した職業紹介サービスを展開する必要性があるなら、次章で述べるように、限定された地域の特性を持つ地方公共団体と、全国一体的な職業紹介事業を行う公共職業安定所とが、生活支援制度などそれぞれの特性を生かして、連携を強めながら業務をすすめるべきである。

 

4) 職業紹介事業における国と地方との関係

1 地方事務官制度の廃止と国への一元化をめぐる経過

職業安定行政、とくに職業紹介事業における国と地方の関係については、第2次臨時行政調査会の最終答申(1983年3月)が地方事務官制度の廃止とその事務の国の行政機構への一元化(都道府県労働局の設置)を打ち出し、労働省(当時)はこの答申にもとづいて、84年の第101国会に「職業安定法の一部を改正する法律案」を提出した。しかし、同法案は継続審議や廃案をくり返し、80年代末には法案提出そのものが見送られるという状況となった。
こうして、地方事務官制度の廃止問題は立ち消えになったかに見えたが、90年代半ば頃から本格化した「行政改革」「規制緩和」「地方分権」という流れの中で、機関委任事務と地方事務官制度の廃止が政治問題として浮上してきた。とくに、95年5月の地方分権推進法の成立は、この問題の決着を避けがたいものとした。政府は、地方分権推進法にもとづいて地方分権推進委員会を発足させ(95年7月)、機関委任事務制度の廃止とその後の職業安定行政の事務のあり方については、この場で検討を行うこととされた。
地方分権推進委員会は2年余に及ぶ検討の結果、97年9月の「第3次勧告」で、地方事務官が従事することとされている事務を「国の直接執行事務とする」こと、「地方事務官制度は廃止し、…職員は労働事務官とする」ことを明記した。政府はこの勧告を受け、98年5月に閣議決定した「地方分権推進計画」で勧告に沿った措置を講ずることとし、2000年4月の都道府県労働局設置によって決着をみるに至った。
こうして、職業安定行政は国の直接執行事務として、労働事務官である国家公務員によって行われることが確定したのであるが、これは、職業安定行政は職業紹介、雇用保険、雇用対策にかかわる業務が三位一体のものとして展開されるべきこと、労働基準行政、女性少年行政(雇用均等行政)との密接な連携のもとで行われるべきであること、そして、国の直接的な行政責任のもとでこそ国民の勤労権が保障されるものであることを明確に打ち出したものであった。
ところが、「規制改革」「民間開放」の動きの中で、「官から民へ」「国から地方へ」という動きが強まり、総合規制改革会議「第3次答申」が職業紹介業務の「地方公共団体への業務移管」を主張したことに端的に示されるように、職業紹介事業を国から地方へ移すべきという動きが再浮上してきた。地方公共団体も無料職業紹介事業が行えることになったことや、「若年者のためのワンストップサービスセンター(ジョブカフェ)」の設置などによって状況は大きく変わりつつある。同時に、地方公共団体における無料職業紹介事業の実施が職業紹介の民間委託を促進し、その地域における雇用状況や求職者の属性に関する理解や、それに即した職業紹介のノウハウを十分に有しない民間事業者に職業紹介が委ねられている点も無視できない。

 

2 地方公共団体による無料職業紹介事業の実施

2003年6月の職業安定法「改正」により、04年3月から地方公共団体も厚生労働大臣への届け出によって、産業政策やまちづくり・地域活性化政策、福祉サービス利用者支援施策など、既存の施策に関連した無料職業紹介事業を実施することができるようになった(第33条の4)。ただし、それは既存の施策に附帯する場合に限られ、無料職業紹介事業を主たる業務として行うことはできない。これは、現に国が公共職業安定所を通じて行っている職業紹介事業が存在する中で、非効率な「二重行政」を回避するための措置である。
地方公共団体の行う無料職業紹介事業が、地方公共団体の行う施策とどういう関連を持つのか、具体的にあげると次のようになるであろう。
a.福祉サービス利用者の支援に関する施策に附帯しては、障害者・高齢者・母子家庭などの福祉サービスを受ける側の利用者が、地域で就労するために行うもの。
b.企業立地の促進を図るための施策に附帯しては、用地を確保し、企業を誘致し地域の雇用を拡大するために、とくに若年者の就職促進を推進するために行うもの。
c.該当地域内の住民の福祉増進に関する施策に附帯しては、その地域のすべての住民に対し、自治体内の各施設担当課等の連携により行うもの。
d.産業の発展等に資する施策に附帯しては、地場産業の振興策や伝統工芸の継承、地域の活性化等などに関するもの。
しかし、現実には、すべての地方公共団体が一律に職業紹介事業を行うことにはならないし、無料職業紹介事業を行う(行うことができる)地方公共団体と、行わない(行うことができない)地方公共団体とが生じることは避けられない。地方公共団体の財政事情の悪化の下で「地方行革」という名のリストラ(行政サービスの切り捨て、民間委託化など)が進んでおり、無料職業紹介事業だけが例外ということにはならないだろう。こうした問題をかかえた中での職業紹介事業の「地方公共団体への業務移管」は、住民サービスという点からも重大な問題をはらむことになるし、職業紹介の民間委託化の促進、さらには民営化への道を整備することになることが懸念される。

 

3 民間への業務委託の促進――ジョブカフェの場合

政府は、2003年6月に文部科学省・厚生労働省・経済産業省・内閣府の関係府省によって策定された「若者自立・挑戦プラン」をもとに、04年度予算の重点施策の一つに若年者雇用対策の充実を掲げ、若年者のためのワンストップサービスセンター(ジョブカフェ)を設置することとした。
ジョブカフェの設置主体は都道府県であるが、厚生労働省の「若年者地域連携事業」として行うもの(予算規模27.3億円)と、経済産業省が全国15地域でモデル事業として行う「若年産業人材育成事業」(同52.5億円=いずれも2004年度)とがある。このうち、厚生労働省の委託事業として行うジョブカフェの場合、職業紹介に関しては大きく分けると、@都道府県が独自に無料職業紹介事業を実施する場合と、A安定所の出先窓口(学生職業センター、学生職業相談室など)を併設して、安定所出先窓口が職業紹介を行う場合がある。前者の場合、都道府県が民間の職業紹介業者に職業紹介事業を委託することは禁止されていない。
もともと、若年者雇用に関するこの構想は経済産業省主導によって始まったものである。日本経済新聞03年4月27日付は、経済産業省がイニシアティブをとって3年間で1兆円の事業費を確保し、民間の職業紹介会社に若年者の職業訓練・職業紹介を委託する構想を持っていたことを報じている。
経済産業省のモデル事業として設置されるジョブカフェの事業範囲は当初、求人開拓・求人情報の提供、カウンセリング、インターンシップ、研修等とされ、職業紹介は行わないこととされていた。しかし、地方公共団体が無料職業紹介事業を行えるようになったことから、若年者雇用対策として無料職業紹介事業を実施することとし、それを民間委託で行う府県(京都府、長崎県、岐阜県。ただし、岐阜県は地方支所のみ)が出てきている。経済産業省のモデル事業は、厚生労働省の委託事業に比べると予算規模がかなり大きく、民間委託という枠組みが大きな部分を占めており、人材ビジネス支援という側面を色濃く持つものとなっている。

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4 国と地方公共団体との連携の強化を

2000年4月に施行された改正雇用対策法では、地方公共団体は国の施策と相まって、当該地域の実情に応じた雇用に関する必要な施策を講ずるように努めなければならないこと(第5条)、および、雇用に関する施策における国と地方公共団体との連携(第27条)が新たに追加された。地方事務官制度の廃止と都道府県労働局設置に伴って職業安定行政が国に一元化される一方で、国の権限に属さない雇用対策を、国と密接に連携しながら地方公共団体が地域の実情に応じて実施することを定めたものである。
一方で、職業安定行政が国の直接事務になったことで、地方における職業紹介機能が低下したとか、国の行う職業紹介は画一的であり、地方公共団体のような創意工夫に欠ける、というような意見もあり、それが「地方公共団体にも職業紹介事業を認めるべきだ」という動きにつながったことは否めない。
しかし、国の行う職業紹介事業は、セーフティネットとしての最低限の水準を維持するものではあっても、決して画一的なものではない。というよりも、それぞれの労働市場圏の実情に応じた業務上の工夫が行われているのが実態である。また、雇用対策に関しても、地方事務官制度廃止直後の移行時期には若干の混乱はあったとしても、それも国、地方それぞれの努力により改善され、全体として職業紹介機能が低下したとは言えないであろう。むしろ、この間に強行された労働行政職員の大幅な定員削減が、職業紹介機能を低下させる大きな要因となっていると言うべきである。
すでに述べてきたように、職業紹介事業は雇用保険、雇用対策と一体的に運用されることが最も効率的・効果的であるし、国民に対する勤労権保障という点からは労働基準行政、雇用均等行政との密接な連携が不可欠である。また、交通機関の発達により労働市場圏は以前にも増して拡大しており、県境を越えた通勤はざらである。こういう状況の下では、複数の県が協議会を作って職業紹介業務のあり方を調整するということは行政の非効率を招くことにもなる。
とはいえ、地方公共団体も無料職業紹介事業を実施できるようになり、すでにその準備を進めている地方公共団体があるし、産業政策を中心的に担っている地方公共団体が、それに関して職業紹介事業を含む雇用対策に力を入れることには大きな意味があると考えられる。
求人者と求職者をマッチングさせる職業紹介にとって、良質の求人をいかに確保するかということは決定的に重要なことである。その点で、雇用対策は産業政策と密接な連携をとる必要がある。小泉内閣の「構造改革」路線において、競争促進政策が前面に押し出され、競争力のない中小企業、地場産業は容赦なく切り捨てるという政策が強行された。これに対して地方公共団体においては、政府の経済・産業政策に沿った施策を実行するだけでなく、地元に根づいた産業の保護・育成策、企業支援策が様々に講じられ、これが地域の雇用を支える大きな力となっている。
一方、雇用対策と産業政策とはベクトルを異にしており、国の行政においては前者を厚生労働省、後者を経済産業省が担うという機能分担が一応確立している。これは、勤労権を定めた現行憲法の理念からして当然のことである。これに対して地方公共団体においては、「産業労働部」や「商工労働部」といったように産業政策と雇用対策が同一の部局で担当されることが少なくなく、多くの場合は産業政策が優先され、雇用対策はそれに付随するものとなる傾向が強い。雇用対策が産業政策の一環に組み込まれると、労働行政として不可欠な労働者の権利保障という重要な側面が後退させられることになりかねない。
以上のことから、職業紹介事業に対する責任はあくまでも国が負うことを基本に据え、その下での国と地方公共団体との対等な関係の確立と連携の強化を追求すべきである。このことが、「二重行政」を回避することにもつながることになる。

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おわりに

以上見てきたように、公共職業安定機関は、国民の勤労権、職業選択の自由を保障するためになくてはならないものとして存在しているが、同時に、有為な人材を求める使用者(企業)にとっても欠くことのできない存在といえる。全国の公共職業安定所に提出される求人の85%は、99人以下の小・零細企業からのものである。求人のためのコストがかからず、公的機関の仲介に対する安心感・信頼感、安定所窓口における相談という「事前面接」を経た求職者と面接できる効率性は、特に、独立した人事管理組織を持つ余裕のない中小・零細企業にとっては大きなメリットである。
また、効率性の追求は、しばしば公正という側面を置き去りにしかねない。公共職業安定機関は、いかなる利益も求めない公益の原則のもとに運営されているからこそ、公正かつ機会均等という原則をも追求できるのである。
規制緩和論者は、公共職業安定所が非効率だと非難するが、公正と効率の双方を追求しているのが公共職業安定所なのである。
われわれが7年前に行った調査でも明らかになったが、諸外国の公共職業安定機関の体制は、日本の現状をはるかに超える規模を有している。
2004年4月から長期失業者就職支援の一部が民間委託化されたが、その成功報酬は60万円とされている。「民間の活力と総意を活かした労働市場サービスに関する研究会」の提言(前出)では、三和総合研究所の推計として公共職業安定所にかかる行政コストが紹介されているが、これによれば、就職1件当たり約6万円(都市部は約7〜11万円)となっており、民間委託の成功報酬の設定額よりもはるかに低コストで運営されていることがわかる。
しかし、今日の公共職業安定所の職業紹介サービスにおける問題点についてもさまざまな指摘がある。前出の「研究会」提言では、「労働行政の第1の目的が労働者保護にあると、担当職員のエネルギーの大部分は失業中の求職者への対応に割かれ、不況の影響から求人が出にくいことと相俟って、求人企業に対する相談やその延長線上にある求人開拓等企業への対応が疎かになりがちである」「2〜3年での定期的かつ頻繁な人事異動による専門知識の分散化や地域の人的ネットワークの分断、顧客サービスの不徹底、嘱託相談員や嘱託求人開拓員の増加に伴う情報やスキルの蓄積量の減少及び人的ネットワークの外部化等による公共職業安定所のマッチング機能の低下が懸念される」などの指摘が行われている。公共職業安定所が労働者保護を重視するのは当然のこととしても、指摘の中には、公的職業紹介機関として早急に見直し、改善しなければならない重要な点が含まれていることを率直に認めなければならない。
公的職業紹介の最大の責務は、求職者や求人者に対して信頼性と質の高い行政サービスを提供することにある。
その際に問題となるのは、そうした期待にこたえるための公共職業安定所職員の専門性をいかに高めるか、ということである。全労働の雇用政策プロジェクトは2001年11月、「今、求められる雇用対策の提言」と題する提言を発表した。そこでは、求められる雇用対策の基本方向の第1に「公的職業紹介・職業相談の『専門性』を高め、充実させること」をあげ、いくつかの提言を行っているので、ホームページでぜひご参照いただきたい。

 

補論  雇用保険事業の民間開放――雇用保険三事業の見直し

1 「規制改革・民間開放推進3か年計画」

「規制改革・民間開放推進3か年計画」(以下、「3か年計画」)では、「労災保険の見直し及び雇用保険事業の民間開放の促進など」の中で雇用保険三事業の民間開放について触れ、@各事業の情報公開、厳格な事業評価の実施、A雇用安定事業関連の助成金等の廃止・縮小を含めた見直し、B能力開発事業の効率化、民間活用の促進、C雇用福祉事業の見直し、D早期再就職の促進、をあげている。これは雇用保険事業を、失業の防止ではなく、リストラ・解雇で失業する(失業した)労働者の再就職支援、自己責任による職業能力開発、民営職業紹介事業の利用促進のために活用しようというものである。
「3か年計画」はまた、「労災保険の見直し及び雇用保険事業の民間開放の促進など」を「『構造改革特区』等による『官製市場』改革の推進」の中で取り上げ、特区での事業の対象にしている。

 

2 労働力政策の転換と雇用保険制度

前掲の雇用政策研究会報告「雇用政策の課題と当面の展開」は、2002〜2006年に生じる労働力需要面での変化について、就業者数は製造業で70万人減少する一方で、サービス業では117万人増加するとしている。また、想定された2006年の生産額構造に見合った産業別就業者が実現するためには、常用雇用者において年平均約379万人の労働移動(産業内移動178万人、産業間移動201万人)が必要となるとの見通しを立て、今後の労働市場システムのめざすべき方向として「多様選択可能型社会」の形成というビジョンを示した。そして、こうした中長期にわたってめざすべき方向を念頭に、当面は「労働市場のインフラ整備の推進」「雇用・就業機会の整備」などに重点的に取り組むよう提言している。
「多様選択可能型社会」は、正規雇用と非正規雇用の働き方が随時選択可能なものとして用意されている社会とされているが、現実は企業が正規雇用から非正規雇用への置き換えを経営戦略とし、総額人件費を抑制しているのが実態である。
2002年に雇用対策法が「改正」され、有期雇用を前提に、離職後の再就職促進措置等により失業期間を短くすることで「職業の安定」をはかるとして、雇用対策の基本を長期雇用から短期雇用へと大きく変更した。
続く2003年の雇用保険法「改正」では、基本手当日額が求人賃金より高く、失業給付支給終了後1か月以内に就職している者が多いことなどを理由に、「早期再就職の促進」のため、給付日額を引き下げるとともに所定給付日数を短縮した。
これらはまさに、非正規雇用を拡大しようとする財界の新たな経営戦略に沿うものにほかならない。

 

3 雇用保険三事業の民間開放に関する問題点

a.「各事業の情報公開、厳格な事業評価の実施」

指摘されるまでもなく、各事業の情報公開については当然のことである。
「3か年計画」はさらに、各事業の評価について「事業の性格を踏まえ、例えば就職率等の具体的・定量的な目標を策定する」としている。雇用保険三事業は、職業紹介事業と一体的に運営され、相乗的に事業効果を高めている。職業安定行政の行う職業紹介事業は、各公共職業安定所管内の産業構造や雇用失業情勢を反映し運営されるため、各公共職業安定所ごとに重点を置く業務に特色があり、その運営は一律ではない。しかし、雇用保険三事業の各事業に「就職率等の具体的・定量的な目標を策定」し、事後に一律に評価されることになると、設定された目標を達成するため、全国の公共職業安定所で一律的な行政運営に陥るおそれがあり、行政の目的と手段が本末転倒し、非効率となりかねない。

b.「雇用安定事業関連の助成金等の廃止・縮小を含めた見直し」

雇用安定事業関連の助成金については、この間、雇用調整助成金等の雇用を維持する施策に関する助成金が縮小され、労働移動支援金等のリストラの対象となった労働者の再就職を支援する助成金が新設・拡大されてきた(表1)。
「3か年計画」は、さらに雇用安定事業関連の助成金等について、「@雇用維持支援から労働移動支援へ、A雇入助成からミスマッチ解消へ、B生活支援から早期再就職支援へという観点に重点を置いた見直しを行うべきである」としている。雇用安定事業は、「失業の予防、雇用状態の是正、雇用機会の増大その他雇用の安定を図るため」(雇用保険法第62条)の事業である。「3か年計画」で言うような見直しは、雇用安定事業を変質させるとともに、この事業の廃止・縮小を含めた見直しは、雇用の流動化・不安定化(終身雇用の否定・有期雇用の拡大)をより促進するものとなる。
全労働が第22回労働行政研究活動で行った求職者アンケート(2003年実施)では、希望する就業形態は71.8%が「正社員」「どちらかといえば正社員」と回答しており、求職者は安定した就業を望んでいる。当然のことではあるが、労働者は職業に就くことで賃金を得、生活基盤を安定させている。雇用が不安定になれば生活基盤も不安定になり、犯罪の発生率にも影響することとなる。行政として、雇用を安定させる施策の拡充・強化こそ求められており、雇用安定事業は廃止・縮小すべきではない。

別記1

1.雇用維持支援の助成金等の「見直し」
〈雇用調整助成金〉
休業手当、賃金または出向労働者に係わる賃金負担額の一部を助成
●休業等
前年度の労働保険確定保険料にかかる算定基礎賃金額の平均額に対する助成
休業   大企業1/2 中小企業2/3
教育訓練 (大企業1/2、中小企業2/3)+1人1日あたり3,000円→1,200円に変更
●出向   出向元事業主の負担額×大企業1/2 中小企業2/3
●受給期間 1指定期間につき休業と教育訓練をあわせて対象被保険者×200日→
一般事業主3年間(支給限度日数1年目100日、3年間で150日)に変更
経営基盤強化事業主 1年間(支給限度日数100日)

2.雇用保険三事業以外の雇用維持支援の助成の「見直し」
〈高年齢雇用継続給付〉
一般被保険者60歳に達したとき
●支給要件 各歴月の賃金が60歳到達時の賃金の85%未満に低下→75%未満に変更
●給付率  賃金月額の61%である場合、支払われた賃金額の25%→15%に変更
〈育児休業手当〉
●育児休業基本給付金   育児休業開始直前の賃金の20%→30%に変更
●育児休業者職場復帰給付金  育児休業開始直前の賃金の5%→10%(育児休業基本給付金の支給月数)
〈介護休業手当〉
介護休業給付金  休業開始直前の賃金の40%(対象家族1人につき1回、3か月を 限度)

3.労働移動支援の助成金の新設
〈退職前長期休業助成金〉
〈労働移動支援助成金〉
〈在職者求職活動支援助成金〉

2004年度予算の成立に伴い、雇用安定事業等の助成金について、雇用保険法施行規則等の一部を改正する省令が4月1日付で交付・施行された。その概要は、別紙の通りであるが、労働移動支援金の拡充を行うなど、「3か年計画」が求める「雇用維持支援から労働移動支援へ」等の観点に重点を置いた見直しとなっている。

●「能力開発事業の効率化、民間活用の促進」
「3か年計画」は、「就職希望者のニーズにマッチした民間教育訓練事業の育成等を行い、民間の活力を最大限に活用すべきである」としている。
就職希望者のニーズにマッチした民間教育訓練事業の活用は、真に再就職や職業能力の開発・向上のためだけではなく、趣味の分野にまで訓練科目を拡大しており、能力開発と再就職が必ずしもマッチしていない。再就職を念頭に置いた能力開発は、公共職業安定所の求職・求人のバランスシートなどを参考に、有効求人倍率の高い職種を対象とした訓練科目の設定による能力開発や、求人事業所が採用後に行う研修・訓練への支援が効果的である。
また、民間活力を活用した職業能力開発は、民間教育訓練事業者の攻勢的な営業戦略により不正が多発しており、雇用保険法「改正」時に、教育訓練給付の給付率等が見直された(表2)。このこと自体が、安易な民間活用の促進には問題があることを示している。

別記2

〈教育訓練給付の「見直し」〉
給付率 訓練に要した費用の80%→40%に変更
上限額 支給額の上限額が30万円→20万円に変更
加入期間要件の緩和
一般被保険者であった期間が5年→3年(3年以上5年未満は給付率20%、上限額10万 円)に変更

●「雇用福祉事業の見直し」
「3か年計画」は、「勤労者福祉施設や雇用促進住宅の整備など、その役割を終えているものも存在する」としている。近年、雇用保険財政から大きな支出を行った勤労者福祉施設等の運営の失敗、施設の投げ売りが批判されており、雇用福祉事業の見直しが必要になっているが、一方、それが本来果たすべき役割はますます重要になっている。
雇用福祉事業は、「職業生活上の環境の整備改善、就職の援助その他これらの者の福祉の増進を図るため」(雇用保険法第64条)の事業である。規制緩和により企業間の競争が激化し、雇用の短期化・短時間化などとともに、総額人件費の抑制により福利厚生関係の予算も削減されている。公共職業安定所が受理し職業紹介を行っている求人の事業所規模は、約85%が100人未満の事業所である。これらの事業所はもともと十分な福利厚生関係の予算を確保できないでいる。雇用福祉事業を、単に「運営に失敗した」として廃止するのではなく、官僚の天下り先としてのポストを廃し、運営を改善するなど今日的に見直し、小規模事業所で働く労働者の福祉の増進について、真剣に検討するべきである。

●「早期再就職の促進」
「3か年計画」は、「雇用保険三事業の財源を、民間活力の活用を含め、早期再就職の促進等に資するような事業に重点的に配分する」としている。
雇用保険受給資格者の早期再就職の実現はもちろん望ましいことである。しかし、良質な雇用の増大が図られない下で、民間活力の活用(民営職業紹介事業所等の利用)に重点を置いても、その効果は期待できない。むしろ、民営職業紹介事業の自由化、地方公共団体や商工会議所・農協等などへ労働力需給調整事業を拡大することにより、応募の機会が増えた求職者間の再就職競争が激化し、求人条件が低下し、結果として求職・求人のミスマッチや失業の長期化が懸念されるし、現実にそうした傾向が生じている。また、こうした状況の下で民営職業紹介事業所に求職者を誘導すれば、求職者は職業相談やセミナーなどのコスト負担を求められ、ひいてはそれが求職者からの手数料徴収規制の撤廃に道を開くことになる可能性は大きい。
早期再就職の促進のためには、@何よりもまず雇用を増大させること、A雇用が短期化した下で失業時の不安を解消するため、セーフティネットとしての雇用保険制度の失業給付を拡充強化すること、が求められている。

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