メッセージ フロム ザ フロント

原発作業者の安全

 

福島第一原子力発電所の事故をめぐる電離放射線障害予防規則(以下、電離則)の改定等の動きについて、第一線の労働行政に携わる者として疑問を感じている。

 

まず、事故直後の3月14日に放射線審議会(文部科学省)が開かれ(と言っても電子メールで意見を聴取しただけの模様)、同日、電離則が定める緊急作業時の労働者の被曝線量上限を100ミリシーベルトから250ミリシーベルトに引き上げたことである(基発0315第7号)。

もともと緊急時の上限として定められていたものを「緊急時だから」と更に引き上げてしまうことに、果たして働く者の側から合理性を見い出せるのだろうか。

しかも、放射線審議会の委員の中には、使用者の代表はいるが、労働者の代表は一人もいない。労働者保護法令を審議するには不適切な委員会であり、この点でも納得性がない。

 

私たちは、放射線被曝に「しきい値はない」と教えられている。

電離則第1条が「事業者は、労働者が電離放射線を受けることをできるだけ少なくするよう努めなければならない」と定めているのは、そのためである。

ならば、上限の引き上げに伴って増大したリスクは何か、そのリスクを万全に管理する手立ては何か、これらをあわせて提示することが、引き上げにあたって最低限の前提となるべきではないか。

 

福島第1原発周辺で瓦礫処理や住民サービス等に従事する多くの官民労働者のことも気にかかる。

彼らの被曝管理、安全教育、健康管理等を適切に進めるため、電離則の改定を急ぎ、幅広い業務に適用を図る必要があると思うが、こうした動きは鈍い(但し、下水処置場等の脱水汚泥等の取り扱いについては、原子力災害対策本部が6月16日に考え方を示している)。実際、自ら従事する業務が安衛令別表第2に定める「放射線業務」に当たるのかどうか、まったく意識せずに働いている労働者も多い。少なくとも、作業上の遵守事項を指針として速やかに示す必要があるだろう。

 

「東電福島第一原発作業員の長期健康管理に関する検討会」の議論も重要だと思う。

重層的な請負構造の末端で働く労働者を一人残らず対象とし、国の責任で手厚く支援する仕組みが求められている。さらに、原発周辺で一定の期間働いた労働者(被曝管理が行われていなかった労働者を含む)についても視野に入れる必要があるだろう。

 

「安全なくして労働なし」

これを労働政策の基本に置くべきだと思う。(M)

 

 

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