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技官レポート15

転倒災害/清掃と滑りにくい作業靴を/あらゆる業種・職種で発生

 

職場での転倒災害が増加している。

 厚生労働省によると、2014年に全国で発生した休業4日以上の労働災害(約12万件)のうち、転倒災害が約23%と最も多い。死亡も20人。あらゆる業種、職種で発生しており、骨折を含め重傷のケースが少なくないのだ。

 厚労省は「STOP!転倒災害プロジェクト2015」を立ち上げ、本腰を入れ始めた。

 転倒災害は抜本的な対策が講じにくく、私たち技官泣かせの災害でもある。

 

「危険マップ」を作成

 

 ある労働基準監督署に勤務していたとき、転倒災害の防止に丸1年をかけて指導したことがある。

 その事業場は食料品製造業だった。食材を洗うために大量の水を使用していて、作業床や通路がとても滑りやすく、何人もの労働者が負傷していた。頭部を強打したり、転倒した拍子に走行中のフォークリフトに接触したりと、かなり心配な災害が起きていた。

 さっそく個別指導に赴くと、床面は水に加え、揚げ物から出る油分がかなり付着していた。想像以上に滑りやすい状態である。

 手始めに、これまでの災害がどの場所で発生したのかを調べた。すると、ある特定の場所で複数の転倒災害が発生していることが分かった。

 同時に労働者が転倒の危険を感じた場所(ヒヤリ・ハット体験)の情報を集めてもらい、これらの場所を一枚の「危険マップ」に仕上げた。このマップによって、どこから対策を講じるかが可視化できたのだ。

 

転ばぬ先の杖

 

 事業場の安全担当者は、危険場所を重点的に清掃することから始めた。床面の油分を取り払い、水がこぼれればモップでふき取ることにした。すぐ清掃ができるよう、作業場所の近くにモップを常備したことも工夫の一つである。

 何度か指導を続けるうちに、作業場内は見違えるほどになった。私は、もうひとつ攻めの対策として、滑りにくい靴を導入することを指導した。柔らかいゴムを使った靴底は、一般的に路面に対する密着性が強く滑りにくい。冬場に自動車が履くスタッドレスタイヤを思い浮かべていただきたい。スタッドレスタイヤの表面はかなり柔らかい。

 現在は、滑りにくい作業靴も普及している。食品製造業に適した「対油・防滑長靴」といった製品もある。転倒災害をどう防ぐかで悩んでいる事業場は、厚労省プロジェクトの資料も参考にしながら、ぜひこの長靴購入を検討してほしい。

 それは、間違いなく「転ばぬ先のつえ」となる。

 

(城田正義)

 

(「連合通信・隔日版」7月4日号から転載)

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