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有期労働法制(その2)

衆議院、参議院をあわせて5時間ほどの審議で改正労働契約法が成立した。
これほど多くの問題点を含んだ法案が、いとも簡単に処理されていくことに、私は危機感をおぼえる。

新法では、有期労働契約が5年を超えて反復継続された場合に無期労働契約に転換する権利を労働者に与えるとしているが、有期労働契約を5年を超えて反復継続するかどうかは、労働者ではなく、使用者の意思にゆだねられている。
 従って、無期労働契約に転換する権利を与えたくないと考えるなら、5年を超える前に雇い止めをすることができ、むしろ、こうした雇い止めを助長することになるのではないか。国会の政府答弁では、こうした雇い止めの可能性があることを認めた上で、これを防ぐ手立て(a及びb)を検討するとしているが、果たして有効だろうか。
a.5年を超える以前にも、法定化する雇い止め法理が適用されることを周知する。

これまでの判例を見る限り、採用時に有期労働契約の更新の上限を約定したり、契約更新に当たって不更新条項を入れることで(労働者はこれに合意せざるを得ないのが実態)、雇い止め法理は、事実上、排除されている。使用者は、こうした措置を講じることで今まで以上に雇い止めをしやすくなるのではないか。

b.無期転換に向けたモデルの開発、先進的な好事例の収集、労使の取り組みに後押しなどを進める。

無期転換の「モデル例」と言うが、本来、モデルとなるべきは、労働者を無期雇用で雇い入れ、しっかりと能力開発等を図ることではないか。
実際、有期雇用で雇い入れ、雇い止めをちらつかせながら5年近く働かせた上で、一部の者を「選別」して正社員に登用するやり方が増えている。これでは、5年近い試用期間を設けたことと同じ結果になる。有期労働契約を最悪の形で「活用」するものと言えるだろう。
 なお、ブラザー工業事件(名古屋地判昭59・3・23)は、試用期間の長さは当事者の合意によるとした上で、不当に長すぎる場合は、公序良俗違反により無効としている。

結局、新法は、有期で雇ってごく一部を無期転換する「人事管理」を一般化する効果があるのではないか。そこに、新たな助成金でも措置しようものなら、中小企業にも一気に広がるだろう(現行の「正社員化助成金」を見れば明瞭)。これでは、有期から無期どころか、無期から有期への転換が促進してしまうことになる。

法改正は、無期転換にインセンティブを与えるのではなく、始めから無期雇用としていく、「無期雇用の原則」を打ち出すことが大事だったのではないか。(M)

 

 

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