働き方・労働法制 −労働時間、賃金、安全衛生、労災補償など

2009年 12月
ILO187号条約と労働安全衛生の新しい展開
(財)東京社会医学研究センター理事 村上剛志

◇はじめに

 ILO条約は、1919年のILO設立以来、188の条約と196の勧告を採択し、労働者の保護のための国際労働基準を確立してきました。ILOの90年の歴史をみると、大きくわけて第一次世界大戦後の1919年から第二次世界大戦まで、1944年のフィラデルフィア宣言(労働は商品ではない)から21世紀まで、21世紀を臨んだILOの「労働の基本的原則」と21世紀戦略としての「Decent Work」「働きがいのある人間らしい労働」の3つの時期に区分ができると思います。
この間、日本は43の条約を批准していますが、ご承知のように18ある労働時間条約は一つも批准してきませんでした。私は信州大学の講師をして、「労働時間をめぐる政策と運動」などについて講義をした関係から(平凡社刊:「なぜ日本人は働きすぎるのか」参照)、ILO問題に関心を払ってきました。その上で、「ILO号条約の批准をすすめる会」の一員として大月書店から「国際労働基準で日本を変える―ILO活用ハンドブック」を出版(共著)し、継続的に日本の労働者にILO条約の重要性を訴えてきました。
こうした中で、全労働省労働組合が、フィラデルフィア宣言の「労働は商品ではない」をメインスローガンに「労働法制の規制緩和」を強く警告し、労働者にその本質を訴えて運動を進めていたことに心から敬意を表していました。こうした運動によって、「労災保険の民営化」「ホワイトカラー・エグゼンプション」「ハローワークの民営化」の導入が見送られてきたことは心強い限りでした。
労働時間条約の未批准は今日のわが国の労働者の労働と生活・健康に大きな影響を与えていますが、批准している条約はものすごい威力を発揮することを知っています。
即ち、81号条約の労働監督制度、87号条約・98号条約の団結権・団体交渉権、156号条約の家族的責任を果たす条約、162号条約の石綿条約などです。81号条約の労働監督制度の条約は、この条約が、いままさに公務員削減攻撃の中でも、光を放っているものと確信していますし、「行政改革」の中でも、この条約の本当の実現を世論に強く訴えていく必要があると思っています。
こうした中で、2007年7月に、画期的な187号条約の批准がされました。これは労働安全衛生行政の中で働く方々にとっても、わが国のすべての労働者にとっても大きな意義をもつ批准だと思います。
以下その意義を述べるとともに、批准後のこの2年間に起きている安全衛生の新たな前進的情勢について触れたいと思います。

◎2007年7月 日本がILO187号条約(安全衛生の促進的枠組み条約)を批准

 2007年7月24日、日本政府は前年の2006年にILOで採択された「安全で健康な労働環境を促進する労働安全衛生の枠組み条約」を批准しました。
この187号条約につては日本が世界で最初の批准国となりました。つづいて韓国が批准し、現在批准国数は12ヵ国となりました。この187号条約の批准はわが国の労働者にとって衝撃的な出来事でした。というのも、ご承知のように第1号条約をはじめ18あるILOの労働時間条約について、日本は一つも批准していないからです。この労働時間条約の未批准が、過労死・過労自殺の要因となっているのは間違いありません。
いっぽう労働安全衛生に関するILOの条約は25ありますが、2005年の石綿条約の批准を含めて9条約を批准していました。
この187号条約の批准に向けて、いろいろなことが事前に行われていました。一つは2007年4月24日にILO駐日事務所が主催して、「労働安全衛生世界デー」の一環として、「グローバル化とILO187号条約が日本とアジアの職場環境改善にもたらす意味」というフォーラムを開催していたことです。
二つ目は、2006年に改正された「労働安全衛生規則」がILOの労働安全衛生マネジメントシステム(OSHMS)の手法をとり入れ、安全衛生の計画(Plan)、実行(Do)、評価(Check)、改善(Act)のPDCAサイクルを規則に反映させていたことがあります。
この187号条約の批准は後述するように様々な安全衛生の前進的情勢・新しい展開を生み出しています。

◎国内政策、国内システム、国内プログラムの策定を通じて労働安全衛生を継続的に向上させる

 この187号条約の前文では「労働安全衛生を国の優先課題として確保する」として、「予防的な安全衛生文化の醸成と安全衛生のためのシステムアプローチの確立」をめざしています。同条約は各国で批准されやすいように、?定義、?目的、?国内政策、?国内制度、?国内プログラムの5条からなる簡素なものとなっていますが、わが国の労働者の安全と健康の確保にとってきわめて重要なものとなっています。
187号条約の?定義の中心の「安全衛生に対する予防的な国民文化」とは「安全で衛生的な労働環境に対するあらゆる権利があらゆる段階で尊重される文化」であるとし、「政府・使用者・労働者が安全で衛生的な労働環境の確保に積極的に参加し、予防の原則が最優先課題とされることをいう」としています。そして、「国は安全衛生に関するそのシステムとプログラムにより安全で健康的な作業環境を前進的に達成しなければならないとしています。
4条は、「国のシステムで加盟国は労使と協議して労働安全衛生に関する国のプログラムを作成すること」としています。すなわち、国は安全で衛生的な環境の確保を図り、予防の原則を政策の最優先課題とさせること、そのために労使と協議することとしたのです。
この187号条約はともすれば停滞がちであった安全衛生活動に大きな前進面を切り開くこととなりました。いま労働者が直面している様々な課題、過労死、過労自殺、じん肺・石綿による健康障害、重大災害、あらゆる職業病の撲滅に対し、労働者が積極的に関わる大きな素地ができたのです。すでにその萌芽が現れています。

 

◎2007年12月 文部科学省 「公立学校の労働安全衛生管理体制の整備について」を通知

 長らく労働安全衛生法の空白地帯であった学校に変化が起こり始めています。これまで、文部科学省は、2005年にメンタルヘルス対策で、2006年に労働安全衛生法の改正で、事業者である教育委員会にその遵守と徹底を図るよう通知をしていましたが、2007年12月には、上記名のタイトルで次のような通知を全国の教育委員会に出しています。

 「学校教育の可否は、教職員に負うところが極めて大きいことから、教職員が意欲と使命感をもって教育活動に専念できるよう、適切な労働環境を確保することが重要です。しかしながら、学校における労働安全衛生法に基づく体制については、いまだに十分に整備されていない状況にあります。こうした現状を是正していくため、今回の調査を行い、事業者である教育委員会において、体制整備の必要性及び関係法令等についての理解が不十分であることが課題として明らかになりました。このため、学校の設置者である都道府県及び市町村教育委員会においては、自らが労働安全衛生法上の事業者であるとの自覚を持ち、労働安全衛生管理体制の整備の必要性及び関係法令等について十分理解するとともに、産業医の選任については、地方財政措置を活用するなど、労働安全衛生管理について体制の速やかな整備とその適切な実施を図ることが求められます」

 この通知に基づいて、全国の各県教育委員会で長時間労働による過重労働防止対策要綱の作成が始まっています。教育委員会関係でとくに内容が目立ったものに、滋賀県、兵庫県、島根県のものがあります。
今年の1月に私が招かれた佐賀県でも2008年12月に県の教育庁が「労働安全衛生の手引き」を作成しています。愛知高教組では、各学校での安全衛生委員会の他に、県全体の総括安全衛生委員会ができていますが、その中に労働時間短縮のための調査部会が設置され、労使同数の代表による、労働時間の縮減についての検討が始まっています。さらに、仙台や長野では振り替え時間の徹底が合意され、京都ではメンタルヘルス休職者の職場復帰の進め方が合意されるなど安全衛生活動が進んできています。

 

◎ILO・ユネスコ共同委員会が人事評価制度に関して日本政府に是正勧告

 こうした文科省の通知とともに、実は文科省はILO187条約を批准した年の2007年12月に、全教などが、文科省や東京都教育委員会の人事評価制度、不適格教員の問題で、「教員の地位に関するILO・ユネスコ勧告」(1966年)に違反するとしてILO・ユネスコに申し立てていた件で、ILO・ユネスコ共同委員会の訪日調査の受入れを表明していました。私はこの受入れ表明も187号条約が反映していると見ています。
そして、この訪日調査団は、文科省や各地の教育委員会、日教組、全教などのヒアリングを行い、政府と教育委員会に対し、一方的な人事評価制度を改め、教職員組合と協議するよう求める是正勧告を2008年12月8日に出しました。
この是正勧告は各県の教育委員会で勧告の遵守の動きとなってあらわれています(愛知・香川)。こうした情勢にともない、現在の教員の4%の調整給をあらため、野放しになっている残業問題を是正するための検討会議が2008年の5月から9月まで文科省によって開かれました。なんとこの検討会議には、全教、日高教、日教組がヒアリングを受け、その内容が「審議のまとめ」として、2008年9月に発表されています。
この「審議のまとめ」では従来の教職員の労働時間については労基法37条が不適用になっているだけであり、それ以外は労基法の適用を受けていると指摘し、教育現場に誤解が生じていたとも断言しています。また、独立行政法人化された国立大学の長崎大学の附属小・中学校では残業代が不払いであるとして長崎労働基準監督署が是正勧告をしました。さらに長時間残業が安全配慮義務違反として申立てた京都市教祖の損害賠償請求裁判では、大阪高裁で10月1日に新たに2名の教員の損害賠償が命じられました。このようにILO187号条約により、わが国の労働安全衛生法に新しい展開が生まれています。この「教員の地位に関するILO・ユネスコ勧告」が尊重されるならば、わが国の教職員の健康が守られるばかりでなく、大阪の橋下知事に象徴される歪んだ成績主義の教育観を是正することに連なります。

 

◎労働契約法で「安全配慮義務」が明記される

 このように、ILO187号条約の批准による安全衛生の具体化が進んでいますが、2008年3月1日に施行された労働契約法にも、安全配慮義務が明記されました。
労働契約法5条では、「労働者の安全への配慮」として「使用者は労働契約に伴い、労働者がその生命・身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする」と規定しています。民法では労働者への不法行為を示していますが、労働契約法でも、使用者の安全配慮義務が明記されたのでした。

 

◎2008年6月 「労働安全衛生ソウル宣言」が発表される

こうしたILO187号条約の採択につづいて2008年6月に行われた第18回の世界労働安全衛生会議では、この187号条約をさらに豊かにする「労働安全衛生ソウル宣言」を発表しました。
このソウル宣言では「高い水準の労働安全衛生の推進は社会全体の責任であり、労働安全衛生が国の政策課題の優先事項となるよう確認し、国の予防的安全衛生文化を構築し、保持することによって、社会のすべての構成員がこの目標の達成に寄与すべきこと」と安全衛生の基本的事項を示しています。
そして、政府・使用者・労働者について、以下のよう行うべき責務を明らかにしています。

〔政府は以下を行うべきこと〕
・国の労働安全衛生事情を体系的な形で改善していく手段として、まず優先的にILOの2006年の職業上の安全及び健康促進枠組み条約(第187号)を、そしてそれ以外の労働安全衛生に関するILO諸条約の批准を検討し、これらの規定の実行を確保すること。
・国の予防的安全衛生文化が形成され、高められるよう継続的な行動を確保すること。
・強力かつ実効性のある高い安全衛生基準執行のための十分かつ適切な仕組みを通じて、労働者の職業上の安全と健康が保護されるよう確保すること。

〔使用者は以下を確保すべきこと〕
・職場における高い安全衛生基準と良好な事業成績は手を携えて進むものであるため、予防を企業活動の一体的な部分とすること。
・職場の安全衛生向上にむけて、実効性のある形で労働安全衛生マネジメントシステムを確立すること。

〔労働者は以下を行うべきこと〕
安全かつ健康的な作業環境を享受する労働者の権利を主張するものとして、労働者は安全及び健康に関する事項について協議を受け、以下を行うべきこと。
・個人保護具の利用に関するものを含み、安全及び健康に係わる指示及び手順に従うこと。
・安全衛生研修や啓発活動に参加すること。
・職場における自分たちの安全と健康に係わる措置において使用者に強力すること。

 このように2007年にILO187号条約が批准されて以降、労働安全衛生の前進的状況をつくり出しています。

◎2006年の「労働安全衛生規則」の改正の意義

 その意味で、私は2006年の「労働安全衛生規則」の改正は187号条約批准に向けた準備をしたと見ています。この改正では前述したようにILOの2001年総会採択の「ILOの労働安全衛生マネジメントシステムに関するガイドライン(OSHMS)の手法がとり入れられています。このガイドラインはその目的として「危険有害要因から労働者を保護し、作業に関連した負傷、不健康、職業的疾病、事故及び死亡災害の根絶に寄与する事である」と明記しています。そして「労働安全衛生は、国内法令に則った安全衛生の要求事項の遵守を含んだものであるとともに、使用者の責任でもあり、義務でもある」。「使用者は事業場における安全衛生活動に強力なリーダーシップと責任を示すとともに、OSHMSの確立のための適切な仕組みづくりを行う」というものでした。
このOSHMSの「方針、組織化、改革と実行、評価、改善措置」が2006年に改正された「労働安全衛生規則」にとり入れられたのです。すなわち、「総括安全衛生管理者が総括管理する業務」(3条の2)、「安全委員会の付議事項」(21条)、衛生委員会の付議事項(22条)でした。そして、改正された「安全衛生規則」で安全衛生委員会の審議事項である「過重労働防止対策の樹立」「メンタルヘルス対策の樹立」「安全衛生委員会の周知徹底」「長時間残業者の面接指導」がいま、全国の安全衛生活動に大きな力を発揮しています。

◎労働安全衛生の前進的な情勢に確信をもって

 私は、この間全国の教職員組合に招かれて、安全衛生活動の大切さを訴えてきました。日本が187号条約を批准した同じ年の丁度2007年の7月に教育ネット社から発刊した「学校にローアンの風を」が187号条約の追い風を受け、学校でのローアン活動の活発化に大きな役割を果すことになりました。昨年は首都圏のみならず松江、仙台、京都の各教組に招かれましたが、今年は佐賀教組、長崎高教組、岐阜教組恵那支部、大教組、大阪府高教にも招かれました。そこでお話ししていることは、「長い間、安全衛生活動が進んでいなかった面がありましたが、いま新たな前進的な情勢を作られ始めています。この情勢に確信をもって思いっきり労働安全衛生法を活用しよう」ということです。佐賀では即ちに措置要求を行い、休養室の設置、面接指導を実現しました。
この187号条約の、予防を国の最優先課題とする条文とそれを実現するために労使で協議してシステムとプログラムを確立するという条文は本当にいまのわが国の労働者にとって大切な条文です。
私は労働安全衛生の新たな展開として、この187号条約の実践を進め、過労死、過労自殺、じん肺、アスベスト災害、重大災害のない労働環境づくりをよびかけています。日本労働弁護団が提言している「過労死防止法案」も、こうした運動の中で実現していけると思います。労働時間条約や155号条約(労働安全衛生)171号(夜勤規制)を批准させ、労働者の安全と健康を守る政策を打ち立てていくことが重要だと考えています。ILO187号条約が、これらの運動をすすめる強力な基盤となる筈です。

【参考】職業上の安全及び健康を促進するための枠組みに関する条約(第187号)
(日本は2007年7月24日批准登録)

 国際労働機関の総会は、理事会によりジュネーブに招集されて、2006年5月31日にその第95回会期として会合し、職業上の負傷、疾患及び死亡の世界的な規模並びにこれらを減少させるために更に措置をとることの必要性を認識し、雇用から生ずる疾病、疾患及び負傷に対する労働者の保護が、国際労働機関憲章に規定する国際労働機関の目的に含まれることを想起し、職業上の負傷、疾患及び死亡は、生産性並びに経済的及び社会的発展に悪影響を及ぼすことを認識し、国際労働機関が、すべての職業における労働者の生命及び健康の十分な保護を達成するための計画を世界の諸国間において促進する厳粛な義務を有する旨を規定するフィラデルフィア宣言の3(g)の規定に留意し、1998年の労働における基本的な原則及び権利に関する国際労働機関の宣言並びにその実施についての措置に留意し、1981年の職業上の安全及び健康条約(第155号)、1981年の職業上の安全及び健康勧告(第164号)その他職業上の安全及び健康を促進するための枠組みに関連する国際労働機関の文書に留意し、職業上の安全及び健康の促進が、すべての人に対する適切な仕事の確保という国際労働機関の課題の一部であることを想起し、世界的な戦略としての職業上の安全及び健康の分野における国際労働機関の基準に関連する活動についての結論(国際労働機関の総会が2003年のその第91回会期において採択したもの)、特に国内の課題において職業上の安全及び健康を優先させることを確保することに関連するものを想起し、各国の安全及び健康に関する危害防止の文化を継続的に促進することが重要であることを強調し、会期の議事日程の第四議題である職業上の安全及び健康に関する提案の採択を決定し、その提案が国際条約の形式をとるべきであることを決定して、次の条約(引用に際しては、2006年の職業上の安全及び健康促進枠組条約と称することができる。)を2006年6月15日に採択する。

? 定義

第1条
この条約の適用上、
(a)「国内政策」とは、1981年の職業上の安全及び健康条約(第155号)第四条に規定する原則に従って定める職業上の安全及び健康並びに作業環境に関する国内政策をいう。
(b)「職業上の安全及び健康に関する国内制度」又は「国内制度」とは、国内政策並びに職業上の安全及び健康に関する国内計画を実施するための主要な枠組みを提供する基盤となる制度をいう。
(c)「職業上の安全及び健康に関する国内計画」又は「国内計画」とは、所定の期間内に達成すべき目的、職業上の安全及び健康の改善のために定める措置の優先順位及び手段並びに進展を評価する手段を含む国内計画をいう。
(d)「各国の安全及び健康に関する危害防止の文化」とは、安全かつ健康的な作業環境についての権利がすべての段階において尊重され、一定の権利、責任及び義務に関する制度を通じて政府、使用者及び労働者が安全かつ健康的な作業環境の確保に積極的に参加し、並びに予防の原則が最優先される文化をいう。

? 目的

第2条
1 この条約を批准する加盟国は、最も代表的な使用者団体及び労働者団体と協議した上で国内政策、国内制度及び国内計画を定めることにより、職業上の負傷、疾患及び死亡を予防するために職業上の安全及び健康を不断に改善することを促進する。
2 加盟国は、職業上の安全及び健康を促進するための枠組みに関連する国際労働機関の文書に定める原則を考慮に入れた上で、職業上の安全及び健康に関する国内制度及び国内計画を通じて安全かつ健康的な作業環境を漸進的に達成するための積極的な措置をとる。
3 加盟国は、最も代表的な使用者団体及び労働者団体と協議した上で、職業上の安全及び健康に関連する国際労働機関の条約を批准するためにいかなる措置をとることができるかを定期的に検討する。

? 国内政策

第3条
1 加盟国は、国内政策を定めることにより、安全かつ健康的な作業環境を促進する。
2 加盟国は、すべての関連する段階において、安全かつ健康的な作業環境についての労働者の権利を促進し、及び発展させる。
3 加盟国は、国内政策を定めるに当たり、国内事情及び国内慣行に照らし、かつ、最も代表的な使用者団体及び労働者団体と協議した上で、基本原則(例えば、職業上の危険性又は有害性を評価し、及びこれに根本的に対処すること並びに情報、協議及び訓練を含む各国の安全及び健康に関する危害防止の文化を発展させること)を促進する。

? 国内制度

第4条
1 加盟国は、最も代表的な使用者団体及び労働者団体と協議した上で、職業上の安全及び健康に関する国内制度を定め、維持し、漸進的に発展させ、及び定期的に検討する。
2 職業上の安全及び健康に関する国内制度には、特に、次のものを含める。
(a) 職業上の安全及び健康に関する法令(適当な場合には労働協約)及び他の関連文書
(b) 職業上の安全及び健康について責任を有する機関又は団体であって、国内法及び国内慣行に従って指定するもの
(c) 国内法令の遵守を確保するための仕組み(監督制度を含む。)
(d) 経営者と労働者又はその代表との間で行われる協力(職場に関連する予防措置の基本的要素であるもの)を企業の段階において促進するための仕組み
3 職業上の安全及び健康に関する国内制度には、適当な場合には、次のものを含める。
(a) 職業上の安全及び健康の問題を取り扱う国内の三者の間の諮問機関
(b) 職業上の安全及び健康に関する情報及び助言に係るサービス
(c) 職業上の安全及び健康に関する訓練の提供
(d) 国内法及び国内慣行に従って提供される職業上の健康に係るサービス
(e) 職業上の安全及び健康に関する研究
(f) 職業上の負傷及び疾患に関するデータの収集及び分析のための仕組みであって、国際労働機関の関連文書を考慮に入れたもの
(g) 職業上の負傷及び疾患を対象とする関連の保険制度又は社会保障制度との協力に関する措置
(h) 零細企業、中小企業及び非公式な経済における職業上の安全及び健康に関する状況を漸進的に改善することを支援する仕組み

? 国内計画

第5条
1 加盟国は、最も代表的な使用者団体及び労働者団体と協議した上で、職業上の安全及び健康に関する国内計画を定め、実施し、監視し、評価し、及び定期的に検討する。
2 国内計画は、
(a) 各国の安全及び健康に関する危害防止の文化の発展を促進する。
(b) 職業上の負傷、疾患及び死亡を予防し、並びに職場における安全及び健康を促進するため、国内法及び国内慣行に従って、かつ、合理的に実行可能な限り、職業上の危険性又は有害性を除去し、又は最小限にすることにより、労働者の保護に貢献する。
(c) 職業上の安全及び健康に関する国内の状況の分析(職業上の安全及び健康に関する国内制度の分析を含む。)に基づいて定められ、及び検討される。
(d) 目的、対象及び進展の指標を含む。
(e) 可能な場合には、安全かつ健康的な作業環境を漸進的に達成することを支援するその他の補完的な国内計画等によって補強される。
3 国内計画は、広く公表するものとし、可能な範囲で、最上級の国内機関により承認され、及び開始される。

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第6条
この条約は、いかなる国際労働条約及び国際労働勧告も改正するものではない。

第7条
この条約の正式な批准は、登録のため国際労働事務局長に通知される。

第8条
1 この条約は、加盟国であって自国による批准が国際労働事務局長に登録されたもののみを拘束する。
2 この条約は、2の加盟国による批准が国際労働事務局長に登録された日の後12箇月で効力を生ずる。
3 この条約は、その効力が生じた後は、いずれの加盟国についても、自国による批准が登録された日の後12箇月で効力を生ずる。

第9条
1 この条約を批准した加盟国は、この条約が最初に効力を生じた日から10年を経過した後は、登録のため国際労働事務局長に送付する文書によってこの条約を廃棄することができる。廃棄は、登録された日の後1年間は効力を生じない。
2 この条約を批准した加盟国であって1に規定する10年の期間が満了した後1年以内にこの条に定める廃棄の権利を行使しないものは、更に10年間拘束を受けるものとし、その後は、新たな10年の期間の最初の年に、この条に定める条件に従ってこの条約を廃棄することができる。

第10条
1 国際労働事務局長は、加盟国から通知を受けたすべての批准及び廃棄の登録についてすべての加盟国に通報する。
2 国際労働事務局長は、通知を受けた二番目の批准の登録について加盟国に通報する際に、この条約が効力を生ずる日につき加盟国の注意を喚起する。

第11条
国際労働事務局長は、国際連合憲章第102条の規定による登録のため、登録されたすべての批准及び廃棄の完全な明細を国際連合事務総長に通知する。

第12条
理事会は、必要と認めるときは、この条約の運用に関する報告を総会に提出するものとし、また、この条約の改正に関する問題を総会の議事日程に加えることの可否を検討する。

第13条
1 総会がこの条約を改正する条約を新たに採択する場合には、その改正条約に別段の規定がない限り、
(a) 加盟国によるその改正条約の批准は、その改正条約が自国について効力を生じたときは、第9条の規定にかかわらず、当然にこの条約の即時の廃棄を伴う。
(b) この条約は、その改正条約が効力を生ずる日に加盟国による批准のための開放を終了する。
2 この条約は、これを批准した加盟国であって1の改正条約を批准していないものについては、いかなる場合にも、その現在の形式及び内容で引き続き効力を有する。

第14条
この条約の英文及びフランス文は、ひとしく正文とする。

以上

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