メッセージ フロム ザ フロント

事業仕分け(その1)

 

“第三弾”と銘打った行政刷新会議の事業仕分けは、「労働保険特別会計」を取り上げ、社会復帰促進等事業に対して「原則廃止」の判定を下した。私が勤務する労働基準監督署の業務にも大きな影響を与えることから、意見を言いたい。

社会復帰促進等事業の中心的な施策は、「賃金の支払の確保等に関する法律」に基づく「未払賃金の立替払事業」(企業が倒産した際、退職労働者に未払賃金の一部を事業主に代わって支払う制度)である。おそらく、仕分け人たちは、賃金の未払いなど労働者が自己責任で債権回収を行えばよい、とぐらいにしか考えていないのだろう。

しかし、中小・零細企業の倒産の現実はそんな生易しいものではない。事業主はサラ金に追われて行方も分からず、閉鎖された事務所には暴力団関係者が居座るなど、過酷な現実が存在する。こうした中で、何ヶ月も賃金をもらえないまま、生真面目に働き続けた労働者の生活や心情を考えたとき、この制度は正に労働者の“セーフティネット”なのである。実際、私自身が何人もの労働者から「救われた」の声を聞いており、決して誇張でなく、この制度が命を救ってきたと実感している。

私は、こうした制度を無駄と言って憚らない人々の見識を疑う(もとより、完全な制度などなく、不断に見直しは必要だろう)。

この他、「原則廃止」と判定された社会復帰促進等事業の中には、「外科後処置」(労災で切断された手指に義肢を装着するための手術や顔面の火傷で生じた醜状をなくすための手術等)や「義肢等の支給」(労災による四肢喪失、機能障害等の残った場合の義肢、上肢装具及び下肢装具、義眼等の支給)等も含まれている。

行政刷新会議にしろ、省内事業仕分けにしろ、ろくに中身も知らない人々が、ワイドショウ感覚で盛り上がって「廃止」を叫ぶ。そこに「おかしい」と口を挟もうものなら、「政治主導に反する」と袋だたきに遭う、そんな状況は不幸としか言いようがない。

厚生労働省もさすがにこれには反論し、「未払賃金の立替払事業」は「存続」の方向性が見えてきたのは良かったが、そうだとするとこの間の動きは一体、何だったのか。

無駄をなくすと始まった事業仕分けそのものが、膨大な無駄であったと言うことにならないだろうか。(T)

 

 

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