働き方・労働法制 −労働時間、賃金、安全衛生、労災補償など

2009年 12月
労働保険適用徴収担当者座談会
−労災保険の適用・徴収をめぐる課題−

平成21年8月、都道府県労働局の徴収課・室で適用・徴収業務に携わる組合員(5名)に全労働本部役員を交え、労災保険の適用・徴収をめぐる課題や徴収事務センターの現状などについて話し合いました

◎労働保険事務組合の現状

:労働保険徴収法は昭和44年12月9日に公布(昭和47年4月1日施行)されて、ちょうど40年になりますが、本日は、同法や関連制度について、実務上の課題等をめぐって話し合っていただこうと思います。

:私は、労働保険事務組合を担当しています。ちょうど今年度更新の申告内訳書を審査していますが、中小事業主等で本当に労働者を雇っているのか直ちに判断できず、手が止まることがよくあります。

 例えば建設業ですが、中小業者は下請の専門工事業者のところが多く、毎年、一般労働者欄は保険料0円で更新しています。事務組合がきちんとしているところであれば、前年度までは中小事業主等で加入していても、労働者がいなくなれば一人親方への変更手続きをとっています。

 しかし、商工会や社会保険労務士事務所などで、担当者が制度を十分理解していないケースでは、加入から年数が経つ間に労働者がいなくなったけれども、そのまま中小事業主等で加入を続けているところがあるのです。後になり、労災補償給付の段階で明らかとなることがあります。徴収室での審査で、十分チェックはしていますが、ひょっとして確認漏れがあるのではないかと気になっています。私たちの指導が不十分なのかもしれませんが、特別加入制度をきちんと理解していない事務組合があることは、改善していかなければなりません。

 それと、特別加入者の加入状況の把握ですが、私のところでは、台帳を手書きしています。本省が特別加入システムを作っていますが、アクセスの更新は手間がかかって、結局使いづらいのが現状です。もっと、雇用保険の被保険者登録のようにOCR入力書式で把握できるようになると便利だと思いますが、なかなか、現場の意見が反映されません。

:私も実際に、労働者を雇用していない中小事業主等が被災し、その取扱いに困った経験をしたことがあります。中小事業主等の特別加入者が所定時間外に負傷をして、給付決定の段階で初めてわかりました。こうした場合、保険料は払い続けてきたのに、補償を受ける段階で加入要件を欠いていたということになり、ご本人とトラブルになります。事務組合が事業主に更新の意思を聞く際、加入要件に該当するかどうかは最低限の確認を行ってもらいたいものです。

:事務組合の運営については、いかがでしょうか。

:一人親方団体の中には、社会保険労務士が組合長や理事長などをしているところがあります。徴収法の主旨からすると、一人親方団体というものは、もともと団体があって、そこが社会保険労務士などに委託し認可を受けますが、このケースは受け皿ありきで、あとから加入者の開拓をしているようです。

 そうなると、制度の主旨にそぐわないことと、事務処理の上で監査等のきちんとした牽制体制がとれているのか疑問が付きます。

 事務組合を監査する行政側の体制も雇用保険監察官が数名配置されているだけで、十分とはいえません。事務組合監査のためには特別加入制度を含め、事務組合実務の全体を理解する必要があります。私たち基準行政の事務官は、労働基準監督署で労災保険の給付や適用の事務を通じて、これらを学びます。建設業の一括有期事業の考え方なども専門的なものです。こうした経験なしに担当になって監査に携わることはなかなか困難ではないでしょうか。雇用保険監察官と労働基準行政の事務官が、一緒に事務組合の監査に行くことで、充実した指導が行えます。

:そのとおりです。やはり監督署での労災補償業務の経験が、適用・徴収業務に大きく関わっていると思います。

 近年、適用・徴収業務を除く労働基準行政(監督、安全衛生、労災補償等)に携わる職員をすべて労働基準監督官とする採用事務が行われています。その一方で、適用・徴収業務には、これらの職員は原則配置しないというのです。その結果、労働局の徴収課・室には、今後、監督署の労災補償業務の経験を積んだ職員はいないこととなります。これは、適用・徴収職域の専門性の低下が生じ、大きなマイナスです。

 しかも、一人の監督官が監督業務に加えて署の労災補償業務や安全衛生業務まで担うとなれば、その職業人生からは、それほど長い期間労災業務につくことはできません。いずれ、労災補償の専門性の低下も生じるでしょう。

[人事採用の新たな枠組み…:労働基準行政分野には、労働基準監督官、厚生労働技官、厚生労働事務官がおり、これまで主として労災補償、適用・徴収分野は事務官が、安全衛生分野は技官がそれぞれ担当してきました。厚生労働省は、平成20年度から労働基準行政分野における事務官・技官の採用を停止し、今後は監督官が監督業務に加えて労災補償業務及び安全衛生業務を担う枠組みとしました。]

:事務組合によっては、全国をまたにかけて展開しているところもあります。聞いている限りでは、小さな事業場を訪問し、いきなり委託契約を迫り、高額な委託手数料をその場で持って帰るところもあるみたいです。事業主から、後になって手数料を取り返すことができないかと相談を受けたこともあります。

:そうした事務組合は、地元の事務組合連合会などとの関係はどうですか。

:詳しくはわかりませんが、ある大規模な事務組合は従業員を競わせているようで、ルールに即して仕事をするような雰囲気はありません。その事務組合担当者は自らを保険会社の営業だと名乗っているようで、特別加入制度も、強制適用保険であるかのような話をしたり、かなりきつい言い方をするケースもあるようです。

:私の局でもいろいろなところで、強引な勧誘について相談を受けることがあります。

 事業主から電話で、勧誘に来た人が労働局の人間だと名乗っていたが、本当にそうなのかとの問い合わせがありました。加入しなければいけないんだと強引な勧誘をされたそうです。

 このような事務組合の場合、労災保険や雇用保険の給付段階で問題が生じると思いますが、どうでしょう。

:加入にのみ熱心で、それ以外の肝心な事務処理能力には、疑問符が付きます。以前、請求書に不備があったため、問い合わせたところ、担当者が電話に出たんですが、まったく話が通じませんでした。

 こうしたところは、本来、事務組合として認可すべきではないと思います。不利益を被るのは、委託をした事業主やそこで働く労働者です。

 事務組合によっては、手数料として給付額の何%とかの「成功報酬」をとっているところもあると聞いています。違法とまでは言えないのですが、そうしたところでは、年金給付や遺族給付の請求手続きでも高額らしいです。

:事務組合は、事業主から預かった保険料はただちに納付しなければならない決まりになっています。でも中には、事業主から預かった保険料を事務組合の口座にぎりぎりまで残しておき、督促状が出るころになってやっと納付するところもあります。

 また、事務組合は報奨金制度があるので、滞納が続く事業主への説明が不十分なまま、一方的に委託解除する不適切なところもあります。その後、事業主が個別加入手続きの仕方がわからないまま、一定期間、未加入状態になるといったことが起きます。

:逆に、滞納保険料がそのまま放置され、次第に全体の滞納額が膨らんでいるところもあります。

 そもそも労働保険事務組合は、中小零細企業の労働保険加入を促進することを目的に作られ、そのため各種届出等の事務を代行し、事業主の事務負担軽減の役割を果たすこととなっています。現状では、事務組合の中には加入促進などには懸命でも、各種の事務がおろそかになっているところも存在します。

:事務組合制度に問題があるのでしょうか。

:私は、事務組合制度が悪いのではなく、その運用がおかしいのだと思います。私たちは、できるだけ社会保険労務士など事務組合の事務責任者と打ち合わせを行い、チェック機能を果たしていかなければなりません。

 しかし、現行の監査・指導体制では、数多くの事務組合に十分に目が行き届いていないのが現状です。

:事務組合を育成する視点から、監査・指導を通じて、適用から保険料出納事務まで円滑に行えるよう、今以上に事務組合と連携を密にすべきです。滞納整理にしても連携あるいは分担をきめ細かくすべきです。そのための行政体制の確保が求められます。

この記事のトップへ

◎特別加入制度のひずみ

:特別加入制度については、いかがでしょうか。

 例えば、特別加入時の健康診断についてですが、労災補償給付とセットで考えると、じん肺では、加入に制限がかかるのが、X線写真で第3型以上とされており、これはじん肺管理区分では管理3ロ相当以上となります。ところが、監督署の労災補償給付では、管理区分2で合併症があれば認定対象となります。ここはあきらかに矛盾しているところです。振動障害や有機溶剤も、本来、十分な診断が必要です。

:地域によっては、特殊健康診断を実施してくれる健診機関が近くにないところもあります。私の局では、県をまたいで受診してもらいます。労働局で手は尽くしているんですが、診断項目を満たせるところが見当たりません。規模の大きい公的医療機関も少なく、労働衛生医も普通の開業医が行っているのが現状です。

:私の局も近くに特殊健診ができる機関がありません。振動障害などは特殊な検査機器を用いますから、そもそも患者がいないし、たまにしかない健診のために高価な機器を整備してもらうことは無理です。加入時健診は、こうした現状も含めて、あり方を考えていかなければならないと思います。

:給付基礎日額を、本人の希望額で加入するしくみもどうかと思います。ある団体では、粉じん作業が多く、じん肺に罹患する方がたくさんいますが、長年低い日額で加入していて、症状も進み、年齢的にそろそろ引退されるだろうという頃に、そろって高い日額に引き上げてから、労災申請の手続きを始めます。

:同じようなケースは、全国でたくさんあると思います。

 これまでの最低額である3,500円で加入されていた人が、最高額の20,000円に引き上げ、その後労災請求の手続きをしたとしても、20,000円という額がその人の収入に見合った「妥当な額」であれば、問題ありません。それでは、今までずっと3,500円で加入を認めてきたことは、一体何だったのかということになります。

:事務組合から聞いた話ですが、3月末に本人に加入継続の意思を確認したときは、脱退すると言っていたのに、4月に事故に遭い、やっぱり継続するから保険給付の手続きをしてくれと言ってきたそうです。つまり、事故が起きてから保険に再加入できる仕組みなわけですが、これはおかしいです。保険制度として不健全です。

:今年度から、その矛盾は一層広がっています。労働保険の年度更新期間が変更となりましたが、届け出の期限が2カ月近く遅くなったことで、そうした「選択の余地」が広がりました。基本的に被災者はできるだけ救済する視点に立つべきですが、保険制度ですから保険料負担と保険給付については、加入者みんなが公平でなければなりません。恣意的に選択できる仕組みとなっている制度は問題です。

:中小事業主等や一人親方の特別加入制度については、どう思われますか。

:一人親方については、近年の手間請けなどの実態を見ていますと、事業主が長期雇用や福利厚生のコストを下げるため、「労働者」から外し、不安定な状態に置く傾向があると思います。働いている実態を見ていると、これは「労働者」として扱うべきではないかという微妙なケースもあります。労働基準法の枠組みで判断し、労働者には当たらないということになるなら、当面、国として救済する枠組みが必要であり、それが特別加入制度でいいのではないかと思います。

:確かに一人親方と言いつつ、同じ事業主の下で働くときに労働者で雇われたり、請負のときがあったりし、たまたま請負の時に被災することもあります。専属性の高い人などは、もっと事業主がきちんと雇用として責任を持ってもらいたいと思います。

 

◎社会変化に応じた徴収法の見直しを

:徴収法の実務で、日頃感じたことはありませんか。例えば、徴収法ができた時、労災保険と雇用保険の徴収事務を一元化する上で、当面の措置として暫定任意適用事業の仕組みが設けられ、以降、4次の段階を経ていろいろな業種が強制適用になりましたが、未だに農林水産事業の一部が暫定適用で残っています。今は、農林水産事業の事業主も、一人でも労働者を雇っていれば、雇用に責任を持つということは理解いただけるのではないかと思います。

 平成22年1月から船員保険が労働保険に統合されますが、船員保険制度では、労災保険、雇用保険にあたる部分は、事業の規模にかかわらず船員一人でも強制適用になります。一方で、内水面漁業などもともとの労災保険対象は、任意適用のままです。この機会に農業、林業も含めて、見直すべきではないかと思います。

:農業のケースですが、果樹を収穫していて脚立から落下し負傷した相談を受けましたが、未加入でしたので、どうにもならず、つらい思いをしました。飲食店で、包丁で指を切ったら労災未手続きであっても遡って救済することができますが、果樹園でけがをしたら、農業は暫定任意適用ですからだめですと言わなければなりません。

 もちろん、任意適用であっても、労働基準法上の使用者責任はあるので、使用者がすべて面倒を見てくださいと説明しなければなりません。果たして最後まで責任を見てもらえるのか疑問が残り、不合理であり、私も早期に解消すべきと思います。

:同居の親族や役員についてはいかがでしょう。

:同居の親族については、家族経営だと節税対策などのため、共同経営者にしておく方が有利な場合もあり、制度に合わせて取り扱いを変える余地があるのはどうかと思います。労働者性を判断するにあたり、他の労働者と同じ取り扱いを受けているかどうかという要件はあいまいです。きちんと基準を作って浸透させれば、最初は混乱するかもしれませんが、将来的にはわかりやすい基準の方が定着すると思います。

:事務組合も判断を間違えているケースがありますが、年度更新のときに提出される申告内訳書でそこまで審査することは難しいです。監督署の労災給付段階でも、実際に調査してみないとわかりません。これが、年度更新段階で安易に判断し変更しても、監督署が調査してみたら、実は反対の結果だったとなると、後で追徴金が出たり、還付したりとなって、事業場にかえって迷惑をかけます。また、判断基準があいまいなため、調査の仕方次第で異なる見解となるおそれもあります。

:役員については、監査役はじめ、やはり判断に迷うものがあります。小さな会社だと、実際は労働者なのに役員の頭数が足りないから、名前だけ借りていることもあります。そのような場合、労災保険は業務執行権の有無や就労の実態をみて個別に判断しますが、雇用保険では代表取締役、代表社員、監査役は最初からだめと線を引いています。労災保険と雇用保険で、役員の取り扱いが微妙に異なります。また、中小企業と言っても、100人を超えるようなところと数人の会社では実情が全く違います。

 担当職員がこれだけ迷うのに、労働保険は自主申告制度なので、事業主で先に判断することとなり、結果として後になって問題になります。補償段階でダメだとなっても、保険料は2年分しか還付できません。日ごろの窓口業務や年度更新説明会などの機会を捉えて、事業主が判断を間違えないよう適切な説明をすることが大切です。

:役員、労働者性の判断は、適用実務では一番迷うところではないかと思いますが、もう少し明確な基準にならないかと思います。きちんと線引きを設けないと、ずっと問題が残ります。

:昨今、非正規雇用の増大など雇用環境の悪化もあり、生活のためにやむなく仕事をかけ持ちする労働者も増えています。この場合の労働者の平均賃金のあり方ですが、労災事故に遭った時、休業補償給付などを受けるときの平均賃金は、被災した事業場での賃金しか反映されません。結果として、休業等により他の事業場で得ていた収入もなくなりますので、被災した事業場での平均賃金による休業補償給付だけでは十分な生活補償となりません。一方で、労災保険の保険料は、それぞれの事業主が納付しています。

 各方面からも被災時のすべての賃金収入に見合う補償をするよう要望が出ています。

:労災補償給付は、労働基準法の災害補償規定に基づいて設けられていますから、それを基本に考えると、被災した事業場の賃金が基礎になると考えているためでしょう。

 メリット対象事業場は、給付額がメリット料率に反映されるため、自社が払っていない賃金部分に基づく労災給付が、保険料に跳ね返らないようメリット制度を変更する必要はあるかと思います。

:交通事故の第三者行為災害だと、損害保険は休業に伴う損害を両方の賃金で補償するのに、なぜ労災保険はそうでないのかと言われたことがあります。

 確かに、A事業場からB事業場への移動中の通勤災害などだと、割り切れません。この場合、B事業場の平均賃金で補償することとなりますが、一般的には2か所目の勤務が居酒屋のアルバイトだったりすると、平均賃金が低くなってたちまち生活が厳しいものとなります。労働者の生活を守る視点で、より良い方向をめざしていくべきではないでしょうか。

 

◎徴収事務センターは効果・効率的であるべき

:平成22年1月に社会保険事務局・社会保険事務所が日本年金機構に移行される予定です。この間、国民の利便性向上のためとして、社会保険事務所の中に労働保険の各種届出書類の受付ができる徴収事務センターが設けられ、まもなく3年です。あわせて、この間、滞納整理や保険料算定基礎調査なども社会保険事務所と共同で行ってきましたが、これまでを振り返っていかがでしょうか。

:滞納整理を一部共同で行うことになっていますが、主体である徴収事務センターのとりくみ方に不満を感じています。社会保険事務所は、社会保険料の滞納整理で手いっぱいのようで、労働保険まで手が回っていないのが現状です。

 私たちの方では、事業主を訪問した際、労働保険と一緒に社会保険についても納めてもらうよう理解を求めています。

 しかし、社会保険事務所側に対応をお願いしている事業主の中には、労働保険料の未納分が残っていること自体を認識されていないケースもあります。延滞金も視野に入れると、早くお知らせすることが私たちの責務ですから、忙しい中でもせめて説明だけでもしてもらいたいとは思います。

:保険料算定状況の共同調査のことですが、社会保険事務所と労働局でチェックの仕方が全く違い、共同で行う意義を感じません。受ける側である事業場担当者の方も大変です。社会保険事務所の事情で、昨年から私たちだけで調査に行くようになりましたが、労働保険のチェックだけでも様々な調査を要する中、社会保険について並行して行うことは容易ではありません。

 また、徴収事務センターで受け付けた労働保険関係書類の回送も時間がかかりますし、徴収事務センターで受理した内容に不備がある場合、後日、労働局から問い合わせや不備返戻をすることになり、かえって事業主に不便をかけることになります。

 徴収事務一元化について思うのですが、40年前の労災保険、雇用保険の徴収一元化でも大変だったようで、適用対象者や算定の仕方から保険料徴収のしくみまで、大きく違う社会保険と労働保険の徴収事務一元化を進めることには無理があります。ましてや社会保険を担う組織が大きく変わろうとする中では、不可能です。巷では、「歳入庁」構想などの話が飛び交っています。かつてもそんな議論はあったようですが、結局、各制度の目的や趣旨の違いからくる仕組みの違いを無視するとかえって非効率になってしまいます。

:私も労働保険と社会保険は、別々に事務をした方が効率的だと思います。来年1月から組織がどうなるかわからない状況の中で、今一度立ち止まって考える必要があると思います。

この記事のトップへ

 

◎日常の事務処理などをめぐって

:日常の適用徴収の事務処理のあり方については、いかがでしょうか。例えば、事業主からは、保険料を口座引き落としにしてほしいといった要望も出されます。

:口座引き落としは、銀行の決済日が決まっていますから、この日にたまたま決済できなかったとなると、翌日というわけにはいきません。すべてやり直し処理が必要になります。現行では、事務組合のみ口座引き落としの取り扱いができますが、事務組合だけでもたまたま落ちないということがあり、なかなか大変です。これが、個別の事業場までとなると、たまたま決済できないというケースは相当数生じるのではないか、そうなると事務処理が遅れ、事業主に迷惑をかけてしまいます。

:事務組合については、仕組みを理解していただいた上で取り扱いなので、あくまでイレギュラーの話だと思いますが、個別の事業場については、ちょっとした手違いで相当数のやり直しが予想されます。

:社会保険は、毎月引き落としです。それに比べて労働保険は、年1回ないし3回ですから、ちょっとうっかりということが起こり得ますし、2期、3期になると事業場の担当者の方の頭から忘れ去られてしまいます。

 事業主の要望は理解できるのですが、かえって非効率になります。

:今年度から、労働保険の年度更新期間が社会保険の算定基礎届提出時期に合わせて変更となりました。

 年度更新期限を過ぎましたが、この間を振り返っていかがでしょうか。

:例年のことですが、年度更新期限を過ぎても、まだまだ申告書を提出いただいていない事業主がたくさんいます。そうした事業主には電話で督励したり、直接訪問をしています。

 社会保険と申告が同じ時期になってよかったとの声は、あまり聞こえてきません。もともとは、事業主のサービス向上のための措置のはずなのですが。保険料の算定の仕方が同じなら負担軽減につながるのでしょうが、全く違いますから。

:事業主からは、担当者が同じであるにもかかわらず、同時に両方やらなければならないので大変、徹夜をしたとの話も聞きます。一方で、会社の決算が終わった後で、やりやすいとの声も聞きます。社会保険労務士の片には、よかったという人と困るという人と半々です。

 また、自治体等から、早く申告書がほしい、出納整理期間内で処理しなければならない、早く還付を行ってもらいたいなどの要望が多く、対応に追われました。

:私は、厚生労働省としてのスタンスどおり、法律事項なので、自治体等公共機関にも合わせてもらうしかないと思いますが、厚生労働省として、関係省には引き続き丁寧にお願いすべきです。

:最後に、建売住宅事業者を元請負人にする解釈をめぐっては、昨年出された民事判決によって、建売住宅を販売する業者は、大手の建設業者とはいえ、あくまで発注者なので、労働保険の加入に責任を持つのは一次下請の業者なのだとの結論になりましたが、どう考えますか。

:唐突な取り扱いの変更を指示されたわけですが、建売業者から還付請求書と一緒に大量に資料が送られてきて、審査に苦慮しました。

 そもそも徴収法での建設業における元請負人の考え方は、労働基準法の使用者の災害補償責任の例外(数次の請負事業においては指揮監督を行う者が災害補償責任を負うべき)と一体であり、現場の労働者の安全衛生に誰が責任を持つのかとなると、大工や左官などの小さな下請事業者がばらばらに対応することには無理があり、施行管理者として指揮監督を行う建売住宅業者などが責任を持つべきです。

:私の局では、担当を決めて専属で応対しました。それでも、急な対応であり、また、苦情もあり、きつかったです。

:現在、労働保険年度更新期限を過ぎ、申告書の審査・入力や未提出事業主への提出督励など、大変お忙しい時期かと思います。本日は、そのような中、貴重な時間をいただきありがとうございました。

 

以上

この記事のトップへ