雇用対策・雇用法制 −労働者派遣、職業紹介、若年者・中高年雇用対策など

2001年11月
今、求められる雇用対策の提言
−今日の雇用と失業をめぐる状況をどうみるか

第1章 雇用・失業情勢はますます深刻さを増している

(1)今年7月、完全失業率が統計史上初めて5%に達し、9月には5.3%といっそう深刻な状況となりました(9月の完全失業者は357万人)。雇用・失業情勢の深刻さは、完全失業率が高いというだけではありません。これに加えて、就職の意欲はあるのに、自分に適した仕事がないために求職活動をあきらめている事実上の失業者が420万人もいます(総務省統計局「労働力調査特別調査」/2001年2月)。こうした潜在的な失業者を加えると、日本の実質的な失業率は10%にも達します。実に10人に1人が失業者という状況です。失業対策は、潜在的な失業者も視野に入れて行うべきです。
いったん失業すると、それが長期化していることも大きな特徴です。「労働力調査特別調査」によると、失業期間が1年以上の失業者は完全失業者全体の26.1%と、4人に1人の割合となっています(2001年2月)。5年前には、この割合が19.6%でしたから、失業の深刻化は失業期間の長期化としても表れています。とくに55歳以上が深刻で、1年以上の失業者の35.0%を占めています。

(2)雇用の不安定化もすすんでいます。同じく「労働力調査特別調査」によると、パートタイム・アルバイト、派遣、嘱託など非正規雇用で働く労働者は1360万人、27.2%で、この割合は年々上昇しています。これらの雇用形態で働く大部分の人たちは、正規雇用労働者に比べて賃金・労働条件が明らかに劣っていますし、雇用の先行きも不安定です。実質的な均等待遇が確立していない日本においては、非正規雇用労働者の増大が労働者全体の労働条件を引き下げることは明らかです。

(3)労働市場の状態を表す代表的な指標である有効求人倍率も深刻な状況にあります。
今年8月の有効求人倍率は0.59で、ここ2年ほどは0.6前後で推移しています。有効求人倍率では、職種間、年齢間で大きな差が見られます。神奈川・横浜職安の場合、今年8月の有効求人倍率は職種計では0.63ですが、専門・技術的職業が1.6であるのに対し、最も求職者の多い事務的職業ではわずか0.17にすぎません。
年齢別の有効求人倍率をみると、特に55歳以上の求職者のきびしさが顕著です。これも横浜職安の例ですが、55歳以上の有効求人倍率は0.13(職種計)となっています。職種間の差も大きく、最も求職者が多い事務的職業は0.02と、希望する職種への就職は絶望的な状況です。次いで求職者の多い専門・技術的職業でも0.11です。
一方、パートタイムに対する求人は増加しており、今年7月の全国のパートに対する有効求人倍率は1.34となっています。

(4)新規学卒者の就職難も深刻です。
例えば、2002年3月高校卒業予定者に対する求人数は15万1667人で、前年同期に比べて7.1%も減少しています(厚生労働省調べ、7月末現在)。これは10年前の10分の1に過ぎません。求人倍率も0.61で、85年以来で最低の水準です。中卒予定者に対する求人状況はさらにきびしく、前年同期に比べて17.4%減で求人倍率は0.19です。大卒についても、依然としてきびしい状況が続いています。
こうした中で、アルバイトや派遣、請負などという雇用形態で職業生活のスタートを切らざるを得ない若者が増えており、生活の自立や専門的な職業経験の蓄積といった面でも大きな問題となっています。

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2 雇用・失業情勢の深刻化をもたらしている要因は何か

以上のように、今日の雇用・失業情勢は、その規模、広がり、期間のいずれをみてもこれまでにないきびしさを見せています。それでは、こうした状況を生みだしている原因はどこにあるのでしょうか。

(1)景気の後退による生産や購買力の低下が雇用減少の大きな要因となっています。特に重要なのは、完全失業率が98年から急上昇していることに見られるように、97年の消費税率引き上げ、医療費の自己負担増などをきっかけとした「消費不況」が雇用にも大きな影を落としていることです。効果的な雇用対策を講ずることはもちろん必要ですが、GDPの6割を占める個人消費の抜本的な改善措置を講じて日本経済、雇用の本格的な回復を図り、雇用そのものが増えるようにしなければなりません。

(2)この間、産業構造が大きく変わっていることもあげられます。日本のリーディング産業といわれてきた鉄鋼、自動車、電機、造船などでの雇用量が大きく落ち込んでいます。これらの産業には日本の代表的な大企業が集中していると同時に、多数の下請企業を抱えています。親企業での人減らしは、広範なすそ野をなす下請企業を直撃し、雇用の吸収力を大きく低下させています。
これらの産業は、外国企業との激しい競争にさらされたり、海外進出を大規模にすすめており、海外進出企業で雇用される労働者数の方が日本国内の労働者数を上回っている業種もあり、いわゆる「産業の空洞化」がすすんでいます。
また、かつては顕在的・潜在的を問わず失業者を吸収していた「農業」や「自営業」の衰退も大きな要因となっています。
一方、新たな雇用の受け皿となる産業が見えてきていません。雇用の成長分野として期待されたIT関連産業は、アメリカの「IT不況」の影響をもろに受けて、今や人員削減の先陣を切っていますし、530万の雇用創出が期待できるとされるサービス産業も、政府の言い分をそのまま受け取るには不確定要素が大きすぎますし、サービス産業で働く労働者の劣悪な労働条件の抜本的な改善が図られなければなりません。
政府の近年の政策は、新たな雇用の受け皿産業が見当たらないのに、「低成長・低生産性」産業のリストラを積極的に支援する内容となっています。これでは、労働者・国民の間に雇用不安が広がるのも無理はありません。

(3)今日の深刻な雇用・失業情勢を生み出している最大の要因といってもいいのが、大企業を中心とする激しいリストラ・人減らしです。今日のリストラ・人減らしの特徴は、より「攻撃的」な側面が強まっていることです。本当に人員削減をしなければ企業の存在が危うくなるというのではなく、もっぱら人件費の削減をねらった動きが広がっています。中には、公共職業安定所に対して、業務請負業者から、リストラで大量の解雇者を出している事業所を就労先とする、大量の求人が出されるケースに見られるように、人減らしの必要はないのに、リストラという時勢に便乗した動きも少なくありません。
人減らしの手法は、解雇、早期退職選択、出向・配転(今では、「離籍出向」などという言葉さえ何の不思議もなく使われていますが、これは体のいい解雇にほかなりません)、退職者不補充、新規採用の抑制などいろいろありますが、正規雇用労働者から派遣、請負(偽装請負を含む)、契約、パートなど非正規雇用労働者への置き換えも重大な問題です。
高卒予定者を対象とした学卒求人に、派遣会社やアウトソーシング会社(構内請負)からの求人が増えています。これは、不安定な雇用形態というだけでなく、求人には就労先が列記されているだけで、具体的にどこで就労するのかが不明なため採用決定がイコール勤務場所や労働条件の確定とならない、という問題もあります。仕事内容ばかりか、直前まで勤務場所や労働時間・休日などがわからないままに初出勤の日を待つという例も珍しくなくなっています。
また、こうした雇用の流動化・不安定化を、「規制改革」と称してすすめられてきたこの間の労働法制の見直しが後押ししてきたことを見逃すことはできません。

(4)かつては、「日本では労働時間を調整することで雇用への影響を防いでいる」という理屈が一定の説得力を持っていました。しかし、今日では、大幅な人減らしを強行しながら、相変わらず労働者に過酷な長時間・過密労働を強制する企業のやり方をこうした理屈で説明することはできません。
政府は、時間外労働の大幅な削減、完全週休2日制の実現、年次有給休暇の完全取得を掲げ、国際公約にもしてきましたが、仮にこれを実行するなら300万人以上の雇用増が必要となります。しかし、現実は、年間の総実労働時間は1850時間前後となっているものの(「毎月勤労統計調査」)、統計には表れない「サービス残業」が約300時間にも及び、先進諸国で最も労働時間が長くなっています。年次有給休暇も、平均付与日数の少なさもさることながら、2001年にはついに平均取得率が5割を切るという、これも他の先進諸国では想像もつかない状況となっています(厚生労働省「就労条件総合調査」2001年10月)。
「企業内余剰人口」を強調し、リストラ・人減らしを合理化する議論もありますが、こうした現状を率直に見れば、労働時間の削減とそれに見合った雇用拡大にむけた対応が真剣に考えられなければなりません。

(5)政府が日本経済再生の最重点としている不良債権の最終処理に伴って、失業の増大が懸念されています。
内閣府は、不良債権の最終処理によって離職者が54万人、失業者は17万人発生すると試算しています。しかし、多くの民間調査研究機関は、100130万人の失業者が新たに発生すると試算しており、2002年の完全失業率についても5%台後半に上昇すると見込んでいます。
不良債権の最終処理については、それによって日本の経済がさらに収縮させられ、その結果、新たな不良債権が生じ、さらなる雇用の縮小につながる、という悪循環に対する懸念が各方面から指摘されています。

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3 問題の本質を歪める「雇用のミスマッチ」論

(1)第153臨時国会の所信表明演説で小泉首相は、「公共職業安定所には、求職者を上回る年間700万人もの求人があります。…求人と求職のミスマッチを解消し」と述べています。また、政府の「改革先行プログラム」(9月14日)でも、「雇用のミスマッチを原因とする失業が拡大している現状を踏まえ、民間活力の活用を図りながら、職業紹介機能の充実を図る」としています。さらに、「総合雇用対策」(9月20日)でも「雇用のミスマッチ解消」が中心的な施策として掲げられています。
公共職業安定所における求人・求職者のマッチング機能を充実させることはますます重要性を増していますが、今はやりの「雇用のミスマッチ」論は雇用・失業問題の本質を歪める恐れがあります。特に、「改革先行プログラム」のように、「ミスマッチ」を高失業率の主な要因であるとする見方は、すでに述べた雇用・失業問題深刻化の原因から見て、因果関係を逆転させるものです。雇用のミスマッチが失業を拡大させているのではなく、失業の拡大が雇用のミスマッチを誘発・拡大しているのです。

(2)この間、政府サイドでは、求人と求職者の条件が合致しない、いわゆる「ミスマッチ」の原因として、とくに「情報」、「能力」、「年齢」の3つを強調しています。しかし、ミスマッチというなら、労働条件のミスマッチの拡大こそ問題にしなければなりません。
雇用・失業情勢の悪化は、同時に労働条件の「底割れ」という状況を生みだしています。かつては、「失業給付が高すぎるため、受給者がなかなか再就職しようとしない」ということが強調されていました。しかし、中高年ホワイトカラー求職者にとって離職前の半分以下の賃金での求人というのはざらで、再就職先の賃金があまりにも低いためにとても生活できず再び離職せざるを得なかった、というケースすら珍しくありません。
通勤手当も残業代も出ず、社会・労働保険の未手続きの企業、ノルマがきびしい企業、長時間・過密労働がまん延している企業を労働者が敬遠することを、労働者の「わがまま」ととらえるとすれば、その批判は全くの筋違いです。

(3)「情報」のミスマッチについて見るならば、的確な情報が求人・求職者の双方に提供されることは大切です。しかし、「雇用におけるミスマッチ」の原因が情報の多寡によるものなのか、については慎重な検討が必要です。必要なのは、なぜ求人が充足されないのか、なぜ就職に結びつかないのかといった情報の収集やその原因の分析であり、求人者への求人条件の緩和指導などを通じて、求職者が適職選択権を行使できるような良好な雇用の機会を増やすことです。
公共職業安定所の窓口では、求職者の経験、能力、希望する労働条件を把握し、数件の求人を提示したうえで、さらに相談を深め最も適した求人に絞り込んでいきます。単に情報量のみを増やすことは、かえって求職者を混乱させ、適切な求人の選択・絞り込みを困難にします。また、良好な求人が絶対的に足りない中では、求職者を「いくら探してもいい仕事がないから、ここらで妥協しなければならないのか」という気持ちに追いやることになりかねません。

(4)「能力」については、産業構造の転換とそれに伴う労働力移動の円滑な移動をすすめるために能力再開発を行わなければならないが、求職者の能力が求人側が求める即戦力としてのレベルに達していないためにミスマッチが生じている、ということが指摘されています。
仮に、新たな産業分野に就労先を求めざるを得ない場合には、十分な職業訓練が不可欠です。しかし、現実には不良債権処理の中心的な対象とされている建設業からの離職者のうち、約7割が建設業に再就職していること等に照らすならば、3カ月や6カ月といった短期の訓練で本当に他産業で必要な職業能力が養成されるのか、などの疑問があります。たとえば、現在IT関連訓練の必要性が強調され、短期の訓練が大規模に実施されていますが、国内に不足しているシステムエンジニア等を要請するには、少なくとも2年以上を欠けた質の高い訓練が必要です。
重要なのは、企業の求める職業能力の養成という観点だけでなく、労働者(求職者)の能力や適性にしっかりと見合った職業訓練の場を提供する体制の充実を図ることです。そのためには、公共職業安定所におけるカウンセリング機能の充実が不可欠です。
これに対して、労働力移動の円滑化を推進する政府の施策は、「即戦力」を求めて企業内訓練(育成)を弱体化させている企業の行動を支援する内容のものとなっており、問題があります。

(5) 「年齢」については、先の有効求人倍率でも見たように、中高年齢層の求人数は絶対的に不足しており、ミスマッチというよりは、条件を合致させようがないアンマッチといった方がいい状況です。「応募しようにも、求人先の年齢制限で応募しようがない」というように、年齢の壁が求職者の前に立ちふさがっています。また、企業が即戦力を求めている中で、若年層の場合はそれとは逆に、職業経験が少ないために採用されないというケースも目立っています。
「改正」雇用対策法の施行に伴って、求人における年齢制限の緩和が行われることになりましたが、実効ある措置を欠いたままでは中高年求職者排除が覆い隠されることも懸念されます。
いずれにせよ良質な求人が絶対的に不足し、「労働条件のミスマッチ」が再就職を困難にしている状況を見るならば、高齢者の雇用を増やせば若年者の雇用が不足することとなり、高失業率の根本的な解決とはなり得ません。
ことさらに「雇用のミスマッチ」論を強調することは、労働者が人間らしく働き、生活できるようにするためのルールの確立にむけた、国や企業の責任を免罪する役割を果たすものと言わざるを得ません。

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第2章 求められる雇用対策の基本方向

労働力の売り手である労働者(求職者)は、賃金を唯一の生活の糧とすることから、労働市場でそれをいつまでも売り控えていることができず、たとえ不利な条件であっても、買い手である使用者(求人者)に労働力を売りわたさなければなりません。
景気が後退し、経済活動の低迷がつづき、失業率が高まる傾向にあるとき、こうした求人者(使用者)と求職者(使用者)の「非対等性」はますます広がり、失業の再生産(高失業率→求人条件悪化→ミスマッチ拡大→高失業率)に陥っていくことになります。
こうした労働市場での「特別な関係」に起因した弊害をとり除き、求人者(使用者)と求職者(労働者)とを対等な立場に立たせ、すべての労働者(求職者)に相応しい雇用と労働条件を保障するため、公的職業紹介、公的能力開発などを通じて求職者の就職活動への支援を強化するとともに、今日の雇用失業情勢に相応しく、雇用保険制度を充実させることが何よりも重要となっています。またあわせて、今日の高失業率をつくりだしてきた真の要因を見きわめながら、職業安定行政のみならず、幅広い行政分野との連携の下に効果的な施策を講じていくことが重要です。
ついては、前述した今日の雇用と失業をめぐる情勢の特徴をふまえて、次のとおり、求められる雇用対策の基本方向を示します。

1 公的職業紹介・職業相談の「専門性」を高め、充実させること。

(1)公的職業紹介・職業相談にあたり、積極的な「事業所訪問」等を通じて、生きた「求人情報」を組織的に蓄積し、高い専門性に裏打ちされた「職業相談」を通じて、「適格紹介」を充実させること。

この間の職業安定行政の定員削減等によるきわめて脆弱な行政体制(人員)の中で、職員は窓口対応に追われ、事業所訪問等を通じて、当該事業所はもとより業種、職種、地域の特性等に関する情報を把握することが困難となっています。そのため、事業所から提出された求人票の内容以上の情報が把握できていないことも指摘されています。
求人情報自己検索システムの導入が進み、求職者は求人票を十分閲覧することは可能になりましたが、公的職業紹介機関が、求職者の期待に応えて質の高い相談・紹介機能を発揮するためには、求人票以上の求人事業所等に関する情報を得ることが重要となっています。実際、求職者からは求人企業に関する様々な情報を求められるケースが多く、できる限り職員自らが事業所に赴き、業種、職種あるいは個別企業の実情に精通しておくことが求められます。また、こうした事業所訪問等を重ねることが、職業安定行政職員の生きた「専門性」を高めることにつながり、このことが求職者(労働者)の立場に立った「求人側とのやりとり」(求人条件の緩和要請など)を可能にします。
従来、職員には基礎研修、上級研修のほか、障害者雇用等の専門分野についての研修が行われていますが、絶えず変化する労働市場の実情に応じた業務を行うためのより充実した研修、労働基準・雇用均等行政分野の十分な研修が行われる必要があります。加えて、都道府県労働局としての総合性・一体性を高める観点からも、各行政分野との組織的連携が求められています。
なお、求職者自らが求人の選定を行う「求人自己検索システム」「しごと情報ネット」に頼った求職者の「自主的な求職活動」は、前述の求職者(労働者)と求人者(使用者)との「非対等性」にてらして、安易な職業選択や離職、転職の頻繁化を招く場合が少なくありません。この間、情報ネットワークの整備をはかってきたドイツやスウェーデンなどでは、他面において、圧倒的な行政体制(ドイツの職業紹介関係職員及び雇用保険関係職員は89300人(1994年)でわが国の約8倍の人員を擁している)を背景に、求職者への直接的なコミュニケーションによる充実した職業相談など、「職業紹介機能」の質を高める対応が同時にはかられています。

(2)「職業紹介・職業相談」を基軸にし、積極的な「求人開拓」を推進すること。

「適格紹介」に際して、安定所に提出されている求人ではマッチングが困難な求職者に対しては、積極的に個別求人開拓を行い、再就職に結びつけることが求められており、そのためには、職業相談部門と求人開拓部門のネットワーク(所内の情報共有のシステム等)の構築が必要です。職業相談部門では、きめ細かい職業相談を通じた求職者の職業資産、職業能力や希望の把握、求人開拓部門では、職業相談の過程で把握した求職者の能力や適性を求人者に十分伝えた上で求人条件を提示してもらい紹介を行うことで、マッチングの可能性を高めるとともに、離職を未然に防ぐことも可能となります。
こうした困難を抱えた求職者に限らず、日常的に求職者の状況を把握し、求人者(事業主)に対して説得する材料を揃え、事業主との意見交換を密にしながら効果的な求人開拓を行うことで、「適格紹介」を推進させることができます。

(3)「職業紹介・職業相談」を実効あるものとするため、労働市場の状況、本人の職業生活に対する展望や適性等に応じた「能力開発」を推進すること。

従来、求職者との十分な職業相談の結果として、職種転換等が必要な場合に公共職業訓練を行い、並行して「求人開拓・求人情報の提供」を行うことにより訓練終了後の就職をはかってきました。
しかし、この間、職業訓練の科目、定員、とりわけIT関連の委託訓練が大幅に増加しています。その結果、職員は訓練受講指示の優先順位の要件確認に追われ、受講希望者の訓練科目の適性を判断した上での受講指示、訓練修了後にむけた計画的な職業相談・求人開拓を行うことが困難になっています(この間の受講枠の急増は、十分な職業相談の結果でなく、受講が求職者からの「応募方式」となってしまい、科目によっては多数が殺到し、真に受講が必要な求職者に指示し得ないケースもあります)。
特に、IT関連の訓練は、「ワープロ・表計算ソフトが使える人は就職で有利」といわれた時代であれば有効でしたが、現在では就職に結びつく能力開発として不十分な内容のものが多く、訓練内容に問題を持つものが少なくありません。
また、雇用保険特別会計を財源として運用されている「教育訓練給付」はさらに本質的な問題点を持っています。公共職業訓練とは異なり、本人の意思により受講した訓練について給付を行うため、「就職に必要な能力開発」とは言い難い場合(趣味目的の受講など)にも支給されている現実があります。さらに、支給上限額が引き上げられると同時に、各施設の受講料が軒並み値上げされるといった事態も生じています。「これでは各種学校への支援ではないか。特別会計の無駄遣いではないか」との指摘も出されています。
こうした能力開発よりも、雇い入れ後に企業が「その企業で必要とする能力の開発」を行った場合の助成制度を作ることにより、企業の雇い入れを促進するとともに、労働者本人の実践的な労働能力を高めその安定を図ることが重要ではないでしょうか。

(4)「職業紹介・職業相談」を実効あるものとするため、求職者の立場に応じた「就職支援策」を充実させること。

近時、企業(求人者)は採用に当たって、「即戦力」かつ「解雇が容易」であって、「より安価な労働力」であることを求める傾向が強まっています。このことが、正社員のパート・派遣等への切り替えなど不安定就労を拡大させ、中高齢者の就職を難しくしていると同時に、職業経験・技能が比較的少ない若年者の就職をも困難にしています。
こうした情勢の下での、職業相談は、希望職種別、若年・高年別、長期失業者、障害者など個々の求職者の事情に応じたきめ細かな対応が必要となっています。
例えば、若年者は、職業生活に関する基本的知識(関係法令等を含む)、とりわけ業種・職種についての知識が不足しており、職業選択・応募先企業の決定にあたってより丁寧な相談が必要となります。高齢者に対しては、充実した職業相談を基軸に、雇用の拡大をはかるための制度的な支援が不可欠です。また、不況時にはもっとも厳しい状況におかれる障害者に対しては、雇用率の設定、未達成企業の納付金制度・公表制度や雇い入れに関する助成、施設・設備の整備に対する助成制度等があるものの、「障害者を雇用するより納付金を納めた方が安くつく」と言われる等、その内容は十分ではなく、拡充をはかるとともに、他省庁とも連携し障害者の雇用にむけた社会の意識改革に力を入れる必要があります。

(5)求人情報等を管理している「総合的雇用情報システム」の抜本的な改善とともに求職者のプライバシー保護の観点から庁舎の環境改善をはかること。

求人情報等を管理する現在の「総合的雇用情報システム」は、処理速度が遅く求職者からの質問に瞬時に応じることができないなどシステム上の不十分さがあり、早急に改善する必要があります。また、職業相談、求人開拓、採否確認などを通じて把握した求職者情報、求人情報をプライバシー保護に十分配慮しながら蓄積することによって、より質の高い相談・紹介に結びつけることが求められています。あわせて、相談者のプライバシーを守り、落ち着いた職業相談を実現するためには、現状の庁舎スペース等はあまりにも不十分であり、少なくとも民営職業紹介所に課している基準(例えば、「求人者、求職者の個人的秘密を保持しうる構造であること」など)と同等の相談スペースを確保する必要があります(実際、職業相談の内容が順番を待つ相談者や左右の相談者に筒抜けといった苦情が珍しくなく、当面、左右にしきりを設けたりBGM(音のカーテン)をながすなどの工夫も必要です)。

(6)厳しい雇用失業情勢に即して雇用保険制度を改善すること。

労働力は、地域間、職種間、産業間の移動が困難であるという特殊性を持っています。労働市場では、求職者(労働者)と求人者(使用者)とを適正に仲介する機能が十全に働かなければ、求職者は各自に適した職を得ることができないままに労働力を売り急がざるを得ません。
失業中の労働者の生活を一定期間保障することがなければ、労働者(失業者)は耐久力を失い、労働市場において、適職を選択していく力をなくしてしまうのです。換言すれば、公的職業紹介をすすめるにあたって、「適格紹介」と「給付期間の保障」は表裏の関係にあるのです。この「給付期間の保障」は、失業率が高まり労働力過剰の状況にあればあるほどその必要性は高まり、厳しさを増す雇用失業状態に相応しい「給付期間」へ延長することが必要です。こうした視点から見るならば、「離職理由」のみに着目し、「就職の困難度」を無視した本年4月の雇用保険法の「改正」は、失業期間が長期化している今日の雇用失業情勢に求められる対応に逆行するものと言わざるを得ません。当面、あまりにも高いハードルである特定受給資格者の「判断基準」と「確認資料」の見直しを行いながら、離職理由による所定給付日数の決定をやめる抜本的な法改正が必要です。

(7)職業安定行政に増員や大胆な既存業務の見直しをはかり体制を強化すること。

以上の実現をはかるためには、人的な補強が不可欠です。この間の雇用失業情勢の未曾有の悪化によって、本来行うべき業務が行い得なくなっている現状を直視し、早急に職員の大幅な増員をはかる必要があります。
同時に、従来の業務のあり方を抜本的に見直す必要があります。
効果の薄い業務・助成金制度は積極的にスクラップすることが必要です。例えば、「1日所長」など、単に制度・月間等を周知するためだけに行うお祭り的なイベントは廃止すべきです。まして「実績づくり」や「予算消化」が自己目的となっている業務などは直ちに中止すべきです。

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2 安易なリストラを防ぎ、雇用の流動化に一定の歯止めをかけること。

(1)一方的なリストラ(解雇、出向、配転など)を規制する実体法を整備すること。

解雇については、現行法上、一定の解雇制限事由(労基法第19条、育介護第10条等)と解雇の手続き(労基法第20条等)が定められており、いわゆる不当解雇や整理解雇等の効力等をめぐっては、判例上、「解雇権濫用法理」や「整理解雇四要件」が確立しています。
しかしながら、多くの労働者にとって、解雇をめぐって自ら訴訟を提起することは、(a)訴訟費用等の経済的負担が困難なこと、(b)迅速な解決が期待できず、長期間、訴訟当事者となることに不安があること、(c)訴訟を提起することが再就職に不利に作用すること、(d)必要な証拠のほとんどを使用者が保管しており、立証が困難なこと、(e)職場復帰を前提としない損害賠償請求等の理論が未成熟なことなどの事情から、これを躊躇せざるを得ない場合が圧倒的です(労働基準監督署に来訪される相談者も、訴訟には消極的で、「せめて解雇予告手当の支払いを求めたい」とするケースが多い)。
要するに、解雇をめぐる争いについては、一定の裁判規範が存在するものの、それ自体不十分な面もあり、行政が適切に関与し得る根拠となる実体法が存在しないことから、事実上、解雇を規制する「規範」がないに等しく、多くの労働者が無権利状態のまま「泣き寝入り」しているのが現状なのです。
同様に、出向、配転、雇い止め等についても一定の「裁判規範」があるにすぎないのであり、実体法上の規制を行うことが求められています。
これらの規制を通じて、「リストラ」と称して横行している、本来、発生させてはならない「失業」を防止することが必要です。

(2)雇用維持をはかるための「企業内能力開発」への支援・助成をはかること。

9月20日に決定された「総合雇用対策」は、民間の就職支援会社(アウトプレースメント業者)を利用して、再就職援助計画の対象者(被解雇者)の再就職の取組みを行う事業主への助成金を創設し、就職支援会社の活動範囲の拡大を側面から支援しています。
また、再就職援助計画の対象者は、自己就職でも再就職支援型特定求職者雇用開発助成金の支給対象とするとともに、職業能力開発も最優先となり、雇用保険も特定受給資格者として所定給付日数が決定されることになります。これでは「どうぞリストラを行ってください」と言わんばかりです。
さらに、「総合雇用対策」では、中高年齢者を受け入れる子会社等に対して助成を行うなど、「労働移動を支援する」と称して、リストラ(子会社への出向など)を促す助成制度が目白押しです。
他方、企業内で雇用の維持をはかる助成金としては、雇用調整助成金があります。賃金助成のほか、当該事業所における職業に関する知識、技能又は技術を習得させ、又は向上させることを目的とする教育、訓練、講習等に対して助成を行うものですが、今、こうした当該企業内において雇用の維持をはかる目的で、企業内の能力開発を支援・助成することが重要となっていると考えます。

(3)「規制改革」の名による労働法制の改悪を行わないこと。

経済財政諮問会議が9月21日にまとめた「改革先行プログラム」は、(a)中高年齢者を派遣労働者とする場合の派遣期間の上限を1年から3年へ延長、(b)労働者派遣、有期労働契約、裁量労働制の見直し(3年派遣が可能な専門的業務の拡大、紹介予定派遣制度の運用見直し等)、(c)職業紹介事業の抜本的緩和(求職者からの手数料徴収規制の緩和等)、などを盛り込んでいます。また、これに先だって、総合規制改革会議が7月24日にまとめた「重点6分野に関する中間取りまとめ」は、(a)職業紹介規制の抜本的緩和(無料職業紹介事業での許可制から届出制への移行等)、(b)派遣労働者の拡大(派遣期間の延長や「物の製造」の業務の解禁等)、(c)有期雇用契約の拡大(上限3年を5年に延長や要件緩和)、(d)裁量労働制の拡大(専門業務型の拡大や企画業務型の見直し)、(e)ホワイトカラーの労基法適用除外や解雇の基準・ルールの立法化など、現行の労働法制の根幹を揺るがす「改革」を盛り込んでいます。
このうち、労働者派遣期間の延長、職業紹介事業の緩和、有期雇用契約の拡大などは、「雇用対策」と位置づけられていますが、いずれも雇用維持モデルの一形態であった「長期雇用システム」を急速に破壊するおそれがあります。すなわち、多くの企業が人件費削減をねらい、長期雇用(期間の定めのない労働契約)の労働者を削減する一方で、多くの派遣労働者、有期雇用労働者を雇い入れている実態にてらすならば、これらの措置は、求人を増やし雇用を拡大するどころか、いたずらに雇用の流動化・不安定化と労働条件の低下を招来させる「効果」しかもち得ないことは明らかです(安定所の窓口では、直接雇用で月15万円であった求人が、請負で月13万円(1年契約)の求人へと変わっていく状況を目の当たりにしています)。また、派遣元事業者の多くが安定所に求人を提出したり、民営職業紹介事業者が安定所に求人を提出している事業所を「求人開拓先」としている実態は、こうした事業の拡大が決して雇用を創出しないことを表しています。
また、有期雇用契約の拡大は、契約の更新を行わない「雇い止め」という形で、解雇濫用法理等をまぬがれながら、事実上の解雇、不利益変更をフリーハンドで進めたいとする使用者側の思惑を実現させるものにほかなりません。また、派遣労働者の拡大は、そのねらいが幅広い職種での人件費の削減にある以上、求人条件の悪化をまねき、生活水準の維持を願う労働者とのミスマッチを広げることになります。
一部に雇用の流動化を労働者のニーズととらえる主張があります。しかしながら、安定所で毎日のように聞かれる「何かいい仕事はありませんか」との言葉は、何よりも「安定した就職先」を求めているのであり、パートや派遣などの不安定雇用は、第2、第3のやむを得ない選択にすぎないのです。
失業率が急速に高まり、雇用不安が広がっている今日、雇用の流動化に一定の歯止めをかけることが求められており、これに逆行する「規制改革」は直ちに中止すべきです。

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3 労働条件の底割れを防ぎ、勤務条件を改善していくこと。

(1)労働条件の改善にむけた監督指導を強化すること。

有効求人倍率に見られる求人数の低迷に加え、公共職業安定所の窓口の実態にてらすならば、深刻な雇用情勢の最大の要因は、労働条件の「底割れ状態」によるミスマッチ、すなわち、求職者の決して法外でない「求職条件」と「求人条件」にきわめて大きな隔たりがあることです。特に賃金面でのミスマッチは、労働者(家族を含む)に生活水準を切り下げを強いることとなり、これを拒むことは失業状態の継続を意味するという「隘路」に立たせることにほかなりません。
従って、労働条件の改善にむけた監督指導を強化し、全体として公共職業安定所で受理する求人の「求人条件」の質を上げていくことが重要です。そのために、職業安定行政とともに、労基法、安衛法等の施行を所管する労働基準行政、均等法、育介法等の施行を所管する雇用均等行政との緊密な連携の下に、最低労働条件の確保をはじめとした積極的でねばり強い指導を進める必要があります。

(2)求人広告への規制と労働条件の明示義務履行にむけた指導を強化すること。

求人条件と採用後の労働条件の相違が要因となり、再び離職(自己退職)をまねくことが少なくありません。このようなトラブルが生じるのは、(a)求人行為があくまでも契約申し入れの勧誘にすぎず、それ自体、使用者側に義務を発生させるものではないとされていること、(b)求人広告の内容自体が曖昧な場合(委細面談など)が多いこと、(c)労働契約の締結以前に、採用後の労働条件の明示が不十分である場合が少なくないことなどがあります。
従って、業界の「自主規制」の枠組みから、実効ある法規制への強化が必要です。そこでは、(a)賃金、労働条件など基本的な必要事項を定めること、(b)求人条件を下回る労働条件で労働契約を締結する際に文書で労働条件を明示することを怠った場合には求人条件で労働契約が締結されたものとみなすこと、(c)労働基準行政との連携の下、労働条件の明示義務の履行にむけた公共職業安定所の指導体制と権限を強化することなどが必要です。

(3)雇用法制(職安法、派遣法等)の遵守にむけた公正かつ機敏な対応をはかること。

買い手(使用者)と売り手(労働者)が対等な関係にない労働市場での「契約」を媒介する事業(労働者派遣事業、民営職業紹介事業等)には、労働者の権利を守るという公共性が強く求められています。
職業紹介事業については、現行法の遵守を通じて、(a)求職者に「適格紹介の原則」を貫くこと、(b)求職者に「公平性の原則」を貫くこと(求職者を選別してはならない)、(c)労使に対して中立であること、(d)職業紹介の権利性にてらして求職者に無料であること(所得の高い者に有利に、低い者に不利になってはならない)などが求められています。
また、労働者派遣事業については、現行法の遵守を通じて、(a)常用雇用の「代替」としてはならないこと、(b)適正な契約内容を担保し、派遣労働者の権利を守ることなどが求められています。
しかしながら、職業紹介事業については、取り扱う求職者を限定した上で、(a)事実上の中間搾取(形式上、6ヶ月ごとに契約をうち切り手数料を徴収し続ける)が横行している、(b)アウトプレースメント業は再就職促進よりもリストラ促進に主眼がおかれていることなどが指摘されています。また、労働者派遣事業については、(a)無許可・無届出の派遣元事業者が急増している、(b)「請負」を偽装した対象業務以外への「派遣」が横行しているなどが指摘されており、これらを適切に監督指導していくことが求められています。特に、「偽装請負」に対する取締まりの強化は急務であり、派遣対象業務の拡大にむけた既成事実づくりとなっている側面(これを認めて規制した方が「よりまし」という論法)を見逃さない対応が必要です。
また、監督指導の強化にむけては、都道府県労働局における職業安定行政、労働基準行政、雇用均等行政の連携を強化するとともに、都道府県労働局に司法警察権を持った派遣事業監督官(仮称)などを配置し、罰則の適用を含む機敏で実効ある対応の強化が求められます。

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4 雇用を創出と労働時間短縮(ワークシェアリング)の推進

(1)時間外労働の規制、年休消化などを通じて労働時間短縮(ワークシェアリング)を推進すること。

労働時間の短縮が、ワークシェアリングの効果を持ち雇用の創出にむすびつくことは諸外国の例からも明らかです。例えば、フランスでは1998年に施行された「週35時間制」によって新たに数十万人の雇用が生まれたと指摘されています。
わが国では、労働基準法に「週40時間制」が明記されているものの、時間外労働に厳密な意味での上限はなく、「過労死」「過労自殺」が社会問題となるほどに、長時間労働が蔓延しています。
こうした長時間労働を削減し、雇用を増やすためには、それを促す諸制度と所管する行政体制の確立が重要であり、時間外労働の大幅削減、年次有給休暇の取得促進、各種休暇制度の拡充にむけた対策が重要となっています。
特に、いわゆるサービス残業の根絶については、ワークシェアリング以前の問題であり、省の最重点の課題と位置づけることを内外に宣言し、労働基準監督官の大幅増員などにより監督指導を強化することが重要です。
また、時間外労働の削減にむけては、これが進まない要因に目をむける必要があり、「新たに人を採用するより、割増賃金を支払ってでも時間外労働をさせた方が安くつくしくみ」を改めることが求められているのです。その意味で、先進諸外国と比較してあまりに低い法定割増賃金率を引き上げ(国際水準に即し、時間外50%、休日100%)と算定基礎の見直し(賞与を含めるなど)が急務です。
また、取得率50%以下という年次有給休暇の取得状況を改めるための労働基準監督署等による指導強化が急務です。

(2)緊急地域雇用特別交付金の拡充とともに、公的部門での安定的な雇用創出をはかること。

景気の低迷が続き、一部の産業では「空洞化」が進行する中で、当面、雇用量全体を維持するため、国民生活の充実をはかる立場から、地域の実情に即した公的就労対策を推しすすめることが求められており、現行の緊急地域雇用特別交付金制度の拡充(失業者雇用の明確化、対象業務の拡大、交付金の増額、就労期間の延長等)が急務です。
また、国家公務員の定員削減計画(2001年度から10年間で25%削減)を凍結するとともに、労働、福祉、医療、防災、教育などの公的分野(国民生活分野)で、安定的な雇用創出をはかることが求められています。具体的には、職業相談等の充実に伴う公共職業安定所職員の配置、労働者の権利救済等の強化に伴う労働基準行政職員及び雇用均等行政職員の配置、保育施設の増設等に伴う保育士等の要員配置、小中学校での30人学級実現のための教員配置、老人医療・福祉施設の拡充等に伴う看護婦や介護士等の配置、等が急務です。
なお、現行の開業・創業支援を目的とした助成金については、景気が低迷し、消費が縮小傾向にあるなかで、競争力の低い新規参入者が成功することは困難な場合が多く、ベンチャー・新規成長分野などの呼び声は高いが成功例がどれだけあるのか疑問があります。

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5 エージフリー社会に向けた環境整備

21世紀初頭には、全人口の約5人に1人が65歳以上、労働力人口の約4人に1人が55歳以上になる「超高齢化社会」の到来が見込まれており、労働力人口の構成が大きく変化する中で、企業の側に如何なる対応が求められているのかを的確にさし示すことが求められています。
こうした情勢を受けて、「改正」雇用対策法の施行(本年10月1日)によって、事業主の募集・採用における年齢制限の緩和の努力義務が規定されるとともに、この努力義務に事業主が対応する場合の「指針」が定められています。高齢化が急速にすすみ、労働力人口の「構成」が大きく変化する中で、募集・採用での年齢制限を課すことは、中高年者に対して就職活動の「入り口」を閉ざすもので、こうした施策の推進は重要です。
しかしながら、賃金決定の要素に「年齢」が考慮されている場合が少なくありません(この場合、「指針」により努力義務は適用除外)。そして、賃金決定における「生計費」の重要性に照らすならばそのことを全く否定することはできません。むしろわが国では、各種社会保障制度の不十分さから、中高年者にかかる教育費、医療費などの負担が重く、賃金決定の要素に「年齢」を加味して「生計費」を反映した賃金制度を設けることは実情に即したものと言えます。
そうである以上、募集・採用における年齢制限をなくす前提として、中高年者の生計費を軽減する社会保障制度の拡充をはかるなど、あらためて総合的な対策を確立する必要があります。
当面、「改正」雇用対策法の指導を、求人票の記載のみをとりつくろうなどの対応(求職者にとっては、応募はできるが不採用となり原因がわからないという無意味な悪循環を強いられる)に止まらせず、実効あるものとするため、中高年者(特に高齢者)の雇用を促進するための助成措置を先進諸外国の高い水準にも即して拡充することが急務となっています。

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