メッセージ フロム ザ フロント

技官レポート19(最終回)

災害防止への思い/ノウハウと経験の継承を/健康・安全な社会づくりこそ

 

 私が技官となって四半世紀が過ぎ、社会や労働環境は大きく変わった。そして時折、労働基準監督署の窓口で対応すると、来署する企業の安全衛生担当者がとても若いことに気付く。安全衛生法令や技術的対策の質問を熱心にする若者の姿を見ると、自分がだいぶん歳を取ったことを改めて実感する。同時に「これから労働災害防止を担う若い担当者に、自分のこれまでの経験を伝えていかなければならない」と強く思う。

 最終回の今回は、これまでを振り返り、次世代の安全衛生担当者に特に伝えたいことを2つ取り上げたい。

 

非定常作業の鉄則とは

 労働災害の多くは日常の作業とは違った「非定常作業」において多く起きている。非定常作業とは、機械の掃除、給油、検査又は調整の作業などのこと。そういう時に、労働者が機械に巻き込まれたり、はさまれたりする災害がとても多いのだ。

 2014年の統計をみると、転倒災害(22・5%)、墜落・転落災害(17・1%)に次いで多いのが「はさまれ・巻き込まれ災害(12・7%)」で、これらは3大災害と呼ばれている。

 非定常作業の労働災害を防止する上でぜひ知っておいてほしいのは、労働安全衛生規則第107条である。

 同条では、機械の掃除、給油、検査、修理又は調整の作業を行う場合、労働者に危険を及ぼす恐れのあるときは、機械の運転を停止しなければならないと定めている。例えば、機械の回転部分(回転する部分は巻き込まれやすい)に異物が入ってしまった時のことを考えてほしい。回転している機械の異物を取るのは、だれが見ても危険だ。そのために規則では、機械を停止させて行うこととしているが、実際には守られていないケースがほとんどだ。機械が停止しているように見えたため、手を突っ込んだら急に機械が動き始めて手指を巻き込まれてしまうといったケースだ。「まさか、急に機械が動き出すとは…」——。こうした話を何度も聞いている。

 だから、機械を確実に停止させてから作業を始めてほしい。もし、機械を停めると作業ができないならば、素手ではなく、適切な道具(治具)を使うこと。「もしも、急に機械が動き出したら…」という視点を常に持つことが必要だ。

 「『まさか』より『もしも』の視点で災害防止」なのだ。

 

メンタル不調の防止を

 もうひとつは、メンタルヘルス対策の推進である。ストレスチェック制度が2015年12月から始まるが、この制度を円滑に導入することをお願いしたい。

 労働者の心の健康確保をめぐる現状は極めて厳しい。職業生活の中で強い不安やストレスを感じる労働者の割合は5割を超えている。

 制度の導入時期にはさまざまな問題も生じるだろう。それでもこの制度を効果的に運用し、労働者のメンタル不調を未然に防止して、だれもが安心して働ける職場づくりを進めてほしいと切に願う。

 私たち厚生労働技官は、第一線の労働局や労働基準監督署の職場で労働災害の防止と労働者の健康確保のため日々奮闘している。それは「すべての労働者が健康で安全に働ける社会にしたい」という一心からである。これまでレポートを読んでくださった読者の皆さんには、技官のそうした強い思いを心の片隅にとめておいていただければ光栄である。

(城田正義)

(「連合通信・隔日版」11月12日号から転載)

この記事のトップへ