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奨励金で正規雇用は増えるのか

 非正規労働者の割合が前年から0.1ポイント増えて35.2%(労働力調査、2012年)。過去最高だったという。

 

 この結果は、雇用の正規化、常用化に向けた各種の奨励金制度が、必ずしも意図する効果を上げていないと言うことではないか。換言すると、こうした奨励金制度自体に問題があるのではないか。

 

 一つは、トライアル雇用奨励金、実習型雇用助成金の代表される奨励金の多くが、労働者を「常用雇用」ではなく、「有期雇用」で採用することを条件にしていることである。後に常用(正社員)雇用に切り替えれば、更なる奨励金を支給する仕組みも用意されているが、期間満了で雇止めとなっても、その間の奨励金は支給される。

 正社員化そのものを目的とした奨励金もある(均等待遇・正社員化推進助成金)。これも、最初から「常用雇用」で採用する場合は対象外。「有期雇用」で雇い入れた労働者を正社員化する場合に支給される。そうなると、奨励金を得るため、当初、「常用雇用」を予定していた労働者をあえて「有期雇用」として雇うことがあり得る(しかも、外形上、区別できない)。こうなると、もはや『有期雇用奨励金』だ。

 加えて、こうした「有期雇用」を「試用期間」のように「活用」する方法をアナウンスすることの影響も気にかかる。

 

 もう一つは、かつてと比較し奨励金等がたいへん高額化していることである。これによって事業主の関心は、確実に高まっている。しかし、人を雇うという行為は、本来、「人が必要だから」「任せたい仕事があるから」であって、奨励金がほしいからではないはずである。この点が崩れてしまうと、高額の奨励金を目当とした雇用が生じ、金の切れ目が縁の切れ目とばかり、雇い止めが生じる可能性がある。

 もともと、採用時の奨励金等は、障害者の雇用促進等に代表されるミスマッチ対策(誰を雇うかという局面で一定の属性の労働者の雇用にインセンティブを与え、職業紹介事業と一体で運用する場合など)としてこそ有効であると感じる。

 管理者は、奨励金の支給件数ばかりを気にしているようだが、あるべき雇用対策の在り方をしっかりと考える時期にきているのではないか。

 

 現在の雇用情勢を見ると、多くの求職者がいる一方、中小零細企業を中心に求人難が存在する。その主要な要因は、この間の雇用と劣化に伴う「労働条件のミスマッチ」によるところが大きい。そうであるなら、採用時の奨励金を限定する一方、中小零細企業を支援しながら、雇用の「中身」を改善していくことを推進すべきではないか。それによって、雇用は確実に増え、また安定していくと思う。(I)

 

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