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技官レポート8

建設入職者の事故/1年未満の労働者が危ない/東京五輪などで需給ひっ迫

 

 東日本大震災の復興の本格化や2020年の東京オリンピック・パラリンピックの開催に向けた施設整備など、建設需要が大きく増加している。建設業では労働者不足が深刻化しており、私も最近、現場への個別指導や安全パトロールの際に、そういう話をよく聞くようになった。特に鉄筋工や型枠工などの技能労働者が足りていないのだ。

 厚生労働省によると、今年1月から6月までの労働災害は、死亡災害が437人と前年同期より71人(19.4%)増えている。特に建設業では、159人と28.2%も増加、全国的に死亡災害が多発する極めて憂慮すべき事態となっている。

 

雇い入れ教育が不十分

 あるとき、部下の技官(労働衛生専門官)と、建設業の労働災害防止には、いま何が一番必要かを議論した。その専門官は「最近、経験の浅い建設労働者が負傷する傾向にある」という。私は「建設業の労働者不足が関係しているかもしれない」と指摘すると、彼はあるツールを使い、建設業の労働災害発生状況を詳細に分析してくれた。

 経験年数が1年未満の建設労働者が被災した割合は、2008年に14.7%だったのに対し、13年は22.4%と7.7ポイントも増加している。他の経験年数では、ほぼ横ばいだったのに対し、1年未満の災害だけが突出して増えているのだ。私は、「建設需要の高まりから建設入職者が増え、作業に不慣れな労働者が災害に遭っているのでは」と直感した。

 労働者を雇い入れた場合、労働安全衛生規則第35条により、作業手順、作業方法や保護具の適切な使用方法など、安全衛生に関する雇い入れ時の教育をしっかり行わなければならない。これは、労働災害を防ぐために必要な知識を習得させるもので、労働者にとっても極めて重要な教育機会のひとつである。言い換えれば、必要な教育を受けていない労働者は、災害に遭うリスクが非常に高まるのだ。

 

安全帯フックの位置は

 最近、このことを痛感する出来事があった。

 管内の建設現場の安全パトロールを行っていたとき、ある作業が目に留まった。

 地上から数メートルほどで高所作業を行っている作業者をよく見ると、着用している安全帯のフックをパイプなどに取り付ける際、自分の腰より低い位置に取り付けているのである。

 安全帯は、高所作業での墜落を防止するために使用するもの。フックの取り付け位置によっては、墜落防止効果を低下させかねない。一般的にフックは、「自分の腰よりも高い位置に取り付ける」とされている。足元などの低い位置に取り付けると、万が一、墜落した場合に、高い位置に取り付けた場合と比較して、その分だけ墜落の距離が延びることになる。少しでも墜落の距離は短い方が身体に対するダメージは少ないのだ。低い位置だと、安全帯のロープにつまずいてしまうかもしれない。

 私は作業員に声を掛けてみた。作業員はまだ不慣れなようで、安全帯のフックの取り付け位置の話をすると、最初はあまり理解を示さなかった。そこで、「万が一」の話をすると、腰より高い位置に取り付ける意味をよく分かってくれた。

 安全帯の適切な使用方法は、建設労働者が身につける基本中の基本である。しかし、十分な安全衛生教育が実施されないために、安全帯を適切に使用せず、危険な高所作業を行っている実態がある。私は、専門官が出してくれた統計とともに、こうした実態を建設業界団体に説明し、早速、改善を求めることにした。

 

(城田正義)

(「連合通信」8月21日号から転載)

 

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