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技官レポート14

墜落・転落の防止/安全帯そのものの点検を/耐用年数切れには要注意

 

 建設業の労働災害を防止する上では墜落・転落対策が重要であり、安全帯の適切な使用が欠かせない。厚生労働省によると、2014年の建設業における休業4日以上の労働災害は、全国で1万7184件発生し、372人もの尊い人命が失われている。災害を詳しく分析すると、墜落・転落災害が全体の34%で最も多く、死亡事故でも372人のうち145人と、約39%を占める。

 

まずは囲いや手すりを

 墜落・転落を防ぐには、「高さ2メートル以上の作業床の端や開口部で、労働者に危険を及ぼすおそれのある箇所には、囲い、手摺り、覆い等を設けなければならない」(労働安全衛生規則第519条1項)との規定をまずは順守することが重要だ。

 しかし、実際の現場では、囲いなどを設けられない作業場所がある。あるいは作業上やむを得ずに囲いを取り外すケースもある。そんなときに大切なのが、安全帯の適切な使用である。特に「安全帯自体の機能が常に十分に有効かどうか」が生死を分ける。

 

安全帯着けていて墜落

 ある労働基準監督署に勤務していたときのことである。工場内の天井に設けられたキャットウォーク(通路)から約9メートル下のコンクリート床に墜落する事故が発生した。被災者はすでに救急車で病院に搬送されていた。関係者から話を聞くと、被災者は災害発生時に安全帯を使用していたという。それならなぜコンクリート床に墜落してしまったのだろうか。

 災害は安全帯を使用していたにもかかわらず発生している。被災者が墜落したことも事実である。どうも話が合わない。発生現場をもう一度確認してみると、地上9メートルのキャットウォークに設けられた親綱(安全帯を取り付けるための設備)に被災者の使用していた安全帯のフックのみが残っていた。

 被災者の安全帯を確認したところ、安全帯のロープが途中から切れていた。つまり、災害発生時、被災者はきちんと安全帯を使用していたが、墜落したショックにより地上3メートルくらいのところで、そのロープが切れたものと推定された。

 

一命は取りとめたが…

 安全衛生規則は、「労働者に安全帯等を使用させるときは、安全帯及びその取り付け設備等の異常の有無について、随時点検しなければならない」と規定している。安全帯そのもののチェックが欠かせないのだ。被災者が使っていたものは各部が損傷していて、耐用年数をかなり過ぎているように思えた。

 幸い被災者は一命を取りとめたが、大きなけがを負ってしまった。きちんと点検していれば今回の災害は防げたかもしれないのである。

 私は安全帯の点検について現場で指導するとともに、関係業界団体を通じて点検の徹底を通知することにした。今も安全帯を使用している人を見かけると、「点検をしていますか」と声を掛けることにしている。万が一の場合に備えるためである。

 

(城田正義)

 

(「連合通信・隔日版」5月9日号から転載)

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