雇用対策・雇用法制 −労働者派遣、職業紹介、若年者・中高年雇用対策など

2005年 1月
「民間労働力需給調整事業の自由化が与える影響」
中央行政研究レポート【職安職域】(その1)

【目次】

【テーマの目標】

規制緩和による民営職業紹介事業、労働者派遣事業の対象の拡大・自由化が、労働者・国民の雇用・労働条件に与えている影響、公的職業紹介事業におよぼす影響を明らかにし、労働者保護法制のあるべき方向を提言する。

本項に関しては、厚生労働省の調査が行われており、2003年には東京都が独自に調査を行っています。全労働の調査結果は後掲していますが、最も民間事業者が集中する東京都の調査結果にもとづいて分析を試みます。

1 1997年職安法、1999年派遣法の「改正」後の労働力需給調整事業の展開

(1)民営職業紹介事業・労働者派遣事業の現状

1)「H14年度事業報告の集計結果」(厚生労働省2004年2月13日発表)
  有料職業紹介所 無料職業紹介所
民営職業紹介事業所数 6,441事業所(+15.8%) 502事業所(+2.4%)
新規求職申込件数 1,039,951件(+30.5%) 486,927件(+6.1%)
求人数(常用求人) 657,248人(+27.6%) 409,968人(+2.4%)
就職件数(常用就職) 205,168件(+ 4.5%) 56,859件(+14.9%)
派遣労働者 213万人(+21.8%)
  一   般 特   定
派遣元事業所 6,551所(+38.6%) 8,104所(+18.4%)
派遣先事業所 338,439件(+ 5.8%) 24,776件(- 4.4%)
派遣事業の年間売上高 1兆8,101億円(+16.0%) 4,371億円(+13.4%)
派遣事業の年間売上高 (総額) 2兆2,472億円(+15.5%)

( )内は対前年度比

2)「派遣労働に関する実態調査2002」(東京都・2003年3月)
〈派遣元事業所調査から〉

派遣契約期間をみると、「6か月未満」が67.2%(1998年)→74.4%(2002年)と増加し、「6か月以上」は32.7%(1998年)→25.6%(2002年)へと減少しており、派遣契約期間が短くなっています。しかし、通算契約期間については、「1年未満」が減り「1年以上」が増えていることから、短期の派遣契約が反復更新されていることがうかがえます。また、派遣元事業所の61.7%が派遣契約の中途解除を経験しており、その理由に「派遣労働者の知識・技能と派遣先の要望のミスマッチ」67.0%があげられています。ユーザーとしての派遣先事業所に対し弱い立場の派遣元事業所と派遣事業でも仕事と人材のマッチングの難しさが明らかになっています。

〈派遣先事業所調査から〉

派遣利用のメリットとして「仕事量の変動への対応」45.4%をあげ、デメリットとして「労働者の質のバラツキ」51.8%、「責任の所在が不明確」26.9%の次に「コストがかかりすぎる」23.7%を回答しています。
「請負を利用して派遣を利用しない事業所」が派遣を利用しない理由は、「派遣になじまない業務だから」が34.9%、「請負の方が業務遂行能力が高いから」が24.2%、「請負の方がコストが安いから」が15.3%となっています。

〈派遣労働者調査から〉

働いている理由は「主たる生活費のため」が44.5% で最も多いのですが、平均時間給は1,733円(1998年)→1,432円(2002年)と低下しています。
また、派遣労働を選んだ理由は「自分の都合に合 わせて働けるから」と「正社員として適当な仕事が なかったから」がともに43.8%と最も多く、派遣契約期間(雇用期間)は、「6か月未満」が45.3%(1998年)→50.6%(2002年)と増加しており、派遣労働者の70.8%が雇用不安を感じています。
こうした傾向は、私たちがとりくんだアンケートでも同様の結果を示しています。後掲のアンケート結果の希望する就業形態において「正社員」「どちらかと言えば正社員」の合計が71.8%、派遣やパート等の短期雇用を希望した人の中でも、「正社員の求人がない」「正社員を諦めた」とする人が21.6%を占めています。このことは、法「改正」の理由となった「個人の就業意識の多様化が進む中、仕事と生活のバランスのとれたライフスタイルを選択する傾向が若年層を中心に見られ、このような働き方に対応していく必要性が高まっている」とする主張に疑問を抱かせます。

3)民間労働力需給調整事業者の多角化現象

 長引く不況と規制緩和による業界内の過当競争もあって、有料職業紹介・労働者派遣元各社の事業収益力が低下しており、労働者派遣事業、職業紹介事業、業務請負業、教育研修・訓練、求人広告業の兼業化が進んでいるようです。
派遣元事業者は債権回収(派遣料金回収)のための与信管理が困難でリスクが大きいこと、紹介事業者の料金徴収は成功報酬であることから、採用に至らなければそれまでの投資コスト分が回収できないこと等から、経営安定化、収益の確保を目的として、労働者派遣事業者は職業紹介を志向し、逆に職業紹介事業者が労働者派遣事業を志向するという「双方向からの多角化現象」が見られ、人材ビジネスの多角化・多様化が加速度的に進行している、との指摘もあります。

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(2)法違反や苦情の現状

職業安定行政が把握している問題点等

〈民営職業紹介事業〉
  • 事業廃止等の状況
    業績不振114件(40.6%)、更新時資産要件不備46件(16.4%)、会社合併41件(14.6%)
  • 法違反の状況
    賃金の間接払い(職業紹介事業者から支払われる)、労働条件が文書等で明示されていない、業務の運営に関する規程及び手数料表が明示されていない等。
  • 苦情相談
    手数料の徴収、労働条件の明示、民営職業紹介所における苦情処理、求人・求職受理の拒否、コンサルティングや求人・求職開拓等のサービス内容に関するもの、個人情報の保護、秘密の保  持に関するもの等。
〈労働者派遣事業〉
  • 事業廃止等の状況
    一般 業績不振等 68件(22.4%)、吸収合併59件(19.4%)等
    特定 一般に転換114件(32.8%)、業績不振等108件(31.1%)等
  • 法違反の状況
    就業条件の明示を文書で行っていない事業所が多く、1年の受け入れ期間の制限を超えての派遣、個人情報の適正管理規程が未策定、26業務の拡大解釈等。
    派遣先による年齢制限や事前面接、派遣先への履歴書送付、派遣先や派遣元事業所の営業担当者の制度に対する理解不足が適正な就業条件等の確保に問題を生じさせている等。
    派遣、出向、請負の区別が不徹底、各現場の責任者にも十分周知されず、指揮命令等について曖昧になっているケースあり。
    また、労働者の混在、労働者の配置等指示、制服等の着用、機械・設備の無償貸与、従業員数  や労働時間による料金の設定、指揮命令の系統が明確でないなど、適正な請負の形態となっていないケースや派遣期間の制限を免れる目的で偽装請負が行われるケースもあり。
  • 苦情相談
    派遣契約の解除・解雇、就業条件の明示、事前面接、派遣期間、派遣元・先の苦情処理、賃金  等についての苦情相談が寄せられていますが、派遣労働者自身の制度に関する理解不足のため違  法と錯覚しているケース、逆に違法性があっても気づいていないケースがあります。
    派遣先事業所が小規模であったり、派遣労働者が少数の職場では、相談・申告に基づき指導・監督を行うと相談・申告者が特定され、苦情相談を行ったことにより、事業主等から不利益を生じることが懸念されることから、定期指導監督計画に当該事業所を含める等の工夫が行われていますが、それでもなお匿名や事業所の名称等の情報を明らかにしないケースもあり、事業所指導を行うことができないことも多くなっています。

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(3)労働者の雇用形態や労働条件への影響

NPO派遣労働ネットワークが2003年3月に実施した「派遣トラブルホットライン」では、月100時間以上の恒常的残業を強いられる、有給休暇がない等の過酷な労働実態、身内に不幸があり休んだところその日のうちに「明日から行かなくていい」と連絡された、給与から振り込み手数料が控除されるなどの法違反の実態、労働契約は1か月更新の「細切れ契約」で、契約更新時に時給ダウンや過重な業務・ノルマを強要してくる実態等が相談されています。さらに、派遣先から個人事業主やパートになるよう持ちかけられた事例(いずれも賃金がダウンする)、「社会保険に入れば赤字になる。どうしても入るというなら契約しない」「社会保険に入るなら時給を下げる」と言われた事例、紹介予定派遣であるにもかかわらず「まだお互い(派遣先と派遣労働者)に理解していないのでもう3か月派遣を延長したい」と言われ、正社員となれることを期待し頑張ってきた派遣労働者は「まるで、鼻先にえさをぶら下げられ夢中で走っている馬のようだ」と語っている事例が報告されています。
派遣ネットが実施したスタッフアンケートでは、平均時給が1,704円(1994年)→1,660円(1998年)→1,444円(2001年)とダウンしています。

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2 第156通常国会での職安法、派遣法の「改正」と総合規制改革会議での検討

(1)第156通常国会での法「改正」(概要)

−前掲(中央行政研究レポート【職安職域】序論参照)−

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(2)「規制改革・民間開放推進3か年計画」(「3か年計画」)が求めるさらなる規制緩和の検討

2002年2月に求職者からの手数料徴収規制が緩和され、経営管理者、科学技術者で年収1200万円以上の者からの手数料徴収が認められましたが、労働政策審議会の建議に基づいて年収要件が700万円まで引き下げられました。また、「3か年計画」は、求職者からの手数料徴収規制の在り方についてさらなる検討を求めています。
2003年3月に社会福祉施設等において行われる医業等の医療関連業務が労働者派遣事業の対象業務とされ(政令改正)、さらに紹介予定派遣を条件にすべての医療関連業務が解禁されることとなりました。また、紹介予定派遣は、派遣先による派遣労働者の事前面接を可能にしましたが、「3か年計画」は、紹介予定派遣以外の派遣を対象とした事前面接解禁のための条件整備等について検討を求めています。
さらに「3か年計画」は、派遣事業と職業紹介事業の兼業規制である[1]派遣元責任者と紹介責任者が同一の者ではないこと、[2]両事業に係る指揮命令系統が明確に区分され両事業に係る直接担当職員が両事業の業務を兼任するものではないこと、とされている要件について、兼任を認める方向での検討を求めています。

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3 法「改正」後の予想される影響と対策

(1)増大する有期雇用労働者

1997年の民営職業紹介事業の自由化、1999年の労働者派遣事業の自由化以降、常用労働者は減少し、臨時労働者が増大しています。労働力調査が結果を端的に示しているように、民営職業紹介事業、労働者派遣事業を自由化するということは、有期雇用を拡大することにほかなりません。
今回の法「改正」は、民営職業紹介事業・労働者派遣事業の規制緩和を行うことで、民営職業紹介事業・労働者派遣事業を創業・事業展開しやすくし、企業側からは紹介予定派遣の規制緩和で、こうした事業を利用しやすくなっており、有期雇用労働者の増大に拍車がかかることになっています。

労働力調査(総務省 単位:万人)
雇用者数 常用 臨時 日雇
1995年 5263 4709 433 120
1996年 5322 4754 448 120
1997年 5391 4791 475 125
1998 年 4750 4791 493 126
1999年 5331 4690 516 125
2000年 5356 4684 552 119
2001年 5369 4677 570 122
2002年 5331 4604 607 120
2003年 5335 4598 615 122

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(2)労働者におよぼす影響

1999年の法「改正」により派遣期間制限が、臨時的・一時的業務は1年、従来から派遣対象とされていた26業務は3年とされましたが、a)派遣先への通算派遣期間は長期化する一方で、派遣労働者と派遣元事業者の労働契約期間は短期化し、b)派遣制限期間を超えても法違反の派遣が続けられ、派遣労働者の派遣先への雇用にはつながっていません。また、c)派遣元事業所の乱立・競争激化により、派遣先との派遣契約は競争入札にかけられ、派遣契約料金のダンピングが派遣労働者の賃金をはじめとする労働条件の悪化・低下を招き、4)派遣先による派遣労働者の事前面接さえ横行しています。
派遣制限期間の延長・廃止、有期雇用契約期間の上限延長により、短期間の雇用契約の更新が延々と繰り返される実態にあります。有料職業紹介事業、労働者派遣事業により紹介・派遣される労働者の多くは有期雇用契約であり、こうした労働者は、雇い止めに常に脅かされ、契約更新を得るために人間らしく働くための権利までも放棄させられ、低賃金・長時間・過密労働、果ては法違反のサービス残業さえも容認せざるを得ない働き方に追い込まれていきます。
職業紹介事業者による賃金の間接払いも行われています。労働条件の文書等による明示さえも行われておらず、事業者は職業紹介事業、派遣事業と業務請負の兼業を進めています。こうした事態が放置され、同一事業所から短期の紹介、派遣を繰り返し受ければ、当該労働者自身が雇用主が誰なのかさえわからなくなり、事業主責任が曖昧にされることが懸念されます。

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(3)職業安定行政におよぼす影響

1) 国の労働力需給調整機能の破壊

国は、民営職業紹介事業、労働者派遣事業の許可や届出の受理、指導・監督を通して、総合的な労働力需給調整機能を果たしてきました。両事業が原則自由化されたことにより、国の総合的な労働力需給調整機能が損なわれ、両事業に業務請負業も加わり、人材サービス業者間の過当な競争が始まっています。
職業安定法は、政府の行う業務(第5条)として「労働力の需要供給の適正かつ円滑な調整を図ること」を定めています。国による労働力の需給調整のあるべき方向は、a)労働力の需要(雇用)を拡大する雇用対策の実施と、労働力の需要が拡大するまでの間の、b)失業給付日数の延長・給付日額の引き上げ、c)一時的な就労の場の提供として失業対策事業の実施、d)職業訓練の拡充、e)失業扶助制度(失業保険と生活保護の中間の制度)の創設、等の職業紹介事業、雇用保険事業、雇用対策が三位一体となって労働力の需給を調整する機能の強化です。国がこの機能を発揮することにより、労働力の過剰な供給で労働者間の競争が激化し、労働者・国民の生活の基盤となる賃金をはじめとする労働条件の不当な切り下げが起こるのを未然に防止することができます。
規制改革・民間開放推進会議が2004年8月3日に公表した「中間とりまとめ」では、官業の民間開放の推進としてその対象に、職業紹介業務と雇用保険業務を検討事項例に明記しています。公共職業安定所の職業紹介業務、雇用保険業務を民間開放すると、三位一体で運営してこそ発揮される需給調整機能が破壊され、ここでも労働力(者)がさらに無権利な状態に追い込まれることになり、すでに生じている民間の過当競争に、さらに拍車を掛けることになります。

2)求人の雇用期間の短期化、労働時間の短時間化

民間の労働力需給調整事業の自由化により有期雇用が拡大し、安定行政で受理する求人も就業期間が短期化し、パート求人が増大しています。
組合員アンケートでは、安定所で受理する求人は、非正規雇用、パートタイム、有期雇用、時給の求人が増えていると指摘しています。業務統計でも月間有効求人数1,051,253(学卒・パートを除く、2003年5月)に対して、パート530,199(全数の33.5%)とパート求人の割合が高まっています。
(参考:2003年6月常用有効求人倍率0.42倍、パート1.22倍)
○ここ1年〜2年で増えている求人形態(組合員)
雇用形態:(2)非正規雇用3178(98.4%) (1)正規雇用53(1.6%)
:(2)パートタイム3640(97.3%) (1)フルタイム102(2.7%)
雇用期間:(2)有期雇用3378(88.1%) (1)定めなし455(11.9%)
賃  金:(4)時給3043(74.9%) (3)日給578(14.2%) (2)日給月給402(9.9%) (1)月給42(1.0%)

3)派遣元事業者・業務請負事業者からの求人増

公共職業安定所では、派遣や業務請負からの求人が急増しています。グラフ「一般求人に占める請負。派遣の状況」は、ある地方都市(管内人口約40万人)の職安の2003年4月の新規求人(常用)に占める請負及び派遣求人の割合です。
生産工程、労務の職業では5割が業務請負からの求人となっています。このことは、厚生労働省が2003年12月に実施した全国12の公共職業安定所の求人者等の現状調査でも、労働者派遣業からの求人が5.8%、業務請負からの求人が28.1%(合わせて33.9%)を占めており、私たちのアンケート結果と一致しています。
業務請負業者からの求人は、概して大量の求人が提出されます。採用後数週間の研修で労働者を選別し、全国の就業先へ送り込む業態について、適正な求人数、求人条件と労働条件の相違や移転費の支給実態等、行政として実態把握した上で求人受理を行う必要があるのではないでしょうか。
派遣元事業者からの派遣求人については、派遣先が確定しており具体的な雇用関係の成立のあっせんを求めていると認められるものが受理の対象とされていますが、看板求人を提出し、安定所から紹介の確認電話をかけると「その求人は他の人で決まったのですが、他にもありますから紹介してください」と言葉巧みに登録のための紹介を求める事業者もいます。

4)求人条件の低下

厳しい雇用失業情勢と規制緩和による事業者の乱立で、職業紹介事業、労働者派遣事業、業務請負業とも過当な競争で手数料、料金の引き下げを行っており、それが労働者の賃金引き下げや社会保険未加入につながっています。
当然、派遣元事業者、業務請負事業者から職業安定所に提出される求人の条件も低下しており、下請け二法(下請代金支払い遅延等防止法、下請け中小企業振興法)の適用拡大、罰則強化などが必要です。

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4 全労働の提言(案)

第156通常国会(2003年)でより一層規制を緩和する「改正」法が成立し、民間労働力需給調整事業がますます自由化されました。すでに「紹介」と「派遣」の兼業が進められている実態、労働条件が文書で明示されていない実態や雇用契約期間が短期化し反復更新されている実態、紹介予定派遣により「派遣」と「紹介」が一体で運営される懸念があり、こうした就業を繰り返す労働者は、やがては派遣なのか職業紹介なのかさえわからなくなり、事業主責任が曖昧にされかねないおそれもあります。 これらの事業において不適正な事業運営が行われれば、労働者は経済的にも精神的にも回復不能なほどの甚大な被害を被ることから、行政としてこれらの事業に対する指導監督体制を強化し、常に適正な運営が確保されるよう指導するとともに、法違反に対しては迅速に厳正な対処を行う行政姿勢、それを可能にする行政体制の確立が求められます。

(1)法体系等の整備

派遣法第48条(注1)では、労働者派遣元・先事業所の法違反に対し、行政処分又は司法処分を行う前に指導・助言を行うことになっています。このため、定期監督や労働者からの申告に基づく監督などで法違反を確認しても、直ちに改善命令や告発を行うのではなく、まずは指導票、是正指導書を交付することとされています。法違反に対しては、こうした行政対応であるため、事業主団体等が行う事業説明会等では、「安定所が来るまでは何をやっても良いが、安定所が来て指摘したら逆らうな」の指導が行われている事例もあります。
規制改革推進3か年計画(再改定・2003年3月28日閣議決定)では、「行政のあり方が事前規制型から事後チェック型に転換していくことに伴い、許認可等の直接規制に係る体制のスリム化を進めるとともに、明確なルールづくりとそのルールが守られているか否かの監視を重視した体制に移行する」としています。労働法は、相対的に強者となる事業主を規制し労働者の基本的権利を保護する法体系であり、一旦法違反が行われると労働者に甚大な(場合によっては回復不可能な)損害を与えることから、全労働は「事前規制型から事後チェック型」に転換することに反対です。しかし、政府・財界はこうした社会規制の緩和を強行しており、この下での事後チェック体制の強化は喫緊の課題となっています。
事前規制をこれほどまで緩和し事後チェックを強化するというのであれば、法違反には直ちに行政処分又は司法処分の手続きをとる法体系に改めなければ、法違反による労働者の被害は止めどもなく拡大することを指摘しなければなりません。
(注1)労働者派遣法第48条(指導、助言及び勧告) 厚生労働大臣は、この法律(前章第4節の規定を除く。第49条の3第1項、第50条及び第51条第1項において同じ)の施行に関し必要があると認めるときは、労働者派遣をする事業主及び労働者派遣の役務の提供を受ける者に対し、労働者派遣事業の適正な運営又は適正な派遣就業を確保するために必要な指導及び助言をすることができる。

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(2)法「改正」と業務取扱要領等の明確化

a)法違反に対し改善命令や告発より助言・指導を前置した法第48条を削除すること。

法違反を発見しても、改善命令や告発より助言・指導を前置していることにより、是正指導書を交付し、指定期日(おおむね1か月後)までに是正を求めることとされています。法違反があっても直ちに許可の取り消しや告発等の行政処分、司法処分とならないため、事業者に遵法精神が希薄となっています。

b)業務取扱要領、業務運営要領等の指導監督、行政処分・司法処分に関わる行政対応の曖昧な表現を明確な表現に改めること。

厳格に法律等を適用しようとしても、業務取扱要領の表現が曖昧なため第一線では指導を躊躇するケースもあります。確信を持って指導できるよう明確な表現に改めるべきです。

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(3)行政体制の確立

「職業安定行政はサービス行政だから指導監督業務が不得手だ」という意見があります。確かに職 業紹介事業等で求職者サービス、求人者サービスを行ってきた者が民需関係業務に人事異動したと きは、これまでの業務にない違和感があるのは否定できません。しかし、だからといって職業安定行政職員がこうした指導監督業務に不向きとする論には賛同できません。過去に職業安定行政では、職業安定法第44条で禁止している労働者供給事業の告発を厳しく行った事跡もあります。現在、指導監督業務が不得手だと指摘される原因は、こうした指導監督業務に対する職員のキャリア形成・ 研修体制、法違反に対する法体系や指導監督体制が不十分であることに加え、告発等に消極的であった行政姿勢にあります。
2001〜2002年度にかけて、総務省地方管区行政評価局・地方行政評価事務所による職業安定行政の民需業務にかかる指導監督に対する行政評価・監視が実施されています。行政評価・監視の結果では、公共職業安定所の定期指導が実施された派遣元・先事業所について、総務省により改善が必要と認められた事項について職業安定行政による指導が行われていなかったり、指導が行われていても総務省調査の時点でなお未改善であることが指摘され、より的確・効果的な定期指導、原則として文書による指導と指導事項の改善状況について報告を求める等を行うことにより、定期指導の実効性を確保するよう、職業安定行政に対する改善意見が示されています。
また、派遣元事業所からは、「相次ぐ規制緩和で新規参入業者を中心に規制が守られておらず、行政の指導監督体制に不公平感を感じる」との意見がある指摘もされています。
2004年4月から民営職業紹介事業、労働者派遣事業に関係する業務が都道府県労働局に集中化されました。業務の集中化により、行政評価・監視の指摘事項の改善や、担当が複数化されることにより、業務の継続性が確保され、専門性が深まることが期待されますが、実態は、集中化による合理化減が押しつけられるなどしており、労働局管内全体の指導監督体制の確立という点では、不十分さを残したと指摘しなければなりません。
業務の集中化により一番懸念されるのが、労働者からの相談・申告体制の確立です。労働者が相談・申告で公共職業安定所を訪れた場合、電話で局へ取り次ぐか、後日の相談日を決めて局の担当者が所を訪問することになっていますが、電話では相談者の心の機微に触れる相談ができないこと、後日に再来となっては、相談者が改めて来られるか不確定なこと等から、公共職業安定所での相談体制の確立が望まれます。所に配置されている派遣指導官(未配置の所は担当者を定めて)が、所における相談・申告を担当し、局と連携を強化すること、このため派遣指導官(担当者)の人事異動後は、直ちに局主催の研修を実施することが望まれます。

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(4)労働者保護に関する法律・制度の労働者への啓発・周知と法違反の申告を受理する体制の整備

法違反が見過ごされる実態があります。「労働法は事業主に守らせるもの」との考えから行政は、事業主や事業主団体を対象に講習会の開催や行政指導を行いますが、その事業主が法違反を行った場合、行政の指導監督体制がよほど充実していないと法違反が見過ごされてしまいかねません。
労働者保護に関する法律・制度を知るのは、労働者の権利でもあります。労働者の自己責任を言うのであれば、労働者の権利を謳った労働法の内容を労働者・労働組合に啓発・周知し、法違反を行えば労働者・労働組合が直ちに行政に申告できるようにすることで、事業主の法違反を許さない監視体制を整備する必要があります。
民営職業紹介事業者、労働者派遣事業者に対する指導監督業務が都道府県労働局へ集中されることになります。当局は、民需関係業務の局への集中にあたり、許可・届出の受理、労働者からの申告受理業務も局へ集中する考えを示した通達を発出し、各労働局の意見を聴取しています。通達では、労働者等から安定所に法違反の申告があった場合の対応として、局への誘導を原則とし、誘導困難な場合は局担当者が後日所に出張し相談・申告受理を行うことが示されています。しかし、申告者も度々申告に来所できないことも十分考えられることから、各公共職業安定所にも申告の受理体制を確立することが求められます。

  • 労働者・労働組合を対象とした法律・制度等の周知を行うこと
    労働者・労働組合を対象とした講習会の開催、労働組合の主催する学習会等への講師派遣
    労働者向けの法律・制度を周知するパンフレット等の作成・配付
    注)全労働のとりくみ
    全労働としても、民間労働組合との共同を追求し、労働組合からの要請に基づき学習会への講師派遣を行うととも に、労働実態を踏まえた労働者保護法制強化の提言等を行います。
  • 労働局への業務集中後も所に民需指導官(兼任)を配置し、法違反事案に対する所での相談体制を確立すること。(申告以外の許可申請、届出、報告などは局へ集中化します。)
  • 所の民需指導官が異動した場合は、新任者に対する研修を異動後速やかに局が責任を持って行うこと。

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(5)労働法制の規制緩和を許さず、労働者保護を強化する労働法制改正等を求める運動の提起

一連の労働者保護法制の「改正」は、内閣府に設置された規制改革・民間開放推進会議の答申に基づき規制改革推進の計画が閣議決定され、政府の方針として労働政策審議会に諮問され、国会審議を経て「改正」施行されています。
労働分野の課題は労使の利害が対立することから、法・制度の見直しにあたっては、労働者・使用者・公益三者の代表による審議会での審議を原則としています。ところが、行政改革による中央省庁再編後、内閣府の機能と権限が強化され、新たに設置された経済財政諮問会議、規制改革・民間開放推進会議の委員には労働者代表は一人も含まれておらず、使用者を中心とした委員で構成され、労働行政の立場からは不公正で異常な事態となっています。
労働者保護法制の充実・強化に向けて、労働者派遣受け入れの限定、ILO条約批准の拡大、公平・公正で民主的な委員の任命を要求する運動を、広範な労働者・労働組合の共同で追求していく必要があります。

  • 派遣労働者と同一業務で働く派遣先正規労働者との均等待遇原則の確立、派遣事由の限定
    フランスでは、派遣労働者と派遣先労働者の均等待遇が法律で定められている他、常用労働者の代替を防ぐ方策 として、休暇中労働者の代替、業務の一時的な増加、季節労働など、派遣事由を限定しています。わが国でも労働者 保護の観点からこうした規制を導入するべきです。
  • ILO「使用者の発意による雇用の終了に関する条約」(第158号)の批准と国内法の整備
    条約第2条には、短期間臨時的に雇用されている者を適用除外できる規定がありますが、短期間臨時的に雇用しな ければならない合理的な理由の開示、条約に基づく保護を回避することを目的とする短期間臨時的雇用の利用を防止 する規定を追求します。
  • 中央・地方労働委員会委員、労働政策審議会委員の公平で民主的な任命 【アンケートの結果】
  • 希望する就業形態(求職者)
    (1)正社員3018(49.1%) (2)どちらかと言えば正社員1395(22.7%) (4)パート1086(17.7%)
    (6)どんな働き方でもいい446(7.3%) (3)派遣77(1.3%) (5)短期雇用74(1.2%)
    (7)その他28(0.5%) (8)不明19(0.3%)
  • パート、派遣、短期雇用を希望する理由(求職者)
    (3)育児・介護など家庭の事情595(48.1%) (1)正社員で働きたいが正社員の求人がない232(18.8%)
    (4)いろんなところで働きいろんな仕事を経験したい155(12.5%) (5)責任を持たなくてすむ41(3.3%)
    (2)何度も不採用になり正社員をあきらめた35(2.8%) (6)その他125(10.1%) (7)不明54(4.4%)
  • 労働者派遣事業、民営職業紹介事業の利用実績(求人者)
    (2)ない2109(63.6%) (1)ある1131(34.1%) 不明77(2.3%)
  • 利用実績のある事業所:労働者派遣事業、民営職業紹介事業を利用した結果
    (1)すぐに派遣・紹介があり満足している338(29.9%)
    (2)適格な人材を派遣・紹介され満足している328(29.0%)
    (3)派遣・紹介された人が条件に合わなかった141(12.5%)
    (6)期待はずれだった131(11.6%) (4)派遣・紹介されるまでにしばらくかかった91(8.0%)
    (5)派遣・紹介がなかった23(2.0%) (7)その他61(5.4%) 不明18(1.6%)
  • 今後、労働者派遣事業や民営職業紹介事業の利用予定(求人者)
    (3)未定1506(45.4%) (2)しない914(27.6%) (1)する669(20.2%) (4)その他53(1.6%) 不明175(5.3%)
  • 派遣・民営の利用を予定している事業所:派遣・民営を利用する理由(求人者)
    (2)必要な時に人材が確実に補充できる418(62.5%)  (4)雇用調整がやりやすい227(33.9%)
    (3)適格な人材が補充できる218(32.6%) (1)人件費を節約できる135(20.2%)
    (5)募集手続きが簡単116(17.3%) (6)その他38(5.7%) 不明14(2.1%)
  • 人材募集で求人情報誌、新聞の求人広告の利用実績(求人者)
    (2)時々利用する1423(42.9%) (3)利用したことがない1180(35.6%) (1)よく利用する434(13.1%)
    (4)その他156(4.7%) 不明124(3.7%)
  • 求人情報誌、新聞の求人広告の利用実績のある事業所:利用の理由(求人者)
    (1)すぐ応募がある816(43.9%) (2)たくさん応募がある626(33.7%)
    (3)募集手続きが簡単185(10.0%) (4)安価に募集できる29(1.6%)
    (5)その他170(9.2%) 不明31(1.7%)

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