雇用対策・雇用法制 −労働者派遣、職業紹介、若年者・中高年雇用対策など

2004年 2月
「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律の一部を改正する法律案」について(見解)

2004年2月10日、政府は「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律の一部を改正する法律案(以下、法律案という)を閣議決定し、国会へ提出しました。
高年齢者等の雇用をめぐっては、(a)年金支給開始年齢が順次65歳へ引き上げられていくこと、(b)今後、団塊の世代が60歳台へ突入することから、60歳台前半層の雇用確保が行政課題となっています。今回の法律案は、定年年齢の65 歳への引き上げ、65歳までの継続雇用制度の導入を、現行の努力義務から事業主の義務とするなど評価しうる面もありますが、一方、以下に述べる問題点があり、不十分な内容にとどまっています。

法律案の問題点

1 高年齢者雇用確保措置

法律案は「定年の定めをしている事業主は、その雇用する高年齢者の65歳までの安定 した雇用を確保するため、当該定年の引上げ、継続雇用制度の導入又は当該定年の定めの廃止措置のいずれかを講じなければならないものとするとしています。

1)「65歳までの安定した雇用を確保する」対象となる労働者は「その雇用する高年齢 者」とされており、高年齢者とは、厚生労働省令で55歳以上と定められています。中高年齢者(45歳以上で高年齢者等という)を対象に解雇、希望退職の募集又は自己退職の強要、業務請負や派遣等の受け入れなど(解雇等した労働者を、あらかじめ設立した業務請負等の子会社等に、それまでの賃金をはじめとする労働条件を大幅に引き下げて雇用し、それまで働いていた職場で働かせる事例もあります)のリストラが行われています。その後は50歳前後で、その雇用する労働者を社外へ排出する人事管理を「65歳までの安定した雇用を確保する」対象を55行う事業所が増えています。法律案は、歳以上とすることで、こうした労働力の需要がありながら、55歳未満の労働者を社外へ排出する人事管理を行う事業主を「安定した雇用」確保の対象としていません。高年齢者の「65歳までの安定した雇用を確保する」には、高年齢者となる直前に不安定雇用へ移行させる人事管理が広がっている実態を直視し、それを規制しなければ、雇用確保の実効は乏しいと指摘せざるを得ません。

2) 高年齢者雇用確保措置のうち継続雇用制度については、労使協定によりその対象となる「高年齢者に係る基準」を定めることができるようになっています。
高年齢者雇用確保措置は、年金支給開始年齢を引き上げ、年金支給開始年齢までの雇用を確保する措置を事業主に求めながら、その対象となる「高年齢者に係る基準」を定めることを認めるということは、例えば、55歳未満の労働者を社外へ排出する人事管理に応じなかった労働者は、継続雇用制度の対象としないとすることを可能にする等、労働者の差別・選別を容認し「65 歳までの安定した雇用を確保する」という高年齢者雇用確保措置の趣旨に沿わないものです。
しかも、高年齢者雇用確保措置に関する特例等では、政令で定める日までの間、労使協議が整わないときは、事業主が「就業規則その他これに準ずるものにより、継続雇用制度の対象となる高年齢者に係る基準を定め、当該基準に基づく制度を導入することができる」としています。このような特例は、労使協議を軽んじ、結果として使用者の意向を貫徹させることになる懸念があります。

3) 高年齢者雇用確保措置は「いずれかを講じなければならないものとする」と事業主にその実施を義務づけていますが、違反している事業主に対しては、厚生労働大臣が「必要な助言、指導又は勧告をすることができる」にとどまっています。
事業主に法律で高年齢者雇用確保措置を義務づけても罰則はなく、行政の助言、指導又は勧告のみということでは実効性に欠け、年金支給開始年齢の引き上げによる不利益を労働者に一方的に強いるものとなりかねません。

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2 高年齢者等の再就職の促進等

法律案は「解雇等により離職することとなっている高年齢者等が希望するときは、その円滑な再就職を促進するため、当該高年齢者等の職務の経歴、職業能力その他の当該高年齢者等の再就職に資する事項」等を明らかにする書面(求職活動支援書)を作成・交付することを事業主に義務づけています。
雇用が短期化し、成果・成績主義賃金制が広げられる中で、多くの事業主が、採用時に履歴書に加えて職務経歴書の提出を求めるようになっています。また、技能を証明する資格制度の整備が進められていますし、正規採用前の試し雇用制度が広がっています。今後は、離職した事業所の職務経歴、職業能力の証明書を求めることが想定されます。法律案は、1)求職活動支援書を作成・交付する対象を「解雇等により離職する」労働者に限定しており、自己都合で退職する労働者が不利に扱われかねないこと、2)「職業能力その他の当該高年齢者等の再就職に資する事項」の評価や内容は、事業主の裁量によって記載されることから、事業主が労働者を支配する手段として利用し、労働者の従属が強まることが懸念されます。

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3 シルバー人材センター等の業務の特例

1) シルバー人材センター等の行う一般労働者派遣事業について今回の法律案では、シルバー人材センター等において「その構成員である高年齢退職者のみを対象として、臨時的かつ短期的な就業又はその他の軽易な業務に関する就業に係る一般労働者派遣事業を行うことができるものとする」とされています。これまでシルバー人材センター等は「臨時的かつ短期的な就業(雇用によるものを除く) 又はその他の軽易な業務に関する就業(雇用によるものを除く。)」の機会を提供する業務を行うものとされていましたが、無料職業紹介事業を行うことにより雇用による就業も扱い、シルバー人材センター等の業務の範囲を大きく拡げてきています。今回さらに、シルバー人材センター等において、一般労働者派遣事業を行うことができるものとすることにより、シルバー人材センター等では、委託、請負、無料職業紹介事業に加え、労働者派遣事業も扱うことになり、多様な雇用・就業を取り扱うことになります。
一方、シルバー人材センター等が行うことができる多様な雇用・就業は「臨時的かつ短期的な就業又はその他の軽易な業務に関する就業」という条件があることから、その雇用・就業は、不安定で低賃金なものとならざるを得ません年金支給開始年齢を引上げ、労働者を、就労による収入なしには生活できない状態におきながら、シルバー人材センター等が取り扱う雇用・就業を臨時的かつ短期的なものや軽易な業務に関するものに限定し、労働力の需給調整機能を、雇用によらない就業のあっせん、無料職業紹介事業、労働者派遣事業にと拡大していることは、シルバー人材センター等を、不安定で低賃金で働く労働者を提供する機関として位置づけるものと指摘せざるを得ません。
年金支給開始年齢の引き上げ、数年以内に団塊の世代が60歳台に突入することや少子高齢化社会を迎えた下で労働力人口が減少すること等から、緊急な高年齢者に対する雇用対策の強化が求められています。

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