全労働の活動・とりくみ

2005年 7月
シンポジウム
主催者あいさつ
−全労働省労働組合中央執行委員長 新宮 峰男−

本日は、私どものシンポジウムに多数ご参加いただきまして、まことにありがとうございます。
本日のシンポジウムの目的は、ご案内の通り、「労働分野における規制改革・民間開放の及ぼす影響と問題点、今後のたたかいの方向」を明らかにすることにあり、働く者の立場から各界で積極的かつ精力的な活動を展開しておられる3人の方をシンポジストとしてお迎えしております。
開会にあたりまして、あいさつに代えて3点ほど申し上げます。

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「民間開放」は3つの「改革」の終着駅

第1は、いま進んでいる「民間開放」の流れは決して唐突に引き起こされてきた問題ではないということです。それは、1993年の第三次行革審(臨時行政改革推進審議会)の答申を源流として始まるわけですが、ここで「官から民へ」「国から地方へ」という基調がすでに提起されていました。
今、公務をめぐっては3つの「改革」が進行しています。
1つは「規制改革」、2つは「行政改革」、3つが公務員制度「改革」です。
「規制改革」は90年代前半から動きが始まり、特に企業活動や労働分野の「規制改革」(当時は規制緩和と言っていました)が進んでまいりました。合わせて、官と民の役割分担の見直しという問題が、この「規制改革」と共に議論されてきたことが大きな特徴ではないかと思います。
次に「行政改革」ですが、これは90年代半ば以降から議論と動きが始まりまして、ご存じの通り、すでに中央省庁再編、減量・効率化ということで、どんどんアウトソーシングなどが進んできました。
そして公務員制度「改革」ですが、これは「行革」と一体で議論が本格化してまいりました。現在は法案化がたな上げ状態にありますが、給与等のコスト削減や個別管理強化という問題が具体化されようとしています。最近、財界が政府に要望を突きつけていますが、公務のリストラを推進しやすくするために、「公務員の身分保障を見直せ」「公務と民間の異動がスムーズにいくように、賃金、年金を同等の水準にすべきだ」などと盛んに言っています。
以上申し上げた3つの「改革」のすべてが、いま「民間開放」に向かって流れている。3つの「改革」の終着駅が「民間開放」と言っても過言ではないと思います。
労働行政の「民間開放」も、こうした動きの中に位置しています。したがって、この問題は決して一過性のものではないということです。歴代自民党内閣がめざしてきた「構造改革」の重要な一環としてこの問題が進んでいるということを、私たちはしっかり捉えなければならないと思っています。

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なぜ、職安に焦点が当たっているのか

第2は、こうした「構造改革」の中で、いま労働行政、とりわけ職安に焦点が当たっているわけですが、これにも3つの理由があります。
1つは、「行政改革」を進めていく上で、国民サービス部門に切り捨て攻撃がかけられているということです。すでに、国立病院、国立大学が独立行政法人化しました。国民サービス部門の次の大どころは社会保険庁と職安です。この2つを合わせて3万人の職員がいます。現在、国家公務員の一般職(非現業部門)は33万人強ですが、この2つを独立行政法人化なり民間化すれば30万人体制を割り込むところまでいくわけです。そのねらいがあるだろうと思います。
2つは、民間人材ビジネスの台頭という問題があると思います。いま、人材ビジネスは過当競争時代に入ってきています。非常にたくさんの企業が、労働力の分野に新規参入してきています。これが、公務に新たな市場を求めてきている。この図式が非常に強まってきています。
3つめは、企業の雇用管理、人事戦略があると思います。つまり、雇用の柔軟化、流動化というものが非常に進行してきている。この雇用の柔軟化、流動化に応えていくには、官よりも民の方が都合がいい。官は規制力がありますから、職安はさまざまにうるさいことを言う。それよりも使い勝手のいい民間を使った方がいい。こういう流れが、職安の「民間開放」の動きを加速していると、私たちは見ています。
しかし、ご存じの通り、この間の規制緩和の動きは、雇用や労働条件に劇的な変化をもたらしてきています。労働の現場に深刻な事態が進行している。今日の労働者をめぐる状況は、逆に国民の側から見て、労働行政の重要性、必要性を高めていると思います。労働者保護を目的とした、むしろ規制の強化、そして労働行政の充実・強化、このことがいま国民の要求として大きく高まる客観的条件が広がっているのではないか。このことも強調したいと思います。

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「規制改革」「民間開放」に反対するたたかいは憲法を生かすとりくみの一環

最後に第3ですが、憲法改悪の動きとの関連です。私たちは、労働行政の規制緩和や「民間開放」の動きは憲法第27条の国民の勤労権を空洞化させる動きだと思っています。
いまの改憲議論を見ますと、第9条に焦点が当てられていることは明らかだと思いますし、そのこと自体は大変重要です。同時に、国民の権利、ここに照準が当てられているのも昨今の改憲議論の特徴だと私は思います。「権利ばかり主張して、義務や責任を果たそうとしない」という論法で、「社会保障負担の責務」ということが出てきますし、「国防の責務」と一体で、国民の権利や自由に対する一定の制限も持ち込まれようとしています。
しかも最近は、第24条の「家族生活における個人の尊厳・両性の平等」に対する介入まで行われようとしてきています。私は現在の改憲議論の中で、第25条をはじめとした国民の権利を保障するシステムが大きく覆されようとしていることを重視しなければならないと思っています。そういう意味で、「民間開放」や「規制改革」に反対するたたかいは、憲法改悪に反対し、憲法を生かすとりくみの一環ではないかと思います。そういう立場で、私どもはこれからも国民諸階層の憲法改悪反対のたたかいとしっかり結んで、共同の前進のために努力したいと思います。
本日のシンポジウムが、広範な国民、労働者の共同のたたかいの発展に大きく役立つ内容となりますように、みなさんのご協力をお願いして、あいさつを終わらせていただきます。

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