メッセージ フロム ザ フロント

2009年 3月
労働条件のミスマッチ

もっとも有効な雇用対策って何だろう。
 注目したいのは、大量な首切り・リストラを行う企業がある一方(これ自体、個々に適法であるか慎重に吟味すべきだが)、人員不足の業種・業態があることである。
この状況を見て、「求職者が仕事を選り好みをしている」等とする声もある。例えば、慢性的な求人難の企業が、大量求人を発表したことをあたかも美談のように報じたり、一部の自治体が低賃金でごく短期間の非常勤職員の募集を決めたことを「迅速な雇用対策」等と賞賛するマスコミの感覚は、どんな仕事でもないよりましと言わんばかりだ。しかし、これらはいずれも、現実を見ない議論と感じる。  
有効求人倍率が1を大きく下回っている中でも、なぜ一部の業種・業態が「人手不足」の状態のままなのか。この点をはっきりさせないとおかしなことになる。

まず、これらの業種・業態で働く人たちの労働条件は、家族を支えて生活できる水準ではないという点が大きい(労働条件のミスマッチと言い換えてもいいだろう)。実際、こうした職場には「ワーキング・プア」と称される人たちも多い。例えば、介護職場で働くヘルパーの多くは、どんなにがんばっても年収200万円に満たないだろう。仕事の内容もきつい(職業性疾病の発症率も高い)。  
政府は新年度から介護報酬を3%上げるとしているが、賃金は労働者と事業主の間で決めるから、労働条件改善につながる保障はない。  
また、求人難の代表格の一つであるタクシードライバーも、一勤務の拘束時間が21時間もざらという過重労働である上、オール歩合制(厳密に労基法を適用すれば労基法37条違反である)の低賃金。規制緩和(参入規制の緩和)で生じた過当競争が、ドライバーをさらに苦しめた。ちなみに、時間外労働の「限度基準」も適用除外とされており、法制上の保護も欠く。

政府が次々と打ち出している雇用対策が悪いとは思わない。とくに雇用保険の加入要件や失業給付の充実は、セーフティネットを壊し続けてきたこの間の「改革」への反省であるし、雇用調整助成金の要件緩和等の財政出動も緊急対策として有効だろう。しかし、その先にある政策、すなわち、どこにどんな雇用を創り出すのかを考えたとき、一部の業種・業態の構造的な低賃金と過重労働を抜本的に改善していくことが重要である。そのための新たな規制や公的支援を躊躇すべきではない。(M)

この記事のトップへ