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技官レポート13

港湾荷役での墜落/大型貨物船だと高所作業に/安全帯使用は不可欠

 かなり昔の話だが、私は港町の労働基準監督署に勤務したことがある。

 そこには、石油化学、鉄鋼、飼料、木材などの各種企業が立地し、日本有数のコンビナート地区を形成していた。港では、多くの原材料や製品が取り扱われ、重要な海上輸送基地として、連日多くの船が行き交っていた。

 貨物を取り扱う作業には、大型クレーンやアンローダなど多くの機械を使用する。これらの機械は労働基準監督署の落成検査を受けなればならず、検査を担当する私たち技官の出番は多い。こうした検査とは別に、港には特有の労働災害があり、その対策を指導するにはかなりの経験が求められる。新米だった当時の私は、港湾荷役作業の安全を学ぶため、先輩技官に付いて、広い港湾内を何度も歩いた。

 

6、7階ビルと同じ

 厚生労働省によると、2014年の港湾荷役業における休業4日以上の労働災害は、全国で260件発生し、前年同期より57件(+28%)増加しており、4人もの尊い人命が失われている。災害の種類では、墜落・転落災害が全体の4分の1を占め最も多く、次いで、はさまれ・巻き込まれ災害(18・9%)が続く。

 注目すべきは「墜落・転落災害」である。港湾荷役作業では、大型貨物船内部での作業が伴うことや、扱う貨物自体が非常に大きいこともあり、高所での作業が多くなる。梱包されていない穀物・鉱石などのばら積み貨物を船倉に入れて輸送する10万トン級の船だと、ハッチ(船倉の上部にある開口部)から船倉の底まで20メートル近くあり、その高さは6、7階の建物と同じようなものである。

ハッチから墜落

 勤務してちょうど1年くらいたったある日、消防署から通報が入った。貨物船内で労働災害が発生したとの一報で、私は直ちに現場に向かった。

 到着すると、岸壁には外国籍の大型貨物船が係留されていた。作業員が船倉に墜落したと聞き、すぐに災害調査を始めた。

 墜落場所を確認するため、ほぼ垂直に近い船倉のハシゴを下りていくと、なかなか船倉の底にたどり着かない。作業員が墜落した船倉はそれほど深いものだったのだ。

 船倉の底に着いて上を見上げると、ハッチがはるか上方に見える。被災者はハッチの周囲に設けられたハッチ・コーミングと呼ばれる立ち上がり部に登り、船倉の中を確認しようとして約20メートル下に墜落したものと推定された。

 ハッチ・コーミングは、井戸に例えれば1メートルほどの高さで周りを囲んでいるコンクリート部分を指す。通常は墜落防止のための安全措置となり得るが、船倉の中を確認しようとその囲いの上に登ってしまうと、バランスを崩して墜落する危険性が非常に高くなるのだ。

 

二度と起こさせない

 労働安全衛生規則では、墜落防止のための囲い・手摺(す)りを取り外すときは、労働者に安全帯を使用させるなどの危険防止措置を講じなければならないと定めている。この災害のケースでは、囲いを取り外したわけではないが、労働者には安全帯を使用させる必要があったのだ。

 数年後、再び港町の署に勤務することとなった。

 さっそく荷役作業中の船内を見て回った。幸いその時は、作業者全員が安全帯を使用していた。同じ墜落災害を二度と起こさないよう、私は港湾荷役の指導の度に、適切な安全帯の使用を指導することにしている。

 

(城田正義)

 

(「連合通信・隔日版」3月28日号から転載)

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