雇用対策・雇用法制 −労働者派遣、職業紹介、若年者・中高年雇用対策など

2005年 1月
中央行政研究レポート【職安職域】序論

はじめに
職業安定行政をとりまく状況

1 後退する労働行政(第156通常国会での労働法制の改悪)

(1)労働力を流動化させたこれまでの規制緩和

1985年の労働者派遣法制定によって、それまで職業安定法44条違反だった派遣労働が合法化されました。1987年には、労働基準法が「改正」され、変形労働時間制の拡大、フレックスタイム制・裁量労働(専門業務型)制の導入等が行われました。そして、90年代半ばに至り、1995年に日経連が「新時代の『日本的経営』」(終身雇用の見直し、雇用形態の三層構造等の提案)を発表した頃から、労働法制の規制緩和が急速に拡大していきました。
1997年には、男女雇用機会均等法と労働基準法の女子保護規定がセットで「改正」され、同年の職業安定法施行規則の「改正」では、有料職業紹介事業の対象職業の原則自由化(ネガティブリスト化)が行われました。また、1998年の労働基準法「改正」では、高度の専門・技術者、60歳以上の労働者の契約期間3年への延長と企画業務型裁量労働制の導入が行われました。さらに、1999年には、ILO181号条約(民間職業仲介事業所に関する条約)の批准に伴い、労働者派遣法、職業安定法が「改正」され、労働者派遣対象業務の原則自由化、有料職業紹介対象職業の原則自由化の法的追認、事業参入規制の緩和が行われました。
こうした労働法制の規制緩和と企業法制の再編・整備(97年の独禁法「改正」による持ち株会社の解禁を皮切りに99年の産業活力再生特別措置法の成立等)が後押しとなって、90年代の終わりから大企業を中心にリストラの嵐が吹き荒れ、失業者の急激な増加と雇用の不安定化(非正規化・短期化)が一挙にすすみました。また、職場では、成果主義の導入と相俟って、長時間・過密労働、サービス残業が蔓延し、賃金・労働条件の不利益変更もまかり通るという状況が生み出されていきました。
2001年の雇用対策法(職業安定行政の基本法)の「改正」では、基本理念(第3条)を新たに設け、職業安定法の目的である「職業の安定」について、短期雇用で失業しても、再就職支援の措置を実施することにより当該労働者の再就職を促進し、失業期間を短くすることで「職業生活の全期間を通じて、職業の安定を図る」とする考え方に改められました。この法「改正」は、国の雇用政策を長期雇用から短期雇用を前提としたものへと転換したことを意味します。

この記事のトップへ

(2)第156通常国会での規制緩和

労働法制は、2003年にさらなる規制緩和の波におそわれます。第156通常国会では、雇用保険法、職業安定法、労働者派遣法、労働基準法が相次いで「改正」されました。これらの「改正」の特徴は、内閣府に置かれた総合規制改革会議などの答申や、それにもとづく「規制改革推進三か年計画」などが求めてきた規制緩和(改革)要求を基本的に受け入れたところにあります。そこには、労働政策決定のあり方が大きく変化していることを指摘せざるを得ません。これまで、新規立法・法改正を含む労働政策は、政労使の三者構成の労働政策審議会を通じて労使の利害調整を重視しながらすすめられてきました。 
しかし、90年代の終わりから、経営者団体の政府への直接の要請が強まり、また、労働者代表が一人も加わらない総合規制改革会議が一方的な結論を政府に答申し、これらが規制改革推進計画(閣議決定)にダイレクトに反映されて、労働政策審議会の機能が大きく後退させられる事態が生まれています。
こうしたトップダウン的なやり方は、労働行政の政策決定のあり方を根本から破壊するものと言わざるを得ません。
2003年の法「改正」のもう一つの特徴は、企画業務型裁量労働制にみられるように、1999年の導入時に労働政策審議会の場を通じて、労使間のギリギリの利害調整の結果として盛り込まれた一定の歯止め措置を短期間の内に緩和したことに端的に表れています。
2003年の一連の法「改正」の概要は、以下の通りです。
雇用保険法「改正」では、前回の法「改正」に続いて給付日数が短縮され、さらに給付日額が引き下げられました。また、就業手当が新設され、雇用保険受給者を短期・短時間の雇用にも積極的に誘導していく制度的枠組みが強まりました。上記の雇用政策の転換にともなう見直しといえます。
職業安定法「改正」では、有料職業紹介事業の許可要件の緩和、兼業禁止規定の削除等が行われ、同時に求職者からの手数料徴収の規制も緩和(省令改正)されるなど、事業者がより営業しやすくなるものとなりました。
労働者派遣法「改正」では、派遣労働が新たな時代の働き方としてより積極的に位置づけられ、期間限定の大幅な緩和(原則1年から3年)若しくは廃止(26業務)、物の製造の業務への派遣の解禁、事業所設置の規制緩和、紹介予定派遣(事前面接の制度化)の緩和などが行われ、ここでも事業者の営業の自由が拡大されました。
労働基準法「改正」では、解雇に関する規定が明文化される一方で、有期雇用の限度期間の緩和(1年から3年)、企画業務型裁量労働制の導入要件の緩和等が行われ、企業の「労働者を働かせる自由」がより広がるものとなりました。
この一連の「改正」は、雇用の非正規化や間接雇用化をいっそう促進し、企業にとって都合の良い雇用・人事管理をよりすすめやすくするものであり、労働力の需給調整に介在する民間人材ビジネスの参入や営業の自由をより拡大するものと言わざるを得ません。
長期雇用、直接雇用が後退し、非正規雇用労働者、間接雇用労働者が増加する今日の状況を、これらの法「改正」がいっそう促進させてしまう結果を生み出す恐れがあります。
しかも、労働組合の規制力が低下しているもとで、使用者(企業)側と使用される側との力の差がより拡大し、雇用の維持や契約更新のために労働者は無権利、低賃金、長時間・過密労働に文句が言えなくなるなど、企業に対する労働者の従属性、使用者(企業)の労働者に対する支配力がより強まる懸念があります。
このように、雇用の安定や労働条件の確保・向上をめざす労働行政本来の目的からすれば、きわめて憂慮すべき事態が進行している状況において、私たちは日々の業務の中で、あるいは労働者・国民との連帯・共同の課題として、何をなすべきなのか、この点を考え、職場での討論・学習を通じて明らかにしていく必要があります。

この記事のトップへ

【2003年第156通常国会での法「改正」の概要】

雇用保険法
  • 基本手当日額の給付率・上限額の引き下げ
  • 所定給付日数の引き下げ(非特定受給資格者)
  • 就業手当の創設(1年未満の雇用・就労に対し、賃金に上乗せして支給する新たな給付)
  • 一般被保険者と短時間被保険者の給付内容の一本化
  • 教育訓練給付の給付率と上限額の引き下げ
  • 高年齢雇用継続給付の支給要件を引き上げ、給付率を引き下げ
  • 雇用保険料率の引き上げ(2004年度末までは1.4%を維持)
職業安定法・労働者派遣法

【職安法】

  • 商工会議所等の行う無料職業紹介事業を届出制に緩和
  • 地方公共団体の無料職業紹介事業を届出制で解禁(範囲について一定の制限)
  • 許可の単位を事業所単位から事業主単位に変更(事業所の設置は届出制に)
  • 兼業禁止規定の削除、保証金の廃止
  • 求職者からの手数料徴収の拡大【省令「改正」】

【派遣法】

  • 派遣期間制限の緩和  臨時的・一時的業務 1年→3年  26業務    3年で行政指導→廃止
  • 「物の製造の業務」への派遣解禁(法施行後3年間は派遣期間を1年に制限)
  • 許可・届出の単位を事業所単位→事業主単位に(事業所の設置は届出制に)
  • 紹介予定派遣の緩和(派遣先による事前面接、履歴書提出を解禁)
  • 複合業務(一時的・臨時的業務の割合が1割以下の場合は26業務に整理)【省令「改正」】
労働基準法
  • 有期雇用契約期間の延長
  • 解雇規定の明文化
  • 就業規則の必要記載事項に「解雇の事由」を含める
  • 企画型裁量労働制の拡大

この記事のトップへ

2 この間の雇用対策の動向

(1)530万人雇用創出プログラム(サービス分野を中心とした雇用創出)

530万人雇用創出促進チーム(島田内閣府特命顧問を長とし、関係省庁の担当局長を委員とするチーム)が2003年6月10日に公表したプログラムは、「サービス分野が新たな雇用創造の中心」と位置づけ、特に今後成長が期待されるサービスとして、家事代行、旅行、健康増進、情報関連、派遣、警備、社会人教育、子育て、高齢者ケアなどをあげています。そして、これらの分野の需要を拡大するために、各種の規制緩和、公的部門の民間への一層の開放と競争促進、サービスの生産を担う人材の質的強化が不可欠としています。
しかし、医療・年金などの社会保障の改悪(負担増と給付削減等)や深刻な雇用失業情勢が続く中で、多くの労働者・国民が生活不安・将来不安を抱えながら日々の生活を送っており、個人向け・家庭向けサービスの需要増大がどれだけ見込めるのかはなはだ疑問です。特に、「現行市場の10倍」の需要が見込まれるとされる「家事代行サービス」をいったいどれだけの国民が利用するというのでしょうか。この点に関しては、まさに机上の議論と言われてもしかたがないものです。
また、新たに創出される530万人の雇用の中には、急増する派遣労働も含まれており、派遣労働の増大が一方で正規雇用の減少を生み出すという雇用対策としての重大な矛盾が覆い隠されています。

この記事のトップへ

(2)試し雇用の拡大

最近の雇用対策の柱の一つとして、トライアル雇用をはじめとする試し雇用・就業体験等が重視されていますが、これ自体は雇用を増大させる施策ではなく、求職者の就業体験の目的もありますが、むしろ企業の選考採用のための制度という側面が強いといえます。これらの試し雇用制度等は、試用期間(14日を超えて引き続き使用する場合は、解雇予告義務が生じ、解雇にあたって正当な理由が求められる)と異なり、事業主が自由に採用を拒否(雇い止め)することができる制度であり、企業にとって使い勝手のいい新たな選考採用方法として、利用が広がっています。
また一方で、こうした試し雇用制度が広がることになれば、試し雇用の名で選別が強化され、どうしても就職できない求職者層をつくり出すことにもつながります。
試し雇用・就業体験等では、以下の@〜Cの形態で広がっています。

トライアル雇用

トライアル雇用は、中高年齢者(45歳以上65歳未満)、若年者(35歳未満)、母子家庭の母等に加えて、就職困難者(障害者、日雇い労働者、ホームレス)を対象に、1か月単位で最長3か月まで実施され、適性や業務遂行可能性等の評価を経て常用雇用へ移行する制度で、トライアル雇用期間中に事業主からの評価が得られなければ、それ以降は雇用されない(雇い止め)こととなります。
当局は、「若年者トライアル雇用事業が開始された2001年12月以降2003年5月までの間にトライアル雇用開始者43,484人、終了者26,941人、常用雇用への移行者21,221人(常用雇用移行率78.8%)という実績が上がっている」と評価しています。一方、組合員アンケートでは、トライアル雇用が雇用対策として有効とする意見が40%ある一方で、この事業が採用選考にあたって労働者を選別する手段であって雇用を新たに創出するものでないことや、局・所に割り当てられた予算枠消化のために、採用内定者を後追い的にトライアル雇用として実施している運用の実態等から、ミスマッチ解消策として機能していない29.6%、3か月間の試用期間を国が制度として認めたことになり問題12.5%、採用条件悪化の一因となり問題2.3%、と回答しており、否定的な回答(合計44.4%)が肯定的回答を上回っています。

インターンシップ制度の導入

インターンシップには、本来の就業体験型に加え、労務提供型、採用直結型があると指摘されています。労務提供型では、就業体験に参加した学生をアルバイト代わりに日当も払わず使ったり、採用直結型では、就業体験を通して職務の適性を評価し、評価が高い者には内々定を約束する企業もでています。実施時期も大学3年の夏休みから、次第に2〜4月にと前倒しで実施されています。
就職協定がなくなった現在は、大学3年生から就職活動が始まるため、その前にインターンシップを受け入れる企業が増えている実態にあり、インターンシップが、就業体験から求人企業の選考手段に変化していることを示しています。
インターンシップを受け入れる企業の目的がこのように変化している中で、「若者自立・挑戦プラン」では、インターンシップについて「単位認定の促進、期間の多様化などにより内容を充実」するとしており、日本経団連、日本商工会議所もこれを積極的に支援し、受け入れる姿勢を示しています。
今後、インターンシップが大学生の選考・採用の手法として、ますます拡大していくことが予想されます。

紹介予定派遣

1999年の法「改正」により、2000年12月から紹介予定派遣が解禁され、2001年9月には紹介予定派遣の派遣期間の柔軟化(短縮化)ができるようになりました。さらに、2003年の第156通常国会の法「改正」で、紹介予定派遣が法に明記され、その派遣期間の上限は6か月(省令)、派遣労働者と派遣先事業主との間の雇用契約を結ぶ時期が自由化されました。
紹介予定派遣が解禁されたことで、派遣先による派遣労働者の事前面接(特定行為)が制度化されましたが、紹介予定の派遣期間が終了しても採用が義務づけられるものではなく、また採用する場合でも雇用形態に制限がなく、紹介予定派遣は必ずしも安定した長期雇用につながるものではありません。

○その他

すでに販売などの職種では、まずパート・アルバイトで採用し、契約社員を経て正社員といった段階的採用が定着してきており、これも試し雇用の一種といえます。

この記事のトップへ

(3)求人情報の公開(自己検索装置の導入、インターネットでの求人企業名の公開)

求人票の公開システムとして公共職業安定所に求人情報自己検索装置(以下「自己検」)が導入されて数年が経ち、また2003年1月から「ハローワークインターネットサービス」による求人企業名の公開が実施されています。これらは、これまでの公開求人票(ファイル方式等)による求人情報の提供と比べ、求職者に大量の求人情報を提供できるようになり、公共職業安定所の相談・紹介を経ずに直接応募する求職者(直行組)が増加するなど、公共職業安定所の職業相談・紹介を中心とした機能ののあり方に変化が生じています。

○求人の二極化(応募の多い求人と未紹介・未充足求人の存在)

求職者への大量の求人情報の提供は、労働条件の良い求人等には数十倍の応募がある一方で、労働条件が地場水準より低かったり、雇用管理等に問題のある事業所からの求人には応募がほとんどないか全くないといった、求人に対する職業紹介の二極化の傾向が現れ、ミスマッチは解消するのではなくむしろ拡大しています。

○求職活動の競争激化(求人条件の引き下げと失業期間の長期化)
自己検の導入、「ハローワークインターネットサービス」での求人企業名の公開は、求人情報をより多く、より広範囲に提供することになり、1つの求人に多くの求職者が応募する事態が生じています。

多くの求職者が応募することによって求職者間の競争が激化し、求職者に対して求人者がますます優位に立ち、求人条件の引き下げを行う求人者も出てきています。また選考にあたって、a)書類選考の増大、b)面接から採否決定までの期間の長期化、c)採用決定の保留、d)応募者への不採用結果の非通知、e)応募書類の不返還、が拡がっています。

この記事のトップへ

(4)職業能力開発

2003年1月に発表された「ものづくり人材育成研究会報告書」(産業集積地のメリットを活用したものづくりに係る人材育成や技能継承等について検討)では、集積地域内の中小企業アンケート結果から最も不足傾向が高いのは「技術者」であるが、「親会社にも下請け中小企業の面倒を見るまでの体力がなくなり、また取引関係も系列に頼らなくなってきたことから、中小企業が自社単独で人材育成にとりくまなければならなくなった」「企業規模が零細であるため1社単独では人材育成を行うだけの余力がない」と分析し、技能教育を地域の企業が共同して行うこととあわせて、「ハローワークにおいて、技能の客観的なレベルに応じた適切な職業紹介を実施するなど、技能レベルに応じたものづくり人材のマッチングを図るべき」等を提案しています。
報告書でも指摘しているように取引の系列が崩壊し、企業間での競争が激化している中で、技能教育を地域の企業が共同して行う提案が現実的に可能でしょうか。また、企業では、成果・成績主義賃金制度が導入されて以降、労働者間での競争が激しくなっていることから、熟練労働者の技能が継承されなくなったことが指摘されています。企業再編を強行し、労働者には自己責任を求めながら、職業能力開発の分野だけ「共同」を提案するのは、政策の矛盾と言わざるを得ません。
公共職業安定所では、「能力要件明確化アドバイザー」と連携をはかるとの名目で、職業能力の要件を明確化させる業務がモデル的に実施されることになっています。これは、職業能力等に起因するミスマッチの拡大がその理由とされていますが、技術者の多能工化がすすんでいる中で、求職と求人をマッチングさせるための能力評価は、多面的に行わなければなりません。
また、公共職業安定所へ求人を提出する企業の84.7%(2001年度)は、100人未満の事業所である(この規模の事業所では、多くの場合事業主が現場で仕事をしており、社員との結びつきが強い)ことから、採否を決定する要件は単に技術だけでなく協調性(特に経営者との人間関係)等が重視される傾向が強く、ミスマッチの原因を職業能力の要件のみに求めることは、かえってミスマッチの解消を困難にしかねません。

この記事のトップへ

3 公共職業安定所の職業紹介事業の民間委託等をめぐる情勢

(1)政府、与党の動き

2003年12月の総合規制改革会議「第3次答申」は、「ハローワークに関する改革」(「現状認識及び今後の課題」)として、「民間委託のさらなる拡大、民営方式の導入、独立行政法人化、地方公共団体への業務移管など組織・業務の抜本的な見直し」を求めています。そして、新たに「公共サービス等の民間開放促進のための『手段』としての『市場化テスト』の実施と『数値目標』の設定」を加え、具体的施策では、「市場化テスト」と「数値目標」の設定について、2004年度中に調査・研究を行うことを盛り込みました。
2004年3月に閣議決定された「規制改革・民間開放推進3か年計画」には、「第3次答申」の具体的施策が取り入れられ、職業紹介事業の民営化、独立行政法人化こそ盛り込まれなかったものの、「市場化テスト」と「数値目標」は、重点施策として後継組織(「規制改革・民間開放推進会議」、2004年4月設置)に引き継がれました。
2004年6月に閣議決定された「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2004について」では、2005〜6年度を「重点強化期間」と位置づけ、「市場化テスト」や民間開放に関する「数値目標」の設定などについて、2004年度中の制度設計、2005年度の試行的導入に向けて検討をすすめることを打ち出しました。
これ以降、「ハローワーク」に焦点をあてた民間開放の動きが急速に強まってきました(詳細は第47回大会議案、「新・どうなる労働行政」〈第2弾〉等を参照下さい)。

この記事のトップへ

(2)使用者としての厚生労働省の動き

 厚生労働省当局は、職業紹介、雇用保険、雇用対策の各事業の一体的運営の必要性や、ILOの「職業安定組織の構成に関する条約」(第88号)から、国の責任による全国的な体系の下に、無料の職業紹介事業行うことは必要との立場に立っています。しかし、明確なルールを設けた上で民間のノウハウ等の活用をすすめるとしており、人材ビジネス業界の攻勢が強まっている中で、今後これが急速に拡大していくことが懸念されます。

(a) 民間事業者の活用
  • 特定求職者雇用開発助成金等の雇い入れ助成を民間職業紹介事業所の紹介就職にも適用拡大(2001 年10月より実施)
  • 労働移動支援助成金(労働者を離職させる事業所が、アウトプレースメント会社を利用して再就 職させた場合、支払った費用の1/4(30万円限度)を助成(2001年12月より実施、2002年12月より 離職後7日以内を3か月以内に緩和)
(b) 民間委託
  • キャリア交流プラザ事業でのセミナー等を委託
  • 雇用保険失業給付受給者の就職支援セミナーの委託
  • 高校卒業予定者に対する就職支援セミナーを委託
  • 不良債権処理の影響で、中小企業離職者のうち管理職や技術職へ就職を希望する者の再就職支援 を委託(2002年度補正予算)
  • 長期失業者の就職支援を委託(2004年度実施)
(c) 民間導入
  • 就職支援ナビゲータ(早期再就職選任支援員=再就職、早期就職の緊要度が高い者に対する担当 制による体系的、計画的な就職支援)
  • 就職支援アドバイザー
  • キャリアコンサルタント(民間事業者から派遣・2005年度実施)
(d) 地方公共団体との連携
  • 官民共同によるサービスの提供(構造改革特区=東京都足立区で2003年11月から実施)
  • ジョブカフェ(30歳未満の若者に対する職業に関する情報提供、コンサルティング、職業紹介ま での幅広いサービスをワンストップで行うセンター・2004年度実施)
(e) 規制改革・民間開放推進3か年計画が今後の課題としている事項
  • 求職者から徴収する手数料規制の年収要件のさらなる引き下げ・撤廃の検討
  • 労働者派遣事業における事前面接全面解禁の条件整備等について検討開始

この記事のトップへ

4 定員削減等行政体制をめぐる情勢

(1)定員削減

地方職業安定行政系統職員の定員は、2003年度59名、2004年度は61名が削減されました。一方、これまでも新たな雇用対策の実施にともない、職業相談員、求人開拓推進員、カウンセラー、アドバイザー、ナビゲーター等の定員外職員が数多く配置されており、いまやこうした職員がいなければ行政運営ができない状況になっています。

この記事のトップへ

(2)業務カット・簡素化、重点化

定員事情の厳しい中で、行政利用者の期待に応えて求められる行政サービスを提供する体制を確立するには、業務のカット・簡素化、重点化が極めて重大な課題となっています。厚生労働省当局は、業務のカット・簡素化、重点化についてプロジェクトチームを設置し検討してきましたが、2003年度に実施予定の内容は、「焼け石に水」と言っても過言ではないものであり、その一方で、「ハローワークインターネットサービス」の応募票の採否確認業務や、「失業認定の厳格化」に伴う求職活動実績のサンプリング調査等の業務が新たに上乗せさせられるなど、業務カット・簡素化、重点化の効果は目に見える効果をあげていないと言わざるを得ません。

この記事のトップへ

第22回行政研究活動のとりくみ経過

こうした職業安定行政をとりまく情勢の下で、政府や規制改革・民間開放推進会議の方針を具体化を転換させ、職業安定行政を守り発展させるには、何よりも、私たちが日常業務を通じて、行政利用者の期待に応える国民本位の行政を追求する努力をいっそう強めることが必要です。
このため、8年ぶりに第22回行政研究活動のとりくみを開始し、(1)すべての組合員が行研活動に参加することを通して、(2)職業安定行政をとりまく情勢を学習するとともに、(3)アンケート活動等で管内の雇用・失業情勢や求職者・求人者の実態に触れ、(4)あるべき行政姿勢や業務手法について検討するとともに、(5)可能なことから実践することをめざしました。

1 研究テーマの設定

今回の行政研究(以下「行研」)活動のテーマ設定にあたっては、支部・分会アンケートを重視しました。これは、第一線職場(職員)が持つ業務に対する問題意識にふさわしい行研活動をするために重要なことでした。
また、研究テーマについて、支部と分会の役割分担を行い、支部は「制度・政策」に関するもの、分会は「業務」に関するものとしました。これは、これまでの行研活動で、組合員が参加するとりくみがアンケート活動で終わってしまう傾向が強かったことから、アンケート結果にもとづく業務のあり方に的を絞ることによって、組合員が討論の場等に参加しやすくなることを意識したものです。
しかし、結果として、中央行研集会に向けたレポートは、支部段階の研究テーマにもとづくレポートのみとなりました。この点は、本部及び中央行政研究推進委員会において総括し、解決の道筋を明らかにすることが求められています。

【支部・分会アンケートの結果、決定した研究テーマ】

支部研究テーマ

  1. 民間労働力需給調整事業の自由化が与える影響
  2. 国が行う公共職業紹介事業のあり方
  3. セーフティネットとしての雇用保険制度

分会研究テーマ

  1. 職業相談・紹介の充実強化
  2. 求人受理の充実強化
  3. 事業所情報の収集、分析・加工、管理・提供
  4. 公共職業訓練の現状と問題点
  5. 離職理由の確認

この記事のトップへ

2 アンケート活動

(1) 集計結果
  • 求職者アンケート(+αは集計委託後に本部へ提出があったアンケートで未集計)
    取組支部数43支部 6,143+27
  • 求人者アンケート(同)
    取組支部数42支部 3,317+10
  • 組合員アンケート(同)
    取組支部数43支部 7,465+61
(2) アンケートのとりくみの総括

 第22回行研は、前回の行研から8年(第21回行研=意思統一の支部代1994年4月、全国集会1995年12月6〜8日、中央レポート発行1996年4月)が経過し、久しぶりのとりくみでしたが、上記のようなアンケート集約を行うことができました。これは、第21回行研における求職者アンケートが6,533件であったことからすると、とりくみのブランクがあったにもかかわらず支部・分会の積極的な受け止めと奮闘があったと評価できます。
また、今回のアンケート活動では、求職者・求人者アンケートを聴き取りで実施することを原則にしました(行研推進要領)が、少なくない支部で窓口業務の繁忙などを理由に、アンケート配布→郵送による回収という方法をとったところもありました。
アンケート活動で直接の聞き取り方式を重視したのは、求職者・求人者から実態や声を聞き取る体験が組合員の行政研究活動へのエネルギーにつながっていったこれまでの教訓によるものです。
組合員は、求職者・求人者との直接のふれあいを通じて自覚と責任を呼び覚まされ、行政研究活動により積極的に参加していくようになります。今回やむ得ず聞き取り方式ができなかった支部では、こうしたとりくみの意義を是非今後のとりくみに活かしていただきたいと考えます。また、こうしたアンケート活動に、できるだけ多くの組合員に参加してもらうことが行政研究活動成功の大きな原動力になることをあらためて強調しておきます。

3 アンケート結果

各項目について、レポートの中で分析します。

この記事のトップへ