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技官レポート7

派遣労働者の災害/望まれる安全教育の徹底/派遣先事業主の責任自覚を

 

 近年、労働者全体に占める非正規労働者の割合が増加している。非正規労働者は、パート・アルバイト、契約社員、派遣社員などの雇用形態があるが、総務省の労働力調査によると、1989年には、非正規労働者の割合が18.1%だったが、2013年は36.7%となった。実に労働者の3人に1人以上が非正規労働者なのである。

 事業場で休業4日以上の労働災害が発生した場合は、労働安全衛生規則(安衛則)第97条第1項により、所轄の労働基準監督署に労働者死傷病報告を提出しなければならない。非正規労働者が負傷した場合も当然義務づけられている。

                        

休業4日以上の労災

 

派遣の災害は増加傾向

 この報告は労働災害の集計にも用いられる。「派遣切り」が社会問題化した数年前から、派遣労働者に関わる災害統計を集計するようになり、詳しい実態が明らかとなってきた。派遣労働者の災害は明らかに増加しているのだ。

 派遣労働者の安全衛生の確保は、原則として派遣元事業主が責任を負うこととなっている。しかし、派遣労働者は派遣先の指揮命令下で働くことになるので、実際の作業に関わる危険または健康障害を防止するための措置は、派遣先事業者に責任を負わせている。これは、派遣先における保護の実効を期するためである。例えば、製造ラインで動力機械の操作を派遣労働者に行わせる場合に、派遣先事業主は、危険を防止するための適切な措置を実施しなければならない。派遣先で有機溶剤などの有害物を取り扱わせる場合には、特殊健康診断の実施などが派遣先事業主に課せられている。

 「自社の社員ではないから、派遣先事業主は労働安全衛生の責任を一切負わない」などということは、絶対にないのである。

 私が安全専門官として勤務した署では、製造業で派遣労働者の災害が多発した年があった。ある工場では、製造ラインでの作業中に機械がトラブルを起こし、直そうとしたところ、手指を切断する事故が起きた。機械を完全停止せず、可動部分へ手を入れてしまったのである。

 本来なら、機械の掃除や修理、トラブル処理などの「非定常作業」では、機械の電源を落とすなどして動きを止めてから行う必要がある。機械を止めれば可動部分に巻き込まれることはない。安衛則もそう定めている。

 

非正規軽視許されず

 しかし、派遣労働者は慣れない職場で作業を行うことに加え、例えば機械のトラブル時に、どこを操作すれば機械が止まるのかなどの説明を受けていないことが多い。機械の基本的な操作方法は知っていても、トラブル処理などについては十分な教育を受けていないのだ。

 私は、派遣先事業主に対し、非定常作業のマニュアルの作成や安全教育の徹底など、再発防止対策を厳しく指導した。同時に、派遣労働者の安全と健康を守るのは派遣先事業主の責務であり、その責任の重さを説いた。

 労働安全衛生の分野では、非正規労働者に対する危険や健康障害の防止を軽く捉えてしまう向きがある。しかし、雇用形態の違いによる労働災害防止対策の差は本来あってはならないのだ。関係者はこのことを改めて深く認識して欲しい。

(城田正義)

(「連合通信」7月31日号から転載)

 

 

 

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