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被災地の労働行政(その2)

 

5月、宮城労働局内の労働基準監督署を訪問する機会を得た。

東日本大震災による宮城県内の死者は8,980人、行方不明者は5,276人にのぼり(5月25日現在)、全体の6割を占める。

宮城労働局内には5つの労働基準監督署があるが、人的被害は仙台署及び石巻署の管内に集中している。とくに、石巻市、気仙沼市、東松島町などの沿岸部を広範に管轄している石巻署管内の被害は大きい。

勤務中の労働者の多くも命を落としたに違いない。遺族の方々の生活を支えていくためにも、労災補償給付の決定事務が急がれる。

5月に入った頃から、遺族(補償)給付請求が増加している。震災特別法(5月2日施行)によって、行方不明者の推定死亡(3か月後)に関する規定が設けられたことから、今後、請求はさらに増加するだろう。

問題は、その件数がとてつもなく多くなるということ。

この点では、阪神淡路大震災の例は参考にならない。95年の兵庫県南部地震の発生時刻は午前5時46分であったが、東北地方太平洋地震は午後2時46分。つまり、勤務中の人たちが圧倒的に多かったのである。

石巻署で聞くと、5月25日時点で251件の遺族(補償)給付請求を受理。今後、数千件の請求が見込まれるという。

私が、労災補償業務に従事してきた経験から言えるのは、遺族(補償)給付の調査は、業務上外や通勤途上外、つまり、仕事に起因した仕事中の被災なのか、通勤に起因した被災なのかの判断とともに、給付基礎日額、死亡当時の同一生計維持関係にある者の確認(受給資格者の人数で年金の給付基礎日数が変わる)など、多岐にわたる項目を細かく調査・検討する必要があり、集中して処理を進めても、1件に1カ月以上を要する。しかも、関係書類は流失、毀損されたものも多いだろうから、調査・検討の難航が予想される。

 加えて、石巻署の労災給付調査を行う職員はわずか5人。現在、他の労働局から労災担当だけでも常時4人の職員が応援派遣されている。彼らは、文字どおり不眠不休で作業を続けているが、今後に想定される膨大な請求にどう向き合うのか、解決策は見い出せていない。

すでに全国からの人的応援は、東北全体(労働行政の諸分野)で常時180人規模にふくれ上がっており、これ以上は難しいとも聞く。そこには、連年の人員削減が影を落としている。

 労災補償制度は、多くの遺族の生活再建に向けた中核的な制度の一つである。その実施を担う体制整備に向けて100規模の増員が緊急に必要ではないか。(T)

 

 

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