メッセージ フロム ザ フロント

被災地の労働行政(その1)

 

大震災から3週間を経た3月31日、岩手県大船渡市のハローワーク、労働基準監督署を訪ねた。

市の中心部まで押し寄せた津波の爪痕は深く、至る所に積み上がった瓦礫の1つ1つに奪われた命を想うといたたまれなくなる。住宅地まで打ち上げられたいくつもの大型船舶、折り重なるように水路をふさぐ何台もの自動車、およそ日常とは思えない光景の数々が、震災の凄まじさをも物語っていた。

 

大船渡公共職業安定所(ハローワーク)は、大船渡市のほか、陸前高田市、気仙郡を管轄する。附属する陸前高田ふるさとハローワークは、その庁舎が跡形もなく消失し、勤務中の職員2名がいのちを落とし、痛恨の極みである。

大船渡市内にある本所の庁舎は、やや高台にあったため津波の被害を免れたが、震災直後から被災した人たちが多く訪れ、臨時の避難所となった。会議室等を開放し、職員が総出で炊き出しも行った。避難して来られた人たちが自身の無事を伝える伝言を書き綴った大きな模造紙2枚は、いまも庁舎玄関に張ってある。

職場も一変した。電話回線が途絶えたままで、外部とのやり取りは今も一部の携帯電話に頼るほかない。全国ネットワークとつながる行政システムも復旧できない上に、不具合のコピー機も修理できず、膨大な手作業が連日、深夜・休日まで続く。どうしても必要なデータ入力は、片道1時間超の隣接所に職員が毎日出向いて行う。

所の常勤職員はわずか8名であるが、この震災で両親、兄弟を失ったり、住居を失った者(避難所から通勤)もいる。被災者(求職者、事業主)からの相談、申請(雇用保険、雇用調整助成金等)が急増する中、全員が「いま、誰一人欠けることができない」との思いで必死の努力を続けている。

しかし、大船渡所の職員の精神的、身体的な負担はもはや限界だと思う。管内の被災状況を見たとき、今後、業務量は数百倍に跳ね上がるだろう。業務に精通した職員の応援が全国的かつ長期的なかたちで求められている。

 

大船渡労働基準監督署(管轄はハローワークと同様)にも、津波がごく近くまで押し寄せた。署の庁舎は難を逃れたものの、6名の職員のうち2名の住居が津波に飲み込まれて消失し、泊まり込みの勤務が続いている。業務面でも困難が続く。行政システムの復旧が遅れたまま、これを補う膨大な作業が生じている。そして、被災者から寄せられる労働相談の数々が「いずれも重い内容」(署職員)という。

今後、労災補償事務、未払賃金の立替払事務は膨大となるだろう。事業場の被害も大きく、事案毎の事実認定も困難が予想される。加えて、復旧・復興に向けた作業時の災害防止対策、被災者へのメンタルヘルス対策等も労働基準行政が担うことになるだろう。

厚生労働省では、全国規模の応援態勢を計画しているが、ハローワーク同様、この間の定員削減で全国的に体制確保が難しく、容易なことではない。

必要とされる労働施策を強力に実施し、被災者を支えていくには、労働行政に数百人規模の増員措置を緊急に講じるべきである。(M)

 

 

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