働き方・労働法制 −労働時間、賃金、安全衛生、労災補償など

2007年 4月
「安全衛生行政の課題を語る」
安全衛生職域座談会

2007年4月、安全衛生行政の第一線業務に従事する組合員が集まり、近時の労働災害の現状、企業の安全衛生活動の実情などを報告し合い、安全衛生行政の運営に関わる課題とあるべき方向等を率直に議論しました。

◎労働災害の多発とその要因

司:新年度の行政運営方針の中では、労働災害の増加傾向が指摘されています。実際に第一線で安全衛生行政に携わる立場からどのように感じていますか。

A:私の局管内では死亡災害が減る一方で休業災害が増えています。一般的には、休業災害が増えれば、それに伴って死亡災害も増えます。もう少し長いスパンで観察すべきことではありますが、産業構造や技術が大きく変化する中で、ハインリッヒの法則が崩れているのだろうかと感じます。

B:一概には言えないでしょう。私の局管内では死亡災害も休業災害も急増しています。先日、ある事業場に赴いたところ、30〜40年前の設備をだましだまし使っている。いつ災害が発生してもおかしくない状況です。例えばボイラーは一年毎に開放検査を行いますが、この間の規制緩和によって開放検査をすることなく連続運転が可能になったのです。構造改革特区では、連続運転を6年まで延長させ、厚生労働省内では8年連続という議論もあると聞きます。規制緩和する代わりに責任を企業にもたせると言いますが、リスクは確実に高まっている気がします。

C:私の局管内では爆発・火災や化学物質関係の重大災害が増えています。こうした中で第10次の労働災害防止計画の目標達成は相当に厳しく、労働災害の件数はここ2、3年増加傾向に転じていて10年位前の水準まで後退しています。

A:各企業の主要な安全衛生担当が定年等で辞めていく状況が近年目立ち、こうした事情が要因の一つではないかと感じます。技術だけでなく安全衛生のノウハウも伝わらないまま辞めてしまう。また、この間のリストラの中で、安全衛生部署の人員等が削減され続けており、その結果、安全衛生組織や活動が「優良」だった企業も、人が辞めるたびにレベルが低下しています。事態の重大さに気付いて、再び安全衛生部署を立ち上げても、新たに担当になった人は何をやっていいのかわからず、対策が後手後手になっています。

D:かつての安全衛生部署がISO9000などの担当部署に変わっています。企業にとっては品質管理や環境確保を重視することが利益に直結するので、おそらく安全衛生を後回しにしている傾向があるのではないか。アウトソーシングも進んでおり、危険な仕事はなるべく外部に出します。その際、労働者派遣の形態では労働災害が発生した場合、派遣先にも責任が生じるので業務請負にします。その結果、大手企業はほとんど無災害だけど、よく見ると災害発生場所がその大手企業の工場内作業所といった業務請負業者の災害が増えています。

C:昔は「安全親父」みたいな人がどこの企業にもいました。その人が多方面と調整をしながら安全衛生活動を進めていたのです。しかし、今日の状況はスタッフは置いているが、彼らが担っていた多くのノウハウ、例えば人的ネットワークであったり、安全に対する強いこだわりであったり、こうしたものが伝承されず、安全衛生活動が形骸化しているような気がします。厚生労働省が推し進めているリスクアセスメントは、誰でもできる安全衛生管理活動をめざしているから、ある意味では実情に合っているとも言えますが…。

司:建設業ではどんな変化が起きていますか。

B:近頃は、現場監督が一人で3つ、4つの現場を持つのは普通です。

A:もっとひどい状況もあります。共済事業として住宅等を建築するケースでは、建築であっても共済事業の一環ですから、建設業としての許可を受ける必要がありません。そこでは現場監督が30棟、40棟と担当しています。そこに入る職人は全て請負関係ですから、労働基準法上の労働者ではなく、特別加入者の集合体なのです。ですから、労働安全衛生法の適用もなく、安全は個人任せで、結果、安全対策は二の次となってしまいます。

D:同様に、アパートやマンションといった規模の建築物も「労働者」が一人もいない中、つまり一人親方だけで建てられます。災害が発生した場合、特別加入者の補償件数は増えるが、労働災害の件数は増えないという、隠れた「労災」がたくさんあります。みんな親方ばかりで安全管理を統括し、責任を負う者がいない。法令が想定している安全衛生体制や安全衛生活動が適合しなくなっています。

C:公共工事を発注する場合、分割発注というやり方を進めていますが、原型はそこにあるのではないでしょうか。

B:例えば、一つの橋梁を造るのに10社ぐらいが入る。発注をできる限り細分化すると中間のマネージメントがなくなるから工事金額が安くなる。発注する側も得、受注する側も得となりますが、ただ安全衛生上は問題が残ります。

D:今の例でいえば、労働安全衛生法第15条が定める統括管理の義務は残りますから、発注者はどこかの事業者を統括安全衛生責任者として指名しますが、その費用を少し上乗せするぐらいなもので、現場の安全衛生管理をめぐる状況はひどいものです。

C:これまで大規模建設工事は安全衛生管理上の問題が比較的少ないとして、監督指導や個別指導の重点には置いてきませんでしたが、最近は方向転換して大規模建設工事現場にも積極的に指導に入る必要が指摘されています。

D:最近では、元請事業者が計画届等を自社で作成していませんし、工事全体の流れを的確に把握できていない。コンクリート打設一つとっても専門工事業者の職人のいいなりです。厚生労働省は、専門工事業者の育成を進めてきましたが、今日では専門工事業者の職人がいるから、大手事業者がなんとかなっているのではないかと感じます。

◎巧妙化する労災隠し

E:私の署管内では必ずしもそういう状況ではなく、大規模建設工事現場での労働災害はあまり発生していません。木造建築工事の方がよほど労働災害が多く、その意味では従来の傾向が続いています。地域性もあると思います。気になるのは近年、労災隠しが多いことです。

C:建設業の場合、店社の資材置場等も監督指導の対象にして、災害防止指導や災害調査をしていますが、こうした作業場所を労働災害の隠れ蓑にしている場合があります。特に事務組合の事案は要注意で、一部の社労士等が主導しているケースがあるようです。背景には、被災者が事実を報告できないような事情、事業者が災害発生の事実が明らかになることで次の工事を受注できなくなるといった事情もあるようです。

A:隠し方もかなり巧妙になっています。元請にばれないように、社労士等の専門家に頼んで書いてもらう。もしくは労災自体は隠さないけれども、一部虚偽をまぜたりして法違反が疑われない労働災害にしてしまう。労働基準監督署の労災補償部署と安全衛生部署が違うことを知っている者が作成する場合、様式5号(療養補償給付たる療養の給付請求書)と労働者死傷病報告書の中身を微妙に変えてきたりします。ここまでやるかなあという感じです。

F:労働者死傷病報告書を一部あやふやに書いたり、被災場所を数メートルずらしたりして書く。同じようなシチュエーションをつくり出し、たまたまそれが資材置場とか、他の現場で起きたと書くケースが見受けられます。被災者が補償事務で監督署に来られた際に被災状況等を聴取する中で発見されたりします。

B:先ほども指摘がありましたが、建設業や製造業等、重層的な請負関係のある業種では、発注者から次の仕事を回してもらえないなどのペナルティがあるので、下請事業者は隠そうとします。同様に派遣元事業者など立場の弱い業者はどうしても、次の仕事の受注を考えてしまいます。

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◎安全衛生行政と専門性

司:企業の安全衛生体制やその活動が弱体化していく中、労働行政の役割が重要さをましています。今日、安全衛生行政に求められる体制や専門性とはどのようなものでしょうか。

F:実は、技官の人数は毎年減っています。2002年に全労働が行った調査では、労働行政の定員に占める技官の割合はわずか9.2%です。私の労働局ではその後5人も減っていますし、おそらく増えている労働局はないでしょう。減った人員の一部を労働基準監督官で代替してきましたが、監督官の就くポストは、産業安全専門官ではなく、安全衛生課長か、逆に技官が複数いるところの一般職員という傾向があります。

司:監督官が署の安全衛生課長に就く場合の問題点はありますか。

A:一つは監督指導計画及び安全衛生業務計画の人日の割り振りでしょう。監督指導業務の人日と安全衛生業務の人日を割り振られることから、二足のわらじを持つことになります。安全衛生業務に従事しますが、監督指導業務にも従事する。どちらに重点を置くかというと監督指導業務になる。当然、安全衛生業務にしわ寄せがきます。

F:総務や労災補償を担当している監督官の場合、監督業務の人日が割り振られることはありませんが、安全衛生部署に配置された監督官には監督指導業務の人日を割り振ることが多い。こうした監督官の中には、安全衛生業務は二の次という認識を持っている人もいます。労働基準監督署長等の管理者は総じて「件数主義」ですから、安全衛生部署に配置された監督官にも、どうしても監督件数を割り振りたいのでしょう。

B:安全衛生課長になった監督官自身も大変です。監督官と技官では、培った専門性の中身が異なるので、部下の技官に対し適切な助言・指導ができない場合もある。第一線の技官が減ったり、監督官が官職を代替するような傾向がこのまま進めば、安全衛生行政が維持・継承してきた専門性が後退し、民間企業で起きている問題が労働基準行政で起こる危険性があります。すでに、ボイラー等の検査を労働局に配置された技官がやらなければならないという状況が生じています。

A:実際、技官が身に付けるべき専門性は、それを日常的・継続的に伝えていかないと伝承は難しい。監督官の専門性の主要な部分は、法令を正確に運用するということではないでしょうか。最低基準である法令を超える技術的指導に必要な専門性とは大きく異なっています。

B:労働災害と向かい合った時、法令違反は有無を言わさず指摘することができますが、再発防止に向けた技術的指導は時間をかけて理解を得、具体的な改善事例等を示しながら、その職場に定着させていく必要があります。

司:監督官は法違反を取り締るからセーフティネット。規制緩和の中で国が企業活動に介入することは極力避けるべきだという考え方から、それを超える技術的指導は不要なものという考え方が広がっています。しかし、労働災害や職業性疾病をなくすためには法令違反を指摘するだけでは全く不十分なのであって、技術的な安全衛生指導が不可欠です。そこが理解されないために、監督官は増えても、技官は減らされているのではないでしょうか。

C:最近、技官の採用はなく、他の官職と比べて年齢層のバラツキが大きくなっています。他方、アスベスト障害予防対策や災害発生事業場等への個別指導など、庁外業務を中心に業務量が急増しているので、庁内業務を補助する相談員等を配置できないか、検討を求めています。

A:採用後まもない技官がいますが、すでに将来の職業生活に不安を感じています。入省した瞬間から不安を抱えながら仕事をしています。

B:専門性を継承していくための計画的採用という発想がほとんどない。辞めた人数しか採用しないか、辞めても採用しないか、どちらかです。

F:数年前、アスベスト対策推進のための定員査定があったが、中身を見れば監督官の採用を若干増やしたが、労働基準行政全体では削減でした。結局、監督官の増員分も含めて事務官・技官の定員を削減したということです。しかし、アスベスト対策の多くの部分に従事しているのは、安全衛生部署の技官なのです。

B:厚生労働省はリスクアセスメントの推進を提唱しているわけですが、そこにある発想は、労働災害の防止は事後的な取り締まりではなく、予防システムの確立を重視すべきというものです。それ自体、技術的指導の範疇なのですから、それを推進する体制も強化すべきだと思います。そこが脆弱であるということ自体が対策の推進の障害となっています。

◎安全衛生業務計画

司:これまで、ひとたび安全衛生上の問題が浮上したなら、妥協を許さず、とことんその原因を突き詰め、災害防止を図るという技官のスピリットともいうべきものがありました。しかし、今それを突き詰めていたら安全衛生業務計画が達成できない。そういう行政になりつつあるのではないでしょうか。

B:安全衛生の分野は非常に広範囲ですが、どの分野にも精通した技官がかつては存在していた。今は、安全衛生業務計画の達成が一番の眼目になっているので、そういう技官は少なくなっている。計画件数に引っ張られるというか、業務計画に計上した数字を達成できないと管理者からがんがん文句を言われますから、どうしても件数かせぎになってしまう。

F:一件一件の仕事を短時間でどんどん処理する技官が有能と評価されます。各署に一名程度の配置という技官の定員状況ですから、メリハリをつけようにも困難です。技官の過重労働に頼ってばかりでは何も解決しません。

A:職場ではメンタルヘルス不全の人が確実に増えています。その状態でも同様に安全衛生業務計画の達成が迫られますから、どんどん病状が悪化してしまう。計画を作るときも目安があるからと、できもしない計画を作らせています。

D:実際、できない計画を作ることにどれだけの意味があるのでしょうか。計画のたて方自体に無理があることがはっきりしているのに正そうとしない。例えば、災害調査は計画上、一件3人日(1人×3日の業務量)の計上ですが、3人日で災害発生現場の実地調査、関係者の聴取書作成、災害調査復命書作成等を行うことは不可能です。災害調査はどんな大規模なものでも一人でやれということかもしれない。計画上の人日の目安を設定する幹部が災害調査をしたことがないのでしょう。しかも、そこに最近は個別指導という項目が追加になり、過密に拍車をかけている。

C:技官の数が決まっているから、本来、計画上投入できる人日は決まってきます。しかし、それ以上の業務量があることははっきりしているので、件数を確保するために計画上の人日を仕方なく削るわけです。つまり前年度実績の数字を削って計画しているのです。ですから、実績は150%、200%になります。どんなに業務量が増大しようが技官は絶対に増員しない。現実は受動業務だけでパンクしていることを認めるべきでしょう。

D:安全衛生専門実地訓練は、署に複数の技官が配置されている場合なら、様々な業務をOJTの中で指導できます。しかし、実地訓練の業務量が計画上考慮されていないので、年間計画の件数を達成することが優先されています。結果として、一人で事業場へ行ってもらい「実地訓練」としているのが実情です。これでは、実地訓練の実効はあがりません。

F:とにかく件数が求められているのですか。

D:そうです。やっぱり件数です。時間外や休日労働で業務量が計画の300%になったとしても、件数が80%だったらダメです。重要な案件の災害分析を1年間がんばって調査し、複雑な災害原因を究明したとしても、効率よく仕事をやらないお前は悪いと言われるのがオチです。そういう意味では、仮りに技官が増えても、その業務の運営を改善しなければ、問題解決には至りません。

B:計画された件数は事実上のノルマです。ノルマ的な動きしかできなくなる。一人ひとりにノルマとしての件数が与えられることの善し悪しはよくわからないけれど、数字がないと何もやらないというのは、よくない気がします。とくに件数にとらわれて、それをただこなすだけの業務運営は決してよいことではない。

司:対象事業場をサラッと指導しても1件、徹底的に指導しても1件というのは、行政の質の低下を招くのではないでしょうか。

B:その懸念は確かにあります。同時に先程も指摘のあった専門性の継承が困難になるという点は決定的に重要ではないでしょうか。自分が入省した頃は、産業安全専門官に一緒に来いと言われ、様々な現場で実践的な研修を積ませてもらった。しかし、今それを後輩たちに対してやれと言われてもできない。一人ひとりが手分けをして件数を上げなければならず、一緒に行くことができない現状にある。しかし、私自身は先輩からOJTを通じて、実にいろいろなことを教えてもらいましたし、その経験が私の今の財産になっています。安全衛生分野では実際に自分で経験しないと認識を持ち得ない部分が多いのです。

A:先輩や同僚に同行すると、自分の指導する視点が固定化してしまっていたり、見逃していた観点に気付かされることがあります。自分一人で指導を続けていると、ビール工場の見学をしているような指導、パターン化した指導に陥りやすい。そのような観点から見ると、団塊の世代が大量に辞めていく民間企業と同じように、安全衛生行政の伝承も困難になってしまうのでないか。また、それぞれの事業場の安全衛生担当者は他の事業場をあまり見たことがないので、技官が場数を踏めば踏むほど行政指導が生きてきます。

司:技官の専門性の養成は中央研修(労働大学校(朝霞市)での寄宿制の研修)だけということですか。

E:中央研修自体は充実してきていると感じます。しかし、中央研修を踏まえた上で実践を通して見識を深めたいのですが、先にも指摘のあった件数の確保が先に立ち、目先の対応での処理に陥ってしまう。

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◎施策について

司:現在の安全衛生行政の重点施策、例えばマネジメントシステムとかリスクアセスメントなどに関わって議論をいただきたいと思います。

A:マネジメントシステムは確かに有効な面があります。ただ、日本では安全衛生委員会という形で、日本独自の安全衛生システムがいい意味で機能していた。これを発展させるのではなく、外から入ってきたマネジメントシステムでやりましょうとなったわけだが、中身は今までの安全衛生活動と同様で、それを手続き的に体系化したということですから、改めて「マネジメントシステムを導入してください」というのはおかしな話、形式が先行しているような印象を持っています。リスクアセスメントは、作業標準がないとリスクの洗い出し段階でつまずいてしまう。大企業なら何らかの作業標準があるので有効ですが、中小・零細企業ではそれどころではない。指導したとしても、有効性や継続性が気になります。

C:マネジメントシステム自体は安全活動そのものではなく、仕組みの話です。仕組みを作る場合、その企業なり事業場なりの管理体制全体の把握が必要です。それを把握してから何をすべきか、何ができるのかという検討に入ることになります。その上でできる限り具体的な提案が求められるわけですが、そこを充実させていくことが、安全衛生行政の課題ではないかという感じがします。他方、大きな社会問題ともなった耐震偽装の件もあり、許認可の判断が大変気になっています。例えば有機溶剤局所排気装置等特例許可、粉じん障害予防規則一部適用除外認定申請等です。その重要性は十分認識しながら対応していますが、そもそも許可すべきかどうかの実地調査を一人で行く行政機関なんてうちぐらいじゃないでしょうか。不正防止の観点からも複数で行くべきですし、これもまた人材育成に大きな影響を与える。検査でも、ボイラーやクレーンは数十年間、安全に稼働し続けることが当たり前で事故は許されない。こうした検査の重要性に相応しい体制が整っているのか、また相応しい専門性が伝承されているのか、行政内部のリスクアセスメントをやってみると仕組みや体制に問題があることが明らかになってきます。

F:例えば監督署を積極的に統合し、技官の複数体制をとれるようにすることはできないですか?

C:労働基準監督署の統合は内部体制の問題に止まらず、地域のセーフティーネットとしてどう役割を果たすかという面からの検討も必要ですから、難しい面があるでしょう。許認可の問題を現状で解決しようとするのなら、無理矢理でも決裁ルートの課長を連れて行き、複数体制の実地調査を実現していくしかないと感じます。産業安全専門官、労働衛生専門官は労働安全衛生法で各署に配置すると書いてありながら、配置されていない。そもそも法令が予定する最低限のスタッフがいないことが問題ではないでしょうか。

◎諸課題・まとめ

司:定員は減る一方という現実の中で、不要不急の業務を廃止すべきという議論があります。

F:クレーン等設置報告書などを廃止すべきという声は関係業界から出ています。

B:設置報告書を提出するということすらなくしてしまうと、クレーン等は勝手に製造し、勝手に設置してもいいことになります。行政機関に法定の報告書を提出する意味は少なくないと思います。ただ行政機関の側がこれらの情報をもっと活用していくという課題は残ります。

司:災害調査復命書の作成にあたって、どのような目的でどう活用しているのかもっと具体的に明らかにしておく必要はないでしょうか。どこまで調査していいかわからず非効率になっていませんか。

B:調査項目等は整理してもらいたい。労働災害の種類によってはパターン化しているものも少なくなく、どれも同程度の業務量を投入して調査するというのでは非効率でしょう。

C:現在の調査項目は最低限という位置付けであって、全ての事案で調べるべき当然の事項だと思っています。

F:本省に報告される災害調査復命書の一部は、『安全のしおり』(中央労働災害防止協会発行)や『事例集』等の作成に活用されていると思います。私の経験した事案ですが、新しいタイプの災害調査がもとになって、同種災害防止の通達が発出されたことがありました。

司:実に様々な観点から、安全衛生行政の課題について議論していただきましたが、あらためて最後に一言ずつお願いします。

D:技官の任務は、一つの災害、一つの事業場にこだわって指導し改善を求めていくことだと思っています。そういう意味では件数主義は合わない。事業者が安全衛生活動はこの程度でいいんだと思われては決していけないと思います。

C:少ない人数だが、その中でも如何に業務を効率的に行うか、少なくとも庁外業務が現状を下回るような事態は避けなければならず、庁内業務を支援する体制整備が早急に必要です。毎日のように庁外業務で終日駆け回り、帰ってきたら机の上に重要な届出書類がそのまま山積みという状況はどこかにひずみが生じてしまいます。

B:安全衛生行政が重要な役割を発揮していくためには、その中で技官をどのように位置付けるのかが大事だと考えます。本日の議論でも、ますます技官の役割が必要となっていることは明白です。先輩から受け継いだ技術や専門性を実践を通じてさらに磨きあげ、それを若い世代へつなげていかなければならない。そのためには、計画的な技官の採用、体制整備、場数を踏むことを重視した研修システムの確立など課題は多いですが、労働者にとって大切な行政であり、後退させることはできません。

司:本日はありがとうございました。

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