全労働の活動・とりくみ

全労働における行政研究活動について

 

 全労働書記次長  津川 剛

1.全労働における行政民主化のとりくみ

 

全労働は、労働行政の第一線職場で労働者・国民と向き合いながら、国民本位の行政のあり方を一貫して追求してきました。一方で、公務員バッシングを伴った総人件費削減や公務員制度改革、地方分権改革等の動きがあり、行政の存立さえ脅かしかねない状況にあります。また、件数至上主義的な行政運営や未成熟な人事評価制度の導入などもあり、権利保障を担うべき労働行政の変質を懸念する声も広がっています。

こうした状況下で、全労働は、労働行政のあるべき姿を内外に発信し、その実現に向けた理解と支持を広げるべく、行政民主化のとりくみを推進してきました。具体的には、中央・地方において、職域集会や職域プロジェクトなどを開催し、日々の業務を見つめ直しながら、業務運営における諸課題を分析するとともに、職場討議資料の作成や対外的な提言づくりなどを追求しました。

一方、こうしたとりくみを進めるには、行政民主化の意義を再確認することも重要です。全労働の各級機関は、各種会議や集会において、行政研究活動の歴史を学び、行政民主化の意義・重要性の理解を深める講義を企画しました。また、こうしたとりくみの重要性を若い組合員に伝えるべく、青年協議会においても「青年業務研究集会」を開催し、行政民主化の歴史や意義を学ぶとともに、分科会を設定しながら、業務運営にかかって熱心な議論が繰り広げられました。

対外的には、全労働が作成する「季刊労働行政研究」誌において、様々な課題を取り上げるとともに、全労働ホームページ上にも提言・考え方を掲載するなど、様々な課題にかかる全労働の姿勢を積極的に示してきました。

 

2.行政研究活動のとりくみ

 

(1)これまでの行政研究活動と第23回行政研究活動のとりくみ

全労働では、様々な形で行政民主化のとりくみを進めてきましたが、なかでも、「行政研究活動」はその重要な柱となっています。行政研究活動は、1〜2年のスパンの中で、各種テーマを設定しながら、職員アンケートや行政利用者への聴き取り、統計資料等の分析、外部団体や研究者との意見交換などを積み重ね、最終的にはレポートや提言の形で取りまとめるとともに、日々の業務にも生かそうというものです。実際に、過去22回の活動を実施し、様々な政策・提言を内外に発信してきました。また、こうしたとりくみによって、国民・労働者からの信頼を高めるとともに、労働行政への理解と支持を広げてきました。

この間、労働行政の職場では、世代交代が進む一方、行政体制の不十分さによって職場は多忙を極め、行政民主化の議論が希薄になりつつあります。また、先述のとおり、未成熟な人事評価制度の導入や件数至上主義的な業務運営などにより、行政の変質が懸念されています。これらのことから、全労働の諸会議では、これまで以上に行政民主化のとりくみを強化する必要性が指摘されていました。

こうした経過をふまえ、昨年9月に開催された全労働定期大会では、10年ぶりとなる「第23回労働行政研究活動」にとりくむことを決定しました。今回の行政研究活動においては、(1) 政府・財界が進める構造改革が今日の労働法制・労働行政、労働者にどのように影響を及ぼしているかを明らかにすること、(2) 現在の行政の各種施策の問題点や有効性を全組合員参加のアンケート調査等で明らかにすること、(3) 以上により明らかとなった実態に対して、労働行政のあるべき方向(労働法制と各種施策のあり方、労働行政の専門性の向上と体制整備の必要性)を明らかにし、内外に発信すること、(4)行政研究活動を通じて、地方分権改革の問題点や行政体制確保の必要性を明らかにして、これらのたたかいに対する組合員の確信につなげること、(5) 行政研究活動の成果をふまえ、組合員が日常業務で実践することを目的に展開することとしました。

また、行政研究活動を進めるに当たって、統一テーマ(「安心して働ける社会と労働行政の役割」)を掲げるとともに、職域ごとにテーマを設定した上で、労働法制と各種施策の問題点、あるべき方向を検討することとしました(別記参照)。

さらに、行政研究活動の成果を取りまとめる上で、全国労働行政研究集会(6月28、29日)を開催することとしています。集会では、全体会と分科会・分散会等を設置し、提言やレポートの方向性を議論する予定となっています。

 

【別記】

【全労働・第23回行政研究活動の研究テーマ】

 職安職域:若年者雇用、求職者支援制度、生活困窮者支援、雇用保険、

      助成金

 監督職域:過重労働と行政の役割

      効果的な労働監督のあり方

 安全衛生職域:多発する重篤災害の原因と対策

        労働者のメンタルヘルス対策

 労災職域:今日の業務上疾病の労災認定の現状と課題

      業務上疾病の適正給付対策及び社会復帰促進等事業の問題点

 全体で考察する課題:若年者雇用とディーセント・ワーク

 

 

(2)要求・行研アンケート、webアンケートのとりくみ

現在、定員削減や新規採用抑制による行政体制の脆弱化、地方分権改革など、労働行政の展開に重大な影響を及ぼす動きがあり、一方で賃金や退職手当の引き下げ、過重労働とそれに伴うメンタル疾患の増加など、労働行政と労働条件をめぐる厳しい情勢が取り巻いています。

こうした中、組合員の不満や不安、悩みなどをきめ細かく把握し、要求実現に結びつけるべく、第23回行政研究活動の一環として「要求・行研アンケート」にとりくむこととしました。その目的は、a.労働条件や職場環境などに関する不満・不安を把握し、要求と運動の再構築を図ること、 b.業務運営に関する問題点等を把握し、民主的な行政運営に生かすことなどにあります。

アンケートの内容については、組合員意識の変化を把握するため、05年11月に実施した「新たな要求と運動のための組合員アンケート」との共通項目を一定程度取り入れました。また、行政研究活動にも活用する趣旨から、業務課題に関連する項目も設定しました。

実際に、アンケートは昨年11月に実施し、約11000人の組合員(非常勤職員組合員を含む)から回答が寄せられました。現在、アンケート結果を集約中であり(職域に係る速報値は別添)、職場へのフィードバックや分析を行っているところですが、法制度・施策のあり方やそのための体制整備の必要性が読み取れます。

例えば、労働基準監督職域では、労働時間法制上の有効な措置として、65%以上の職員が「労働時間把握義務の法制化」を挙げています。同時に、監督行政を効果的に進めるには、「監督官の増員」が必要とする意見が圧倒的です(73.2%)。また、職業安定職域においては、有効求人倍率の改善に対して、「改善されたとは思わない」(69.3%)、「むしろ悪化している」(13.4%)など、労働行政第一線の実感は、必ずしも見かけ上の数値とは合致しておらず、雇用情勢の詳細な分析が必要と思われます。一方で、職業相談業務に関して、「相談の待ち時間を気にするあまり、求職者のニーズに即した支援を時間をかけて行うことができない」の回答が半数以上(50.2%)となっており、行政体制の不十分さが浮き彫りとなっています。なお、アンケート結果は、職場にフィードバックすることとしており、職域集会や職場集会などでテーマに即した議論を促進することとしています。

他方、「要求・行研アンケート」では、用紙の紙幅上の制約から、詳細な設問を設定できませんでした。そのため、新たに、webアンケートを実施し、分析・提言等の基礎資料を得ることとしました。具体的には、職業安定職域において、「求職者支援制度」「雇用保険関係」「助成金制度」に係る設問を用意し、携帯電話やスマートフォン、パソコンから回答できるようになっています。 これも、1月末からの1か月程度の期間でとりくみ、600人以上の組合員から回答が寄せられました。また、インターネット上でのアンケートのため、途中経過が瞬時に分かることや、自由記載欄の取りまとめが容易にできることなどのメリットがあります。なお、このアンケートについても、職場へのフィードバックを行い、対話や議論の促進につなげたいと考えています。

 

(3)職場段階でのとりくみ

行政研究活動で設定したテーマを掘り下げていくには、「要求・行研アンケート」、webアンケートはもとより、多様なとりくみで議論を深める必要があります。全労働の各級機関においても、それぞれの実情に応じながら、様々なとりくみを進めています。

具体的には、(1) 行政民主化・行政研究活動の意義に関わる学習、(2) 職域集会・職域座談会の開催、(3) シンポジウム・学習会の開催、(4) 関係者との意見交換などのとりくみ例を提示しており、必要に応じて中央執行委員の派遣や関係資料の作成を行っています。とりわけ、春闘期には、地域協議会ごとに全分会長会議を開催していますが、その中で、講師団や役員経験者(OB含む)、労働行政に関わりのある外部有識者などを講師とした学習会や、職域ごとのテーマに沿った分科会・分散会が積極的に企画されました。その際には、多くの組合員から、多忙を極める職場の中で、あらためて自らの業務を語り合い、あるべき方向性を議論することのやりがいが報告されているのが特徴的です。また、分科会・分散会はそれぞれレポート化されているところが多く、今後の提言等にも活用します。さらに、職場で行う日常的な事例研究・自由研究等も大変重要であり、こうした活動を広げることも重視しています。

 

(4)今後のとりくみ

 6月28、29日には、「全国労働行政研究集会」を開催します(都内)。集会は、初日に「若者の働く実態とディーセント・ワーク(仮)」をテーマとした全体集会を開催します。ここでは、研究者による記念講演やシンポジウム等を予定しており、若者の雇用環境を改善し、ディーセント・ワークを実現するため、労働行政は何をすべきかといった観点で議論を行います。

2日目には、職域テーマごとの分科会を開催し、組合員のほか、研究者、外部労働組合、民主団体等諸団体、法律家などの関係者にも参加を呼びかけ、多様な観点からテーマに即した議論を深めます。

その上で、行政研究活動の成果は、年度内を目途にとりまとめ、「季刊労働行政研究」や全労働のホームページ等で公表することとしています。

一方、行政研究活動は、すべての職場で、すべての組合員が参加し、国民本位の行政をめざした議論を展開することを重視しています。この活動は、自らの業務を見つめ直し、誇りと自信をもって職業生活を送ることができる職場づくりとも言えます。さらに、組合員が主体的に行政民主化にとりくむことは、外部労働組合や民主団体、研究者からの信頼を高め、地方分権改革の対抗軸にもなりうるものです。加えて、業務に関する議論を活性化することは、何でも話し合える風通しの良い職場をつくるものであり、組合活動への結集を高めるものです。こうした観点から、全労働では、この1年間を目途とした活動でありつつも、様々な形での継続的なとりくみをめざします。

 

                   (つがわ つよし)

 

 


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