メッセージ フロム ザ フロント

人材ビジネス支援は、国の責任を放棄

 ハローワークで職業紹介、求人受付等を担当していますが、この間の雇用政策の大きな変化に不安を感じています。

 この動きは、「雇用維持型から労働移動支援型へ」と言われており、その目玉施策が「労働移動支援助成金の大幅な拡充」です。

 良質な雇用へ転換なら、労働移動は自発的に起こります。助成金を使ってでも労働移動を進めるのは、その多くが労働条件の低下を強いる労働移動だからなのです。

 こうした労働移動促進策の多くが、「民間人材ビジネスの活性化・活用」(4月1日、雇用政策基本方針)を掲げている点も見逃せません。前記の助成金も人材ビジネス業者の利用が要件です。

 このほかにも今年度は、「ハローワークの求人情報の民間人材ビジネスへのオンライン提供」「トライアル雇用助成金等の民間開放」「長期失業者等総合支援事業(民間委託)」「ハローワークへの民間人材ビジネス企業のパンフレットの備え付けと誘導」等、人材ビジネスへ支援の側面を色濃くもった施策が目白押しです。

 上程中の派遣法改定案も日本人材派遣協会等からの「要望項目」が数多く盛り込まれています。

 本来、国(労働行政)は求職者に勤労権(人間らしい労働)を保障する義務を負っています。ですから、劣化した雇用を安心して働くことができる雇用へと改善していくため、職員は努力しています。しかし、この間の動きは良質な雇用を提供すべき国の責任を自ら放棄し、人材ビジネスへの支援へと突き進んでいると感じます。

 そして、労働移動促進・人材ビジネス支援の施策は今後、一層広がることが想定されます。例えば、前記のハローワークの求人情報のオンライン提供では、「求職情報」までも対象に加えることが検討されています。また、規制改革会議では、職業紹介事業者だけでなく、求人広告事業者、派遣事業者へも提供することが議論されています。

 ハローワークでの実際の求人受付では、法令遵守の指導はもとより、早期のマッチングに向けて求人条件の改善を専門的に指導・助言します。こうして受け付けられた求人情報が、多くの派遣会社にオンラインで提供されていくなら、「もっと安い労働力」「もっと使い勝手のよい労働力」を売り込む一部の業者の「営業対象」となり、求人条件(採用後の労働条件)はすぐさま切り下げられていくことは火を見るよりも明らかです。

 良質な雇用を提供する公的サービスを縮小し、その多くを人材ビジネスの営業活動に代替させるこれらの施策によって、労働条件全体が「底割れ」してしまうのではないか、不安が募ります。(T)

 

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