メッセージ フロム ザ フロント

2009年 5月
労働基準監督官の仕事

 労働基準監督官という仕事をしている。

その内容は、定期監督(計画に基づく臨検)、申告監督(労働者からの申告に基づく臨検)のほか、未払賃金立替払業務、重大な労働災害の調査、そして悪質な違反に対する捜査(送検)など、その業務は多岐にわたる。

 いずれも、額に汗して働く人々に寄り添い、その命をまもり、権利を保障する仕事であり、大きなやりがいを感じている。もとより、苦しい、辛いと感じるときもあるが、それを乗り越えることが、働く人々の期待に応えることだと信じている。

 しかし、納得のいかない苦労もある。

 例えば、定期監督の件数を上げろと、過度に締め付けがある(件数主義)。隣りの署ではすでに計画実施率〇%などと競争をあおっているが、もっぱら件数を追求することが、権限行使に歪みを生じさせていないだろうか。

 実際、半日で終わる臨検もあれば、二日、三日にわたる臨検もあり、行ってみなければ分からない。さっさと切り上げてしまう短時間の臨検をいくら重ねても、法令遵守は決して定着しない。ねばり強く、高い専門性をもって指導することで、厳しい環境下の事業主からも理解が得らるのではないか。

 また、事業場への臨検は、監督官が一人で赴くことを原則としているが、これも件数主義のあらわれと言える。実際、臨検中の監督官が大声で威嚇されたり、言いがかりをつけられたり、暴力を振るわれたりすることがある。それでも、公正に権限行使するためには複数で臨検することを原則にすべきだ。

 もっとも、労働基準監督官の人数自体も少ない。厚生労働省は3千程度と公表しているようだが、この数は管理的な立場の監督官を含めており、実際、日常的に臨検に従事している監督官はせいぜい1.5千人〜2千人だろう。

ILOが定める労働監督官一人あたりの最大労働者数は1万人。国際基準の三分の一しか監督官が配置されていないわが国の現状は、そのまま、労働者の権利状態をあらわしている。(S)

 

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