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事業仕分け(その 2)

 

事業仕分けは、労働安全衛生行政にも大きな影響を及ぼしている。

6月の厚生労働省内事業仕分けでは、ヒト・モノ・カネ(事業仕分けでは、人をカタカナの「ヒト」と表す)を削ると銘打って行われた。

 仕分け人から、コスト削減を狙った意見が出されるのはある程度仕方がないが、厚生労働省が的確に反論せず、自らの「改革案」を示しながら、これに追随する姿勢を示したことは残念である。何しろ、対象の事業は、いずれも労働者や中小・零細事業主の立場に立って多くの成果を上げてきたものだからだ。その結果、「地域産業保健センターや産業保健推進センターの業務の縮小」「労働局が実施する検査業務の民間委託化」等が進められているのだが、本当にこれで良いのか。

 

まず、都道府県ごとに設置された産業保健推進センター(以下、センター)は、平成23年度から25年度に順次、廃止・集約化を進めて約3分の1にするという。

新年度は6カ所が廃止されるが、センター内にある「メンタルヘルス対策支援センター」をどう扱うか、これは大きな問題である。

近時、メンタル疾患の急増が指摘される中、多くの企業がメンタルヘルス対策の必要性を感じているが、情報不足、専門家不足等に悩んでいる。このような状況を克服するには、労働基準監督署のネットワークを利用した行政指導と「メンタルヘルス対策支援センター」の専門家(医師等)との連携が、非常に有効であると感じる。しかし、厚生労働省はセンターを順次、廃止するのであって、「メンタルヘルス対策支援センター」は残すというが、看板だけのものになりかねない。

 

検査業務の民間委託化も心配だ。かつての耐震偽装事件を忘れてしまったのか、同様の「枠組み」を導入しようとしているからだ。

ボイラ、第一種圧力容器は、その構造や溶接の不備等から爆発の危険があり、しかもひとたび事故が起きれば、当該事業場の労働者はもとより、近隣の住民にまで甚大な被害が及ぶ。そこで、ボイラ等の製造にあたっては労働局長の製造許可を必要とし、製造したボイラ等は一基ごとに、労働局の産業安全専門官等が製造検査と溶接検査を行い、検査証の発行する。その後、ボイラ等の設置にあたっては、監督署の安全専門官等が落成検査を行う。

今回、労働局で行う製造検査と溶接検査を登録検査機関(民間)に委託するという。

検査で溶接等のやり直しを命ずるケースも少なくない現状があり、危険なボイラ等が出回ることにならないか、不安が拭えない。

厚生労働省は、事故が発生した場合にはPL法で製造業者の責任を問うことができ、検査不備の場合は、登録検査機関の「特定損失準備積立預金」で賠償も可能という。しかし一方、登録検査機関(民間)の事業仕分けでは、検査・検定業務担当者の非常勤化、外部委託化を進め、「特定損失準備積立預金」を自家保険から他社保険に切り替えて、大幅縮減を図るという。

 「安全対策は必要だが、製造企業の自己責任という考え方もあるのではないか」(仕分け人の指摘事項)、これを危険な「規制緩和」と言わずして何だろうか。(H)

 

 

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